イマジナリー・フォーシズ
PEOPLEText: Sachiko Kurashina
イマジナリー・フォーシズについて良く知らなくても、彼らの作品はきっと何処かで目にした事があるはず。ハリー・ポッター、セブン、スパイダーマンなど、有名な映画のタイトルシークエンスは彼らの作品のほんの一部だ。今回お話を伺ったアートディレクターのマット・チェコースキーの言葉からは、どの作品にも丁寧に、そして誠実に立ち向かう彼らの姿勢を伺うことができた。
MINORITY REPORT: Prevision Sequences
Client: 20th Century Fox and Dreamworks, Director: Steven Spielberg
自己紹介をお願いします。またイマジナリー・フォーシズについても教えて下さい。
私のイマジナリー・フォーシズ(IF)での活動は、1998年から始まりました。デザインスクールを卒業した後、主にモーションやインタラクティビティを中心に様々なメディアで仕事をしてきましたが、色々な展開が期待できる場所に自分自身を置いてみたいと思い、IFに辿り着きました。そういった点では、IFは完璧な場所です。
メインタイトル作品の制作を目的に1996年にIFは設立されましたが、それ以来、映画産業のタイトルシークエンスなどから競技場などの大画面で映し出される映像、建築環境まで、様々なプロジェクトを手掛けてきました。IFはロサンゼルスとニューヨークの2ケ所にオフィスがあるのですが、ハリウッドとの繋がりによって、東海岸、西海岸の両方に色々な機会が巡ってきています。
幅広いプロジェクトをこなす秘訣を教えて下さい。
全てのメディアに私達の作品が受け入れられているのは、それが私達の考え方にダイレクトに繋がっているからだと思います。IFは、本当に色々なタイプのスタッフが集まったグループです。やることも違えば、その出身地も違う。それでも最終的に全員が「アイディア」を提供する、という所に到達するのです。この問題にはどう対処するのがベストだろうか?(もしそれが広告会社、大企業、あるいは映画監督だった場合)どうすればこのクライアントが伝えたい事を一番良い方法で伝える事ができるだろうか?プロジェクトの内容が違えども、このよう自分自身に問いかける質問がいくつかあります。私達が多様であることで、同時にフレキシブルでいられる。そしてそこから、予想もつかなかったコンビネーションが生まれてくるのです。
JANUS: Commercial Campaign/Brand Identity/Live Action
Client: Janus Mutual Funds, Agency: Foote Cone & Belding
新しいプロジェクトに取り掛かる際、メンバー各々の役割分担はどのようになっているのでしょう?制作プロセスについて教えてください。
プロジェクトが違えば、それがもたらすチャレンジも違うものです。そして特にこれは、メディアの種類が多様な時ほど起こりうる事です。現在IFには約6つのチームがありますが、その組織自体は堅苦しいものではありませんし、各々のチームが混じり合う場面も多くあります。そのプロジェクトに必要なものに応じて、私達は展開を試みたり、何かと何かを結び付けたりします。各々が違う事を行う大勢の人たちと私達は仕事をしているのです。
SE7EN: Title Sequence/Brand Identity/Live Action
Client: New Line Cinema, Director: David Fincher
SPIDER-MAN: Title Sequence/Feature Film Marketing
Client: Sony Pictures, Director: Sam Raimi
世界中の人々が、IFの制作したシークエンスを見ることについてどう思いますか?「有名な映画」を手掛けること故のプレッシャーは感じますか?
自分の作品がステージ上にあって、それを沢山の人が見るというのは本当に素晴らしい事です。人々に語りかけるという点では、映画はとてもパワフルなものだと思いますし、まさにそこにプレッシャーがあると思います。私達は多くの素晴らしい機会に恵まれ、多種多様なスケールで色々なストーリーを伝える事のできるチャンスを掴んでいます。私達が制作したどのシークエンスでも、観客の一人一人に気持ちを込めて接するように心掛けています。
NFL BALTIMORE RAVENS: Event/Live Action/Music, Sound Design
Client: NFL Baltimore Ravens
シークエンスだけはなく、ニューヨークのタイムズ・スクエアにあるインタラクティブな広告、競技状のスクリーンで映し出される映像の制作などから、IFの作品の規模はとにかく「大きい」という印象を受けます。また、それぞれの作品を見るオーディエンスの違いもあると思いますが、このような点についてはどう思いますか?
「大きい」と感じられる作品に人は引き込まれて行くと思います。もちろん、莫大なスケールの作品を制作するのはたいへんなことですが、私達は切手のような小さいものから競技場のスクリーンのような大きなものまで、何でも作ります。スケールは違っても、派手なものからおとなしいものまで、アグレッシブなものから平和的なものまでと、作品の幅は広いのです。コミュニケーションをとることは私達にとっては重要です。誰に向かって話しているのか?伝えたいメッセージは何か?摩天楼の背後に夕日を付けたり、テレビの画面の中でタイポグラフィーをジャンプさせることはできますが、もしそれで伝えるべき事を伝えていなければ、そしてもしそれが感動を引き起こすものでなければ、仕事をやり終えた、という感覚は私達には湧かないのです。
MEN IN BLACK II: Feature Film Marketing/Brand Identity/Live Action
Client: Sony Pictures, Director: Barry Sonnenfeld
IFは、ハリウッドを拠点に活動していますが、映画の都と知られているこの街で活動することについての利点は何ですか?アーティストとして、刺激やインスピレーションを受けやすい街ですか?
ハリウッドはすごい街です。この街にいる事で、常にエンターテイメント産業に関わっていられるからです。映画が本当に好きだから、IFのスタッフはここにいる。映画そのものに多大なる影響力があるから、私達は映画が大好きなんだと思います。それが様々なエリアに踏み込んで行くのを助けてくれる産業、メディアとの、私達の関係なのです。
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