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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021

HAPPENINGText: Amelia Ijiri

前記とは全く異なる展示環境のフライングタイガーコペンハーゲン京都河原町ストアー3階では、ンガディ・スマートの「多様な世界」が展示された。内側に入り込むような多重円形の展示スペースは黒人女性の多層的なアイデンティティを象徴しており、コートジボワール南部とガーナ南西部に暮らすンズマ族の人々の「アビッサ」という祭りにおける異性装、最大都市アビジャンのドラァグクイーンのコミュニティを撮影した作品も含まれる「Metamorphosis(メタモルフォーシス=変身)」はセルフアイデンティティとセクシュアリティ、喪失と悲哀をテーマとしたフォトコラージュによるセルフポートレートである。また「Me, First(まず、私)」はセクシャリティや自己愉悦を探求した作品である。


Ngadi Smart, Manifold at Flying Tiger Copenhagen Kyoto Kawaramachi Store 3F. Photo: Takeshi Asano

2020年の KG + Select 2020 グランプリに輝いたリャン・インフェイによる「傷痕の下」は、2018年から2020年にかけて撮影された、性暴力の記憶の断片を象徴する作品群とそれらの記憶に関連するシリーズとで構成された。アーティストは鑑賞者がそれらの体験の一部を持ち帰り、自身の一部とし、しっかりと心の中にしまっておくように願いを込めている。


Yingfei Liang, Beneath the Scars at Sfera. Photo: Takeshi Asano

エコーをテーマとした今年の展覧会は一瞬胸をえぐられるような喪失感に襲われる。2011年の津波によって完全に破壊されて悲嘆にくれる地域、津波に続いた福島発電所事故、新型コロナ感染症の入院患者、現在進行形で絶滅が危惧されている在来植物、無垢なものたち、そして自己受容。悲しみは年月を経ても小さくならないが、私たちが大きく成長すればそれを受容できるようになる。私たちはこの10年にわたり、これらの経験を通じて成長し共同体としての意識を形成してきた。そしてコロナ禍の2年目に突入し、さらに広い視野と理解に到達する。

KYOTOGRAPHIE 2021
会期:2021年9月18日〜10月11日
会場:京都文化博物館 別館、ホソオ・ギャラリー、二条城、両足院(建仁寺山内)など
主催:一般社団法人 KYOTOGRAPHIE
https://www.kyotographie.jp

Text: Amelia Ijiri
Translation: Yuko Shimohara
Photos: Takeshi Asano, Courtesy of KYOTOGRAPHIE

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