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ソナー 2003

HAPPENINGText: Ben Vine

ソナー・コンプレックスで行われた、ケビン・ブレックタムのパフォーマンスは本当に素晴らしかった。デジタルカメラでステージを映しているのだが、それがクリステン・エリクソンのパフォーマンスの時に背景として使われていたのだ。ラップトップを片手に登場したクリステンが最初に唄ったのは、オフ・チューンの曲。その後披露した曲も、ポップなのだが僕達が普段耳にしているようなものではなく、もっと力強いポップだ。また、ホイットニー・ヒューストンの名曲「I WILL ALWAYS LOVE YOU」のジャケットがプリントされた垂れ幕を、彼女が破くというパフォーマンスもおもしろかった。ちょっと悪ふざけが入ったテイストが好きな僕にとっては、心から楽しめたパフォーマンスだった。


Kevin Blechdom © Advanced Music

ふと時計を見てみるともう夜の10時。僕は急いで家に戻り、荷物を置き、11時15分から始まるビョークのライブに間に合うように、ソナー・ナイトの会場へと急いだ。会場には入るまでには長蛇の列に並ばなければならず、中に入れた時にはもうすでにライブが始まっていた。僕が最後に彼女の姿を見たのは10年前のこと。イギリスのグラントンベリーという街だったという記憶がある。その時僕がいた距離からは、彼女は4ピクセルぐらいの大きさで見えたのだが、今回彼女のライブが行われたソナー・クラブという会場はかなり大規模だったため、せいぜい1ピクセルぐらいの大きさの彼女しか見えなかった。会場にいるのに、設置されたスクリーンばかり見るのはあまりに味気ない。しかし今回は、家でCDを聴いているのとあまり差はないのではないかと思われるほど、会場は広かったのである。さて、ビョークに話を戻すと、彼女の声は思わず髪の毛が立ってしまうのではないかというほど不思議な力を持っていたような気がする。


Bjork © Advanced Music

演出で使われていたビジュアルも素晴らしかったが、ただ4本のビデオを流して、ステージ前方で花火を散らすよりも、もっと手の混んだ作品を見せて欲しかった。しかし、ヒット曲ばかりではなく、あえて聴いたことがないような曲を多く披露してくれたのは嬉しかった。ハンターという曲は、アーティストである存在と彼女のキャラクターの境界線が曖昧になった曲で、小柄な彼女らしく、ピョンピョンと跳ね回りながら唄ってくれた。また、バッチェロレッテハイバーバラードも素晴らしかった。

オール・イズ・フル・オブ・ラブの時は、クリス・カニングハムのビデオが流されなかったのだが、これはおそらく、ステージでは音楽とビデオがシンクロしすぎるからではないかと僕は予測している。ヒューマン・ビヘイビアは、僕自身とても感動した一曲。彼女の声が抑揚する毎に、緑や黄色の光の波が僕の頭の中で揺れるようなイメージだ。どの曲も本当に耳に心地良く、ライブ終了後数日間は、気付くと彼女の曲が頭の中でリピートされていた。結局ビョークは、18曲を熱唱。アンコールには残念ながら応えてはくれなかった。かなり期待していたせいもあり、何だか物足りない気にもなったのは、僕だけではなかったと思う。


Aphex Twin © Advanced Music

オキサイド&ニュートリオのライブも予定されていたのだが、急きょ中止されたため、ヴァディムが穴埋めをするという形になった。ムーチョ・ムカッチョというカタロニア人ラッパ−がいるのだが、彼の登場に関しては僕個人としてはあまり喜べなかった。と言うのは、彼にはラッパ−としての素質が感じられないのにも関わらず、ヴァディムと仲が良く、常にヴァディムとパフォーマンスを共にしているのかがわからないからだ。僕は時間潰しのために彼らのパフォーマンスを見ていたが、同行していた友人達はすぐにその場から離れるという有り様だった。僕自身、次のエイフェックス・ツインまで待ちたいという気持ちがあったが、彼らが言っていた通り、こんなひどいパフォーマンスを見続けるぐらいなら、家に帰って寝た方がましだった。

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