ソナー 2003

HAPPENINGText: Ben Vine

13日は、木曜日以上の盛り上がりをみせ、地元住民も多く会場に足を運んだようだ。この日僕は、会場でシフトスタッフと対面。その日の公演のチケットはすでに完売。そしてその日の夜の公演だけを見れるチケットも完売したのは、ビョークが出演するからだ。あるイギリス人が、チケットを探している姿を見かけたのだが、来年ソナーに行きたいと思っている人のためにも、こういった状況さけるためには、前もってチケットを購入しておくことを強くお勧めしたい。


Sodaplay © Advanced Music

ソナーがフィーチャ−するのは音楽だけではない。マルチメディアのアートを紹介する展覧会「ソナー・マチカ」も合わせて行われるのだが、こういった試みも僕がソナーを好きな理由のひとつである。この10年を振り返る回顧展では、初期のガスブック5からジェフ・ミルズ、97年のソナーのためにトマトが行ったプロジェクトまで紹介。


Beyond Pages © Masaki Fujihata

また、ソーダプレイのソーダコンストラクターや、藤幡正樹が97年に行ったプロジェクト、ビヨンド・ページズなどを見ることができた。しかし、その中でも一番注目を集めたのは、96年にポール・サーモンが制作した、テレマティック・ドリーミングという作品ではないだろうか。ダブルベッドが用意されているのだが、それに横になると、ビデオで投影されている女の子といちゃいちゃできるというこの作品。ISDNやビデオ・カンファレンス・テクノロジーは好む冷たさが、この作品には不思議とない。なぜか人間味に溢れ、インターフェイスだということを飛び越えて、思わず彼女に電話番号を教えたくなってしまう。しかし彼女にはそれ以上発展する気はまったくないという悲しい現実。だがそんな彼の攻める人などいないのである。

この10年間でソナーが築き上げて来たイメージは、それだけでも十分に価値があり、僕が今まで見てきたなかでもこの回顧展ではコンピューターやCDデッキ、ビデオデッキなどを多く設置し、それを通じて観客は、過去10年間に紹介されたインタラクティブ・アートやビデオ、音楽などを楽しむことができた。唯一残念だったのが、僕がもっとも見たかった作品が紹介されていなかったことだ。時間は無駄にできない。僕は急いでその場を去り、ミス・キティンがパフォーマンスを行う会場に向かった。


Miss Kittin © Advanced Music

予想した通り、会場は超満員でものすごい熱気。しかしそこに集まった誰もが、涼を求めてやってきたのではない。ダンスミュージックの使命はただひとつ。それは人を踊らせることだ。そしてマドモアゼルKこそ、それを見事に行ったパフォーマ−だ。しかしそれさえもまだまだ準備運動程度。


Fabio © Advanced Music

次に登場したファビオは、イギリスのBBCラジオ1のセッションに制作したドラムとバスの楽曲を披露した。あまり聴き慣れないものだっただけではなく、イントロも何もない楽曲だったが、上質なバックビートが会場にうねりの波を作らせていた。誰もが彼のパフォーマンスを楽しんだようだったが、そのパフォーマンスが行われたのが午後だったのが唯一残念だった。それは彼が奏でるドラムやバスの音は、明らかに夜向きだったように思えるからだ。


Soundcluster

会場となっている美術館内の「ソナラマ」は、サウンド・インスタレーションを専門に紹介するスペースなのだが、ここでの展示も残念ながらあまり満足がいくようなものではなかった。スナスフィアは、普通なら外では聞こえないような音を拾い再生するというインスタレーション作品を制作したのだが、あたりの喧噪によってあまりにもとらえがたいものだった。また、ローランド・オルベターが制作したロボットは、元はラ・フーラ・デルス・バウス・ファウストというカタルニア・ダンスの団体のために作られたものなのだが、どういう訳かダンス中で流れる音楽の良さをかき消していたように思えた。

また、ベン・レクトのオーディオ・パッドには、長蛇の列ができていたので、おそらく見る価値十分の作品なのではないのだろうか。フランシスコ・ロペツの作品「トゥー・ブラック・スピリッツ」も、長時間待たなければ体験できなかった作品だ。大きな長椅子があったり、スクリーンやかすかに聞こえるサウンドトラックが流れていたりしたので、ちょっと休憩するには悪くない場所だったが、何だかとっても虚無的な場所であったのは本当だ。

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