スマッシュボックス
ニューヨークに次ぐアメリカの主要機能都市として名を馳せるロサンゼルス。特にエンターテイメント産業がものを言うこの街に住んでいると、多種多様にプロダクションに関わる人々の、時には影武者的な貢献を目にする。しかしこの黒子的活躍は最終プロダクトに現れ評価されることはなく、水面下で泳ぎ続ける俊英な魚の存在はなかなか認識されない。撮影スタジオ・スマッシュボックスはそういった現代の写真界で活躍するトップフォトグラファーたちのアシスタントに毎年スポットライトを当てている。第7回を数えるアシスタント写真展は地元プロラボ、機材レンタル店、コダック、そして、PDNなどの雑誌を始めとして、写真業界の様々な協賛を得てスマッシュボックのエデン・ミートリー、ダイアナ・ロベルトのキュレーションのもと開催された。
オーナーのディーン・ファクターとその弟、ファッション/セレブフォトグラファーのデービス・ファクターはかの化粧品ブランドを打ち立てたマックスファクターの血を引く。その影響もあってかスマッシュボックスでは自身のコスメティックス・ラインのほか、スタイル部門(スタイリスト、メーク、ヘアー)をも誇る。そしてプロダクションと切っても切れないのがケータリング。同じ敷地内にあるグッドフードはオーナーシェフ、フィリップ・ウェインガーテンの指揮の下、こだわった素材とプレゼンテーションで1990年よりケータリングサービスを提供。オープニングの夜は、バラの花で飾り付けられたプレートをもったウェイター達が洒落たオードブルをキッチンより直にサーブ。チキンのトマト風味サテーやポテトウィップのガーリックバター仕上げなど、工夫をこらしたメニューが提供された。
様々なスタイルの作品が壁を賑わした参加者のなかにはアニー・レボヴィッツ、マシュー・ロールストン、ペギー・シロタ、ミッシェル・コムテ、パトリック・デマルシェリエ、デイビット・ラシャぺル、スティーブン・マイゼルなどの第一線のフォトグラファーのアシスタントの面々も。ロールストンのアシスタントの一人で、ファッション写真に傾倒するジョーダン・ナタルに話を聞くと、やはり活躍中のフォトグラファー達は自身の創作活動に手いっぱいでなかなかアシスタントの後押し、とまでは行かないようだ。それもそのはず、売れっ子フォトグラファーはアメリカの両岸はもとより、ヨーロッパなど世界中を常に飛び回っている。ニューヨーク出身のナタルも現在はロサンゼルスを拠点にしているものの、仕事で地元に帰ることも多いという。『マシューやルーヴェン(アファンドール)の撮る写真はほんとにキレイなんだよね。もちろん彼らに受ける影響は大きいけど、僕は(リチャード)アベドンや(ロバート)マックスウェルというクラシックなスタイルにインスピレーションを感じる』自分で努力して作品作りの時間を見つけるという彼の作品にはたしかに古典的したたかさを秘めたアプローチが見られる。
フォトグラファーのスタイルを忠実に知り尽くし、実に精密な貢献をするアシスタント達なくしては、規模の大きくなる一方の今日の撮影は成り立たない。しかしこういった若い才能はその完ぺきさゆえに一個人としての評価を受けられる機会をなかなか与えられない。キュレーターのミートリーは、働き者のアシスタント達とエージェント、コレクター、クライアントと達との交流の場となればと、この写真展のオープニングに力を入れる。今となっては師と仰がれるマシュー・ロールストンも数年前にはアシスタントとしてこの写真展に参加していたとか。『今の彼の活躍ぶりを見ればここにいるアシスタント達のポテンシャルが無限大なことが分かるでしょ』と副キュレーターのロベルト。『何年にもわたって、仕事を通して経験を共有してきたアシスタント達に喝采を。彼らは影のヒーロ達よ』とペギー・シロタもプログラムに言葉を寄せる
写真展、スタジオに関する問い合わせはダイアナ・ロベルトまで。
SMASHBOX STUDIOS
住所:8549 Higuera St. Culver City, CA 90232
TEL:+1 310 558 7660
diana@smashbox.com
https://www.smashboxstudios.com
Text: Aya Muto