アイヌ音楽祭 2008
HAPPENINGText: Yurie Hatano
男性による力強い「剣の舞」や「弓の舞」があれば、女性による作業歌舞のようなものも。いずれもウポポを中心とし、踊りはリムセ(輪舞)を基本として構成されている。本来アイヌの歌や踊りは、見せるのではなく、楽しむものであったという。
樺太アイヌの伝統弦楽器、トンコリの演奏を披露したのは、先日SHIFTでもフィーチャーしたオキ。独自のスタイルで、アイヌ音楽の魅力を世界各地の若い世代に知らしめている。
最後にオキのトンコリ演奏に合わせ、女性4人組「マレウレウ」が登場した。メンバーの出身地である阿寒と旭川のウコウク(輪唱)が響く。全員が違うメロディーで歌うというウコウクが、不思議に心地よく続いた。
先住民族と認められることが、ただ手放しで喜べることではない、という意見も聞こえる。それもそのはず、この長い歴史に起こっているのは、そんな単純なことではないだろう。こうしてアイヌが持つ、守り尊重すべき文化や精神と、それが伝わり続けるための規制や矛盾は、この後も続いていくのかもしれない。それぞれが独自であるアイヌとしての意識にもまた、まとまりや答えは生まれない。それでも彼らは民族の誇りを背にし、共に歌い、踊り続ける。
観客も交えて大きな輪ができ、アイヌの踊りは続いた。雨雲はいつの間にか消えていた。
アイヌ音楽祭 2008
日時:2008年5月16日(金)15:00〜16:30
会場:北海道庁赤レンガ庁舎前
出演:アイヌ古式舞踊(石狩、胆振、日高、十勝、釧路の5地区より)/ムックリ演奏(松永八重子、花岡ケイ子)/歌(マレウレウ)/トンコリ演奏(OKI)
https://www.tonkori.com
Text: Yurie Hatano
Photos: Yurie Hatano
