カールハインツ・シュトックハウゼン

PEOPLEText: Roberto Bagatti

昨年、モデナで開催されたアンジェリカ・フェスティバルでの、「オクトフォニー」というコンサートに非常に大きな衝撃を受けました。照明が落とされた中でのそのショーはとても驚きでした。私は、前にあなたに勧められた通りコンサートの間ずっと目を閉じて聞き、その体験からその音が持つビジュアルの強さというものに驚きました。自分が宇宙での爆発のようなものの中心にいて、自分の周りには何千という細かいものがぐるぐると渦を巻きながら飛んでいるような感じがしました。このような作品を作曲する時、頭の中に何か強いビジュアルが浮かんでいるのですか?

いいえ。スタジオでは、音を聞きながら自分自身の中で起きる感情に従って、常にどれを使ってどれを排除するかを考えながら作曲をしています。しかし、同時に私は音を操る技術者でもあります。つまり私は、常に空間で音を形成する新しい方法を模索しているのです。今までは、音楽は常にある一つの場所で起こるもので、実際モノラルで聞いており、時々稀にステレオで聞いています。しかしこれからは、音が私達を取り巻くのです。そうして、私達の精神は音にのって体から抜け出すことができるのです。音と一緒に飛び回り、空間は無限のものとなる。それができるか否かは作曲家の技術次第です。つまり今、私達は「空間音楽」という、音楽の全く新しい歴史のスタート地点にいるわけです。


Karlheinz Stockhausen “Oktophonie” 1990-91

それが実際に実現できているという点が、本当に驚くべきことです。オクトフォニーが終わった時、自分はコンサートを聞いていたのではなく、一つのイベントの中にある様々な小さな出来事を体験したような気分になったのです。

あなたのその表現は、まさしくその通りだと思います。しかし、体から抜け出して、外の空間で新しい体験をするというのは、奇妙なことでもあります。私達の体というのは地球やその他地球上全てのものとの接触が必要です。その状態というのはとても素晴らしいものだと思います。おそらく死とはそういうものなのではないでしょうか。

音楽の未来はどこへ向かっていくと思いますか?

私達一人一人が音楽という惑星を学ばなくてはいけません。その音楽がどの文化、伝統、国から来たものであろうと。しかし、あらゆる音楽のミックスが普通のものとなりつつある今、それほど時間はかからないでしょう。そのうち、人々は空間を音と共に飛び回るという体験が可能となる、巨大なコンサートホールようなものを創造すると思います。

人間の絶えまない進化は、空間に身を置かずして、体を抜け出し空間に存在する、音にのって動き回るという、新しい「空間音楽」というものを奏でたいという欲求を生むと私は考えます。人間が、その宇宙の感覚や体験と呼べるものへ適応できるまでには数百年かかるかもしれませんが、音楽はそれを可能にするのです。

Stockhausen-Verlag
住所:51515 Kurten, Germany
FAX: +49 (0)22 68 1813
https://www.stockhausen.org

Text: Roberto Bagatti
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Paola Manfrin

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