ディープ・ウェブ・ベルリン

HAPPENINGText: Ari Matsuoka

ベルリンは現在、至るところで建物の解体工事が進み、昔ながらのライブハウスやクラブバーが、閉店や移転するというニュースを耳にする。そんな中、シュプレー川の側に聳え立つ、一際存在感のあるクラフトワーク・ベルリンは、変化の著しいベルリンの街の風景を静止させたかのように、ベルリンテクノの文化やサブカルチャーへ敬意を表し、今もなお、日々新しいプロジェクトを始動している。
今回、私はクラフトワーク・ベルリンで7月12日から8月23日まで開催されていた「ディープ・ウェブ」に訪れた。


Photo: Ari Matsuoka

ディープ・ウェブとは、メディアアーティストのクリストファー・ボーダーと、エイブルトン・ライヴの最古参デベロッパーの一人でもあり、モノレイクのメンバー、ロバート・ヘンケによる、視聴覚インスタレーションとライブパフォーマンス。2016年にベルリンで開催されたCTMフェスティバルでは、初めて短時間のインスタレーションを発表し、フェスティバル史上最高のハイライトを飾った。
それから3年の年月が経ち、再び巨大なマシーンとなってクラフトワーク・ベルリンに帰ってくるということで、ベルリンの街の至る所で、ポスターを目にしていた。

会期中は、毎日開催されているインスタレーションに加え、4日間のみ、クリストファー・ボーダーとロバート・ヘンケによるライブパフォーマンスが公開され、私はその一日を取材することとなった。

当日、ヘンリッヒ・ハイン駅で下車し、ベルリンのメッカでもある“大聖堂”に向かう。写真では収まらない程、巨大な建造物に圧倒されながら重厚な扉を開けると、中はひんやりと冷たく、訪問者である私たちにほんの少しの緊張感を与える。

“元火力発電所”であるこの建物は、頑丈なコンクリートで守られ、ついその厳かさに圧倒される。一階部分に併設されているバーでビールを買い、パフォーマンスを待つ間、隣接されている「Stage Null」に目をやる。あと数日後には、ベルリンが誇る巨大音楽フェス「ベルリン・アトナル」が始まり、この会場には、世界中から更なるスリルを求めて聴衆がやってくる。

そう時間も経たないうちに、中は観客で溢れかえってゆく。審美眼のある若者は勿論、私にとっての父母世代や、その上の世代まで。ディープ・ウェブを見にくる人たちは、まるで博物館へ訪れるかのように、幅広い世代に認知されていたことがとても興味深かった。

二階へ繋がる階段を上がれば、だだっ広い空間が広がった特大のスペースに吸い込まれそうな感覚に触れ、少し怖かったのを覚えている。会場全体の雰囲気は、今回のイベントには恰好の的だった。数ある施設の中でも、彼らがここを選んだことには理由があるに違いない。そう感じ、ぜひ核心を聞きたいと思った。


Photo: Ralph Larmann

ライブパフォーマンスは、コンクリートの床に座ったり、寝転がったりして鑑賞することができ、リラックスと緊迫感を同時に感じる異様な空気感の中、会場は暗転した。

約60分に集約されたライブパフォーマンスは、通常解放されているインスタレーションとはプログラミングが全く異なり、何百と連なる発光体と、巨大で無定形の彫刻と化した音が、観客の頭上を大きく飛行する。

肌に触れる冷たい外気とスモークを感じながら、多くの観客と関係者が天井を見上げる姿は、なんとも不思議な光景だった。

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