レベレーションズ
THINGSText: Valerie Douniaux
日本人の現代アーティストを特集したヌーベル・ギャルドに続き、フランス人美術愛好家であり収集家でもあるソフィー・キャヴァレロと出版社のレザー・ノワールによって出版されたのがレベレーションズ。
日本の写真家に焦点を当てたこの本は仏英両言語で書かれている。レザー・ノワール(英語でブラック・リザード、日本語では黒トカゲ)という社名は、日本人作家江戸川乱歩による探偵小説の題名が由来であり、2004年にフランス国内で日本のアンダーグラウンドな文化や現代芸術、アバンギャルド芸術を紹介しようと設立された。
© Takafumi Goto (Channel 67)
ソフィー・キャヴァレロによる執筆の本書は、日本の美術や写真について詳しいティエリ・デコスタ、ヴァレリー・ドゥーニョー、そしてミケッラ・スコッティと共同で書かれており、アルル国際写真祭の前夜祭でお披露目された後、2013年9月に店頭に並ぶこととなった。
この本では主に1960年以降に生まれたアーティストを扱っており、特に若い世代に重点を置いている。13本のインタビューが掲載されており、主に1980年から2000年の間に名声を得た著名な写真家(荒木経惟、川内倫子、楢橋朝子、澤田知子、柴田敏雄など)の声が掲載されている。またその他には、50人あまりの若手並びに新進気鋭の写真家による写真が五つのテーマに沿って並んでいる。
© Kazuyoshi Usui
レベレーションズはビジュアルを主に扱っているが、同時に日本人による写真及び文化を理解する手助けとなるよう、分かりやすくかつ様々な情報を盛り込みながら解説が付けられている。今回選ばれたアーティストの経歴は多岐に渡り、作品の題材や技法も様々である。
編者たちには日本の写真家を網羅しようという驕りの気持ちは無く、ただ日本の現代写真界を広く取り上げ、特に若手アーティストたちに作品を日本や海外で知ってもらう機会を与えようという意図があるのみである。本書は新たな世代の写真家を紹介するだけではなく、現在の写真市場で主流であり、世界中の美術館や学校で飾られている写真における最近の傾向を明らかにすることも目的としている。
Courtesy of Wada Garou Tokyo © Yuki Aoyama
これまで出版された日本の写真家による作品を集めた書籍の殆どとは異なり、この本は日本の写真界の発展を歴史的に網羅したわけではなく、むしろ現代の作品を活き活きと表現し、一部は本書の後半で紹介されている日本人の作品やもちろん写真家自身、さらに美術館やキュレーター、他の職種の人々などを形作っているそれぞれの性質との出会いを提供してくれる。
さらに作品集のなかでは、明らかに違う技法を用いて異なる風に作品を作り上げているにも関わらず、アーティストたちが作品を通して日本社会の像をどのように描き、共通の先入観を表現しているのかを伝えてくれる。レベレーションズは何よりもまず人に関わる胸躍るような体験であり、日本人の写真作品を愛するヨーロッパの人々と、そんな彼らが愛し、更に作品を楽しみにしている才能溢れるアーティストたちとの邂逅なのである。
Révélations
発売日:2013年9月1日(日)
価格:35€
出版社:Le Lézard Noir
仕様:23 x 23 cm, カラー、316ページ
言語:フランス語、英語
ISBN:978-235348-0517
https://www.lezardnoir.com
Text: Valerie Douniaux
Translation: Yuki Mine