コリン・メトカーフ

PEOPLEText: Rei Inamoto

本の序章からの抜粋という形で物語と架空のニュース原稿も書いたのですが、世に出ることはありませんでした。また、秘密の地図やステンドグラスのフレーム、空気のグリッドを思い起こさせるような、ペンとインクで描いた直線的なイラストレーションも数多く制作しました。想像上のマシンのフェイスプレートも制作し、ジャンヌ・ヒラリーの協力で写真を撮影しました。タイポグラフィーに関しては、コンセプトをサポートするものとして、見なれたものであると同時にエキゾチックである必要があったので、数年前に作り始めた「M2K」という陽気でテクノっぽいタイプフェイスを発展させて使い、「RESOLUTION INDEPENDENT」の文字の部分には、アンティークでモダンな雰囲気を出すために、筆記体をカスタマイズしたロゴタイプを制作しました。

また、秘密のエラーメッセージのために、不規則なドットマトリックスフォントもデザインしました。全部で50くらいのイラストレーションやイメージを制作し、その殆どを削除していきました。全体的なプロセスは、それぞれの締切に合わせて2、3ヶ月の期間で展開しました。宣伝で使用したオブジェクトの3Dバージョンのレンダリングをするにあたって協力してくれたベン・ラダッツと彼の会社 MK12 では、木製の衛星を目玉として使い、その方向性に合うような、雰囲気のある予告編とタイトルを制作してくれました。「R」の形の巨大な巨石(もちろんバーチャルの)を作り、数秒間のうちに全体のストーリーが分かるようなものに仕上りました。

デザイン分野だけでなく世界全体として、今日起こっている興味深い動きとは?

良くも悪くも、テクノロジーというものが中枢のコンセプトとなっていると思います。今現在、お粗末なルネッサンスとして解釈されていることが数多く巻き起こっています。音楽、デザイン、タイプ、建築、科学、プロダクトデザイン、フォトグラフィー、フィルム、それらは皆、再定義された影響を互いに与えています。ある分野にいる人達は、自由に使うことのできる道具があるために、他の分野でも実験を展開し、それぞれの眼識を表現することができるようになっています。

インターネットの普及による文化的な交流も、非常に面白い結果を生み出しています。ヒトゲノムプロジェクト、量子コンピューター、バーチャルセックス、工学的発見など。未来の人のエクスタシーのようなものを経験することは、簡単なことなのです。もちろん、その他の面も同様に注目すべきものがありますが。

テクノロジー・フェティシズムの文化は、それほど奨励できるものではありません。今日の株式市場と1年前のそれを比べてみると、昨年の4月までは、ほぼ盲目的な信用がテクノロジーとテクノロジーエコノミーに与えられていました。そしてその後、最新・最速を追い求めるが為に処分された旧式の製品によって埋め立てられた膨大な面積のゴミ処理場が生まれました。そして、技術的、物質的な没頭状態の副産物としてのその他の人達や生物が、自然界から分離されてしまっています。全てのものに、値段がついているのです。

もしデザイナーをやっていなかったとしたら、何になっていたと思いますか?また、今から10年後は、どんなことをやっていたいですか?

ライターか建築家になっていたと思います。将来的には、様々なメディアで自分自身のコンテンツを創造し、デザインし、制作していると思います。

最近読んだ本は何ですか?

パトリック・M・ギャリーの「A Nation of Adversaries(敵だらけの国家)」です。著者は、憲法で認められた法定学者で、彼の本は、アメリカの訴訟と法律に対する強迫観念によってもたらされた一般市民の社会的退廃についての論評となっています。気楽に読めました。

最後に一言お願いします。

若い時は謙虚に、年をとってからはオープンマインドであることを心掛けること。実験をくりかえし、失敗を恐れないこと。フランク・ゲーリーやフランク・ロイド・ライトのようなアーティスト達は、70代になってから多大な貢献を成し遂げました。僕はまだ30代で、もし僕がこれが僕の頂点だと考えるなら、今すぐやめていることでしょう。全体的にカルチャーは、若者に取りつかれていて、絶えまなく変化しています。希望と進化が過小評価されているのです。

Text: Rei Inamoto
Translation: Mayumi Kaneko

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