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菅原圭輔

PEOPLEText: Ari Matsuoka

2019年の秋、私は公演終わりのがらんとしたシアター劇場で彼と出会った。孤独の椅子を求め劇場外のコンクリート階段に座っていた彼は、まるで小説から飛び出してきたかのような古風な風貌で、実年齢よりも少し大人びた不思議なオーラを纏っていた。菅原圭輔はベルリンを拠点に活動するパフォーマーだ。彼の作りだす作品は、歴代を見ても一貫して人間のもつ繊細な感覚や感情の複雑性について焦点を当てたものが多く、国内外問わず多くのアートファンを魅了している。

現在、10月に日本で公演を控えている舞台『空谷の跫音くうこくのきょうおん』を制作中の彼に、ロックダウン中の活動や自身の創作に関する考え方についてインタビューを行った。


Photo: Miho Yajima   © Keisuke Sugawara

まずは自己紹介をお願いします。

10代の頃、アメリカ・アラスカ州で舞台芸術を学び、2007年より様々な振付師、演出家のもとでパフォーマンスを行いました。2017年に自身の表現と創作に目を向けるため、ドイツ・ベルリンに活動場所を移し、日本、デンマークでの公演、イラクで開催された演劇祭へ参加しました。2019年にクリスティーナ・ディケアと共に 「mellem to」(2つの間に)プロジェクトを始動。2020年より「視覚的楽譜」を用いた「他者との共存」というテーマに目を向け、音楽家や映像作家、俳優、作家など、ジャンルに捉われず様々なアーティストと協働しながら、身体を用いた新しい芸術の在り方を追究し続けています。


“Afterglow”, Premiere in Nürnberg, Germany, 2018   Photo: Miho Yajima   © Keisuke Sugawara
Choreograph and Dance: Keisuke Sugawara   Music: Tatsumi Ryusui

ロックダウン中は何をしていましたか?

2020年3月にベルリンがロックダウンに見舞われた際、当時既に決まっていた公演がいくつかあって。イラクの「アルビール国際舞台芸術祭」に招待いただき、演出家イフサーン・オスマンが制作した作品にパフォーマーとして6月に出演する予定でしたが、それが中止になってしまいました。

公演が無くなってしまって焦りが出たかというとそうでもなくて、できないならできないなりに、やれる範囲でアウトプットしてみようと思い、直ぐに思考を切り替えることができました。自分が予想していたほど落ち込んでいなかったような気がします。


Trailer for “Raum”, 2019

2020年5月には、初めての短編映像作品『Raum』を制作・発表し、5カ国に向けたオンライン上映会を行いました。また、6月に行ったヴァーチャルイベント『ながすぎた胤と壁』では、実父であり舞台家として活動する菅原鷹志と協働し、制約のなか新しい表現の方法を模索する実験的なプロジェクトに取り組みました。

夏の間、一度だけ規制緩和があったのですが、身体表現をするパフォーマーたちに課された新たなルールは「演者同士の距離感を常に6メートルに保つこと」というもので、汗をかいたり、言葉を発する項目に関しては、特に厳重な規則が設けられました。やむを得ない状況だということは認知していましたが、これだとデュオはできないことは勿論、パフォーマー同士での活動は難しいと感じた私は、この間、音楽家や映像作家、俳優、作家など、ダンサーのみでなく様々なアーティストとコラボレーションし、作品をつくり続けていました。


“Super Strings Freeday Nr. 2 – Streicher und Bewegung”, Werkhalle Wiesenburg Berlin, 2021   © Keisuke Sugawara
Performance: Keisuke Sugawara   Music: Tatsumi Ryusui and Adam Goodwin

7月と9月は、クリスティーナの故郷デンマーク・オーデンセへ足を運び、創作活動をしていました。また、9月にベルリン在住のギタリスト流水龍己、コントラバス奏者アダム・グッドウィンとコラボレーションした企画イベント『Super Strings Freeday Nr. 2 – Streicher und Bewegung』では、少数制ではありましたが、観客を招いてパフォーマンスを行うことができました。

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