「50年代のイタリアン・デザイン」展
50年代という時代は、他と比べて一般的に、世界中で “イタリアンスタイル” を確立するような注目がなされた時代だ。イタリアの特徴をもったデザイン、ファッション、シネマ、建築は一様に、楽し気なセンスのビジュアルに変換されて繁栄し、その楽観主義が、戦後のこの国の政治や経済における再構築のきっかけになった。
本展が、この時代の多くの領域に渡るものを残そうという意向をもって生まれたのも、不思議ではない。本展は、ミラノのドゥオーモの側にあるパラッツォ・レアーレで開かれ、今年最も注目された展覧会の一つとなった。
Fiat Nuova 500, Dante Giacosa (1955)
本展では、3000平方メートルの展示スペースを使用し、700以上の作品を展示し、訪問者をイタリアの歴史の中でもっともクリエイティブな時代の体験で満足させる。作品を展示したアーティストのリストには圧倒されるものだ。
Pirelli Tower, Gio Ponti (1956)
芸術家からは、ルーチョ・フォンタナ、アルベルト・ブッリ、レナート・グットゥーゾなど、ファッションデザイナーからは、フェラガモ、グッチなど、工業デザイナーには、ダンテ・ジアコーサ、ブルーノ・ムナーリ、マルチェロ・ニッツォーリなど、建築家からは、ジオ・ポンティ、ミケーレ・デ・ルッキ、カルロ・スカルパなどだ。そしてさらに、写真や映像などのスペースがある。
Lettera 22, Marcello Nizzoli (1949)
それぞれのオブジェは、時代や出会いによる古色で魅力を増した他は、元来のチャーミングさをそのまま残している。ニッツォーリの「Lettera 22」(1949年)は50年代のジャーナリストが使ったタイプライターで、すぐに外国の編集室でも採用され、アメリカ映画でも見られるようになった。ジアコーサの「フィアット ヌォーヴァ(チンクエチェント)」(2代目フィアット500)という車(1955年)他、ここで展示された多くはとても画期的なものだ。
全体的なスタイルは、主にその時代のグローバルな感覚や、文化的な雰囲気を与えるというもので、侵略的すぎるというわけではない。幻想的な見方をしていた。この大きくて意欲的な展覧会に訪れるのは大変なことだが、その努力の価値は充分にある。
The 1950s: the Birth of Italian Creativity
会期:2005年3月4日(金)〜9月11日(日)
会場:Palazzo Realee
住所:12 Piazza Duomo, 20122 Milano
TEL:+39 (0)2 8846 5230
https://www.annicinquanta.org
Text: Francesco Tenaglia
Translation: Yurie Hatano
Photos: Courtesy of Artificioskira