ソナーサウンド・トーキョー 2004

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

そろそろ、レイ・ハラカミの時間だったのでホールへ戻ると、会場から聴こえるのはジャジーで美しいエレクトロニカを演奏するレイ・ハラカミとはまったく違うノリのいいハウス・ミュージック。

もしやぼくの知らない間に音楽のスタイルを変更してしまったのか、もしくは時間を間違えてしまったのかと驚き、足早にホールへ入るとステージ上では日本人ではないDJが演奏していた、なかなか前に行くにも人が多く進めず、後ろの遠いところからでしか判別できなかったがアクフェンのDJだったようだ。


Akufen

レイ・ハラカミの次はアクフェンだったからやはり見逃したんだと、意気消沈。しかし、いくら時計を見直しても時間は間違っていなかった。気を取り直して、数年前から盛り上がりを見せるクリック・ハウスのシーンを牽引するカナダのアーティスト、アクフェンのDJを観る。カナダはミューテックという大きなマルチメディア・フェスティバルが行われていることからも、今注目されているシーンで多くの才能あるアーティストが生まれてきている。

アクフェンのDJ自体はなにか調子の狂ったものだった。後から分かることなのだが、レイ・ハラカミが台風の影響で大幅に遅れたことから当初予定されていた出演時刻より早まって演奏を行ったからかもしれない。いまいち乗り切れていなかったようだ。


Rei Harakami

そして、台風を乗り越えて、レイ・ハラカミが登場。ダムタイプの高谷史郎のビジュアルとあいまって、会場全体を包み込むエレクトロニック・ミュージックは脱帽もの。特にシロー・タカタニのビジュアルは、一般的なVJなどで見られる発想とはまったく別次元のアプローチから作られているようなビジュアルで、音楽と完璧にシンクロしていく、静かだが非常に有機的なものだった。

レイ・ハラカミの演奏後ソナーサウンド・トーキョーのもう一つのテーマとしてフォーカスしているソナーサウンド・シネマの会場へ。

上映されていたのはジェフ・ミルズによる「Three Ages」。バスター・キートンのサイレント・フィルムにジェフ・ミルズが音楽をのせるという試みだ。上映後おこなわれたディスカッションでは、どう映像と音楽とのマッチングのバランスを考えたかという質問に対して、楽曲の雰囲気や構成よりもボリュームの上げ下げで映像とのミキシングのバランスを調整したと答えていた。なんともミニマルな返答だが、色々試みた先に行き着いた答えだったようだ。

ジェフ・ミルズの作品もさることながら、メイン会場の喧騒を離れ、深夜の映画館で良質な映像と音楽を観賞する体験に、なんともリッチな気分が味わえた。


Photo: Akihiro Saga

イベントの休憩所となっているホールの前のバーコーナーも興奮した観客で埋まっていた。そのスペースにも今回出演予定のアーティストたちがちらほらあらわれる。そこで見付けたのは、スクエアプッシャーの弟でもある、シーフェックス・アシッド・クルー。缶ビール3本を重ねて手に持ち歩き回っていた。

話しかけると気軽に答えてくれて、アーティストがセキュリティーにバシバシ固められている状況では味わえないオープンな環境がこのイベントの醍醐味でもあるだろう。

以降も、チックス・オン・スピードやホワン・アトキンス、カール・クレイグなどが登場し会場のボルテージは上がる一方で一日目の夜は終わりを迎えた。

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