エリック・クン

PEOPLEText: Victor Moreno

スウェーデン人写真家、エリック・クンの初個展「Lost in (m)orbital thoughts ((病的な)軌道的思考への没頭)」が、スウェーデン、ストックホルムのクメルホルメン・アート・センターで開催された。この個展では20枚の大きなアートプリントや映像作品とともにアーティストによるインスタレーションが展示された。

セルフィー・ツーリズムの批評や、デジタル時代のごまかし、アイデンティティ、人間の高潔さといったコンセプトに対する探求など、彼の作品は世界中の特異な場所を巡った十年間の旅をおさめた視覚的魅力のつまったイメージの集合体を表現している。今年早くに、彼はイタリアのベネツィアのアルセナーレでも展示をしたり、著名なザ・フォトギャラリーの名簿にも名をつらね、招待制オンラインサイトのアーツィーでも作品が販売されている。


Swing, 2019 © Eric Cung

写真は独学で学ばれたのですか?

はい。1990年代の頃、ストックホルムのコンスファック国立美術工芸大学院の工業デザイン科を卒業しました。スウェーデンで最も大きく歴史もある大学で、様々な芸術分野に向けた学術的なアプローチを重視したカリキュラムでした。わたしはチャンスだと感じて、プロダクトデザインの他にも、建築、陶芸、テキスタイル、また間接的ではありますが、ドキュメンタリーフィルム、映像、そして写真にもふれました。入学する前は、ナショナル・スウェディッシュ・テレビジョン(SVT)でインターンをしていました。当時はまだ16mmフィルムを使用していた頃です。何時間も床で四つん這いになりながらフィルムの断片を探したりして、フィルムの切り方を学んだものです。(笑)

旅があなたの主なインスピレーションの源なのですね。

ええ、その通りです。多くの人にとってもそうだと思いませんか? だって子供の頃、その場所がどんなふうなのか考えても先入観でいっぱいだったでしょう。実際に訪れて、その土地の人に出会って、食べ物を食べ、その文化を経験すると、全ての先入観が一転します。


Exhibition view at Kummelholmen Art Center, 2019 © Eric Cung

今回が初めての個展ですか?

はい、そうです。

どうしてこのようなアイディアになったのでしょうか?

初めてアイスランドとフェロー諸島を旅していた時の2010年から企画を始めました。撮影のためのアイディアを出そうとオンラインでロケーションのリサーチをしていました。見つかったのは大量の美しい写真ばかりでしたが、どれも同じ場所の同じ角度で撮影されていました。それで、もはや何故わたしがカメラを持っていく必要があるんだろうと思いました。これらのイメージはもう何千回と撮られてしまっているのに。そういった衝動がコンセプトの引き金になりました。これが始まりです。南極のペンギンの写真なんて、どれほどみてきたでしょう。今の疑問もなく、もしわたしが南極にいって写真を撮るなら、高画質の素晴らしい風景写真を撮るでしょう。でも、すべからく面白味のないものになります。そんな写真は何度も何度もみているのですから。まるでナショナル・ジオグラフィックのように、写真は素晴らしいのでしょうけど。夕日の中のライオンの写真を何回見たことがありますか?どうして違う写真を撮らないのでしょうか?

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