そしてモチーフとして好まれているのがペンキブラシのストロークを生かした竹。ここにはどうもネオモダンの香りがする。竹は真っすぐだけど、確かに生き物。その矛盾がネオモダンな空間作りには好まれる。ヨーミックの作品は実は何重にも層をなしていて、遠巻きにみるだけでは見逃してしまう様なところに竹があったり、テクストが隠れていたり。「みんなが最も嫌うスローアップ（殴り書き）やタギング（スタイライズされた落書き、ほとんどの場合一色で一筆書き）が一番好き、」とストリート表現の原点に立ち返る発言などして、懐古主義を匂わせてる。この頭の中では３ムーヴメントくらい先を行っているに違いない、と確信させる。本人はにやりとさりげなく笑みを浮かべる。

現在拠点を置くロサンゼルスのニュー・イメージ・アートで行われている個展も等身大のキャンバスがずらりと並ぶ。ブリッグノット・シンキングスと名付けたこの個展、テーマは沈む戦闘船。何気なく積み上げられたかのように見えるビンテージ・スーツケースの山は確かに「水にひたって」いる。人工的なまでに均整な規格サイズのキャンバスがギャラリー空間を支配する中、この「水」が人間の及ばないところでの脅威をさりげなくトラウマとして表現し、と同時に有機的自然の要素をポジティブに示唆して空間のバランスを測る。

オーガニックなミニマリズムが重宝されている今、時代の「流れ」とはシンクロしない独立した流れをもつグラフィックがあちこちで注目を集め始めている。原点に立ち返ることの大切さも懐古主義を通して語られる。「良いものは良い」。ネオ・グラフィック集団の洗練された襲来を覚悟せよ。柔軟な受信準備が必要です。

Chris Yormick “Brigknot Sinkings”
会期：2002年3月23日〜4月27日
会場：New Image Art
住所：7906 Santa Monica Blvd, West Hollywood, CA 90046
TEL:：+1 323 654 2192
https://www.newimageartgallery.com