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イグナシオ・マスロレンズ

PEOPLEText: Gisella Lifchitz

私は、質問し続けた。そして、答えは、強くはっきりと返ってくる。イグナシオは自信をもってこう言う、『僕にとって、フィクションは完全に死んでいるんだ。映画の未来は、フィクションとドキュメンタリーの間の何か少しハイブリッドなものなんだ。』

あなたは地図作製に特別な興味があるんですよね?それはなぜ?

—小さい頃から地図が大好きなんだよ。デザインと地図の色が大好きなんだ。地理的な興味ではないんだ、美的なものなんだよ。地図を作るのがすきなんだ。

それからナチョの新しい映画「パブロ・デカルとロサリオ湖の謎」について質問した。このインディ・ジョーンズのような映画はフィクション、アドベンチャー、危険、旅、ジャーナリズム、演出を全て混ぜたものだ、そしてそれ以上に、美しいアート作品だ。映画は、ナチョがよく知っている場所に近いアルゼンチン南部で撮影され、映画の中で私たちはその場所を知り理解することとなる。そして、音楽家パブロ・デカルは、パタゴニアの真ん中で失われた石を探す驚嘆すべき旅へと私たちを誘う。

イグナシオはこう言う、『アガスティン・メンディラハーズ(シナリオライター)はこの映画の中で良い仕事をしたよ。彼は天才だ、もう本当にヒーローなんだよ。このプロジェクトで僕の助けとなったもう一人の人物は、僕の父親なんだ。映画の中にも出演しているよ。』

イグナシオ・マスロレンズ
Pablo Dacal and the mystery of Rosario Lake (2008)

この映画は約30秒間真っ黒のスクリーンが流れる。これは、謎でおもしろいものだ。イグナシオはまるでキャンプでもしているように、かくれんぼをしている。彼の心臓と私たちの心臓が同時に、どこに隠れているかは関係なく、見つかるのを待っているようにドキドキする。これが彼の詩的な部分の一部だ。彼の映画の中にでてくる猫と手袋のように、彼が創り出し、カメラを通して発見する物の形であったり、ビデオクリップに与えるリズムであったり、その冗談のようなシンプルさが彼自身と彼のアートをはっきりさせる。

イグナシオ・マスロレンズ
Terraza (2004)

これからのプロジェクトについて教えてください。

パブロ・デカルを主役とした映画を作りたいと思ってるんだ。僕はスクリーンの中の彼が大好きだし、とても才能のある人物だと思う。また、ビデオクリップも作っているし、ローカルチャンネルのために、他のミュージシャンとのテレビ番組も撮り終えたところなんだ。これにはフィクションの語りも入っているよ。

映画作りにあたり、なにか限界はありますか?なんでも映画にできると思いますか?

自分のルールに背かないかぎり、なんでもできる。監督のハビアー・ダウテがそう言っていたよ。ルールというものに委ねているんだよ。それが限界だね。日本の映画監督、三池崇史は子供が泣いているのを絶対に撮影しないと言っていた。これが僕の言わんとしていることだよ。

イグナシオはただの映画制作者ではない。友達にでもなれるし、映画にでも連れて行ってくれるような男だ。だけど現実は、カメラの後ろにいる男なんだ。そのおかげで、この世界はよりよい場所なんだと私は確信する。

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Fumi Nakamura

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