OKI(オキ)
PEOPLEText: Yurie Hatano
樺太アイヌの伝統弦楽器「トンコリ」を現代に復活させた、オキ(OKI)率いる日本、アイヌ発のプログレッシブ・ルーツ・バンド、オキ・ダブアイヌ・バンド。いにしえの楽器・トンコリを大胆にもオール電化し、唯一無二のアイヌ越境ダブサウンドで、世界各地で活躍している。2008年4月よりスタートするジャパン・ツアーでは日本列島を横断。アイヌ音楽の魅力を国内外に知らしめてきた稀有なミュージシャン、オキに話を伺った。
自己紹介をお願いします。
オキです。カラフトアイヌの弦楽器トンコリで勝負してます。
樺太アイヌの伝統楽器「トンコリ」について教えてください。
古くは300年以上の文献にも登場してます。構造と形は、300年以上モデルチェンジしてなかったのですが、自身で電化しました。それによってアンプから音が出すことができるようになりました。トンコリは弦を押さえるところがないので、弦の数とおなじ音階しか出せません。なのでリズム楽器としてとらえると可能性は広がります。
トンコリやアイヌの伝統歌「ウポポ」によるアイヌ伝統音楽を基準に、斬新なサウンド作りで独自の音楽スタイルを追求されていますが、きっかけは何でしたか?
トンコリを知る前はビジュアルアートを学んでいました。自分のルーツに向き合いたいと思っているときにトンコリに出会い、全てが始まりました。
「オキ・ダブアイヌ・バンド」はどのようにできたのですか?メンバーについて教えてください。
頭の中で鳴っている音を形にしようとするとドラムやベースが必要でした。いろいろな偶然と縁で湘南のレゲエバンド、ストーンドロッカーズのヒロと出会いました。レゲエを体の芯にしっかり持っているとてもいいベーシストです。そしてドラムは沼澤尚、説明不要の大御所、世界的にトップランキングのドラマーです。アルマッケイ、井上陽水さん、ジルベルト・ジルも彼のスケジュール表にのってます。居壁太は浦河町出身のアイヌ、トンコリと歌でアイヌ魂全開です。バンドのサウンドをまとめるのはエンジニアというよりの内田直之。リトルテンポ、フライング・リズムス、ゴマ、ジャングル・リズムセクションなどなどエンジニアを勤めています。彼の音は魔法です。
昨年度もシンガポールやヨーロッパツアーや、全国のフェスティバルなどにてご活躍のようでしたが、各地での反応はいかがですか。
フェスティバルの性格でオーディエンスの反応は変わるけど、ヨーロッパのフェスは文句なく楽しめます。全然知らないバンドでも良ければしっかりついて来てくれるし、かなり騒いでくれるのでこちらも自信を持って演奏できる。そういった相乗効果でライブが爆発します。
日本は、ややおとなしめな印象ですが、その日本のオーディエンスを湧かすことができれば、ヨーロッパで活躍できるのです。
切り絵アーティスト、福井利佐さんとの「垂乳根」でのセッションについて教えてください。
「垂乳根」は全て切り絵で構成されている短編アニメです。脚本も福井さん本人によるもので、もちろん切り絵も全て福井さんの手によるもので、その音をつけさせてもらいました。
自由闊達な筆に比べて制限の多い切り絵で福井さんが向かおうとしている世界に共感します。トンコリもたった5つの音しか出ない不自由さの中でやってますから。
4月よりスタートのジャパンツアーについて、意気込みなどを聞かせてください。
多くの人のサポートを得て制作が進行しています。福岡から阿寒湖まで一ヶ月に及ぶツアーが目前に迫っています。
新しい曲作りとメンタル、体的な調整に気を使っています。トンコリとダブを融合したダブアイヌ・バンドを最高の音で見てもらいたいです。
今後の予定を聞かせてください。
バンドと平行してトンコリのソロプロジェクトも進行中です。
ほかのアイヌのグループの作品プロデュースもあります。
それとは何か全く次元の違うものに挑戦したいです。
Text: Yurie Hatano