近年、写真というメディアを使って表現することも増えた。2002年のフォイル・マガジンで川内倫子とタッグを組んだ「No War」の特集では、アフガニスタンでの写真が掲載された。前述の女の子のシリーズとはまたひと味違ったテイストになっている。こちらはより直接的に現実を映し出すことで強く訴えかけてくるストレートな作品たちだ。

Kabul Note, 2002

2011年3月11日の東日本大震災を機に、アートに対する姿勢が変わった、変わらざるを得なくなったと語っている。無論それ以前にも平和を願う作品を多数発表したりと、ポリティカルな側面も見せていた。しかし震災が新たなきっかけとなり、女の子の形を借りて更に強烈なメッセージを打ち出している。

“NO WAR”, 2019, Acrylic on wood, 1170 × 1,035 × 70 mm

かわいい女の子にひそむ凶暴さ。そこに感じた違和感や不安を内省し、社会や人類について思考を巡らせてみるのはどうだろうか？

奈良美智作品集「Yoshitomo Nara」
仕様：330ページ、290 x 250 mm、英語、ハードカバー
編集：Simon Hunegs
デザイナー：Anna Rieger
発行年：2020年
ISBN：9780714879949
https://uk.phaidon.com