岩井俊雄+ばばかよ「ハッピー・テクノロジー・ラボ」
HAPPENINGText: Tomohiro Okada
『見る者、使う者に対して創造力の余地を残している』岩井氏は、ばばかよのイラストをこう評す。なるほど確かに、可愛らしさにも関わらず、確かにその提案されているテクノロジーに想いを馳せることができるものになっている。どうも、イラストそのものによって完結された世界観を押し付けようというよりも、テクノロジーから生まれる発想をそのまま、思いつくままにばばかよさんの手によって可視化してそのものを見せてくれている、まるであたまの中にあるもやもやの一端を目に見えるように見せてくれているみたいなのだ。
次に目が行ったのは、眠そうな目を持った箱。箱ロボ「キュビィ」。働くためのロボットだけでなくペット型ロボットが登場した今ではあるが、結局はおもちゃと同じで飽きて埃を被ったものになってしまうのではという皮肉から生まれたもの。最初から箱なので、しまっているのと同じというか、自然とおいておくことができるもの。基本的には “寝ている” ので、つき合って欲しいときだけ “起こせばいい” ので “省電力”、それでも飽きたら普通の収納箱に、筐体の素材も紙製ということで環境にも優しいみたいである。
その隣に、ミニディスク・プレーヤーのような小さい装置とそれにヘッドホンが置かれている。それを装着し、プレーヤーの方を光に当てろと促される。促されるままに光に当たると音がする。それに気をよくしてプレーヤーをいろいろと光に当てると、ある種の音楽のように錯覚させてくれる音の流れが生まれる。これは光に反応して音を奏でる音レンズだ。『これを着けたままで夜の列車に乗ると色々な音が様々なかたちで奏でられておもしろいんだよ』と岩井さんは語る。そして『街中にある光が音源なので、テープやMDがいらないプレーヤーだよ』と。
もう一つの壁面一面には、携帯ゲーム端末のワンダースワンが並んでいる。その画面の中には、ばばかよさんが描いたいすやドーナツを擬人化したキャラクターがそれぞれ一つずつもの欲しそうな顔をして待っている。操作ボタンを使って、指を使って踊らせようという「ゆびさきダンス」だ。そして、その横のワンダースワンにはヘッドホンが。画面には16×16のグリッドがあり、そこに点を並べてリズムに合わせて音楽を作曲していく。また画面の左右にいるキャラクターが作った音楽に合わせて踊ってくれるのだ。
このように、携帯電話や携帯ゲーム機などの現物や、ミニディスクやペット型ロボットといったもののかたちをかりて、身の回りのハイテクノロジーが実は想像力を膨らませればもっとハッピーなものになるということをまさに「公開」してくれる展覧会なのであった。
ばばかよとのコラボレーションのきっかけは、岩井氏が坂本龍一と行なったライブの模様をレポートしたまんがを描いたこと。それ以来、ばばかよのイラストを目にして、おもしろいイラストだと興味を持つようになった。その頃、いわゆるCG感のある描画ではなく、手描きの味がある描画をいじってみたいと岩井さんが思っていた中で、ばばかよさんと話すうちにお互い発想として通じ合うところや趣味があい、コラボレーションが始まったのである。
続きを読む ...