曖昧な境界:ハンブルグ現代音楽の12日間

HAPPENINGText: Gudrun Rau

この春の美しい午後に、本当にこの3メートルの厚みのある燃料庫のコンクリートの壁の中で過ごすつもりなのだろうか?と思ったが、私はこの超現実主義な建物を大変気に入っているし、ここでこれから私を満足させるようなコンセプトのバッハやライヒをフューチャーするコンサートが行われるのだった。

この会場にはとても驚かされる。明るくシンプルな部屋に、木目のフロアとスタイリッシュな小さ目のキッチン、窓いっぱいに広がるのは、ザンクトパウリのサッカー競技場、ハイリゲンガイストフェルトの遊園地、遠く離れた港のクレーンを重ねた素晴らしい眺めだ。快活な外の世界は遠くのことの様に思え、この小さなコンサートホールには何の音も聞こえない。

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私たちが聞いた最初の曲は「Die Bachmaschine(バッハマシン)」というミハエル・ペテルマン作曲の一部であった。彼はその曲をバッハの曲「平均律クラヴィーア曲集」にちなんで「良く調整された鍵盤」とも呼んでいる。この曲のタイトルはペテルマンがハンブルグの聖ヤコビ教会にある有名な4000本のパイプのアルプ・シュニットガー・オルガンの音を1本1本を録音していることに由来しており、その後バッハの楽曲のバリエーションとして構成、編成された。信じられないほど素晴らしいこのオルガンの反響と不自然ほどの完璧さには鳥肌が立つ。そして、そのような仰々しい音が、小さなスピーカーから流れていることがとても不条理に思える。

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全体のプログラムは、コピー、再現、サンプリングの創造についての興味深い講義だった。1500本もあの録音されたパイプの音はコンピュータのメモリに保存され、サウンドシステム経由で再生される。それは1722年からのバッハの曲であったが、マイケル・ピーターマンによって新しいバージョンとなった。彼は、それ自体古い楽器からのコピーである“本物の”チェンバロで、演奏に加わった。素晴らしい!

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フルートとチェンバロのオブリガート(右手で独立したパートを演奏する手法)のための「ソナタ・ロ単調」が、フルートで演奏されるスティーヴ・ライヒの「ヴァーモント・カウンターポイント」や、チェンバロで演奏される「エレクトリック・カウンターポイント」と入れ替わる。どちらも再現されたスピーカーからのチェンバロの伴奏に合わせて。このバッハとライヒの音楽の対面は、後半にかけて類似点を伴い、どちらもまっすぐで単調なパートと、スウィング調のパートで構成される。

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