パフォーミング・アーツ・フェスティバル・ベルリン 2019

HAPPENINGText: Ari Matsuoka

ベルリンに住むアーティストのための祭典「パフォーミング・アーツ・フェスティバル・ベルリン 2019」が5月28日から6月2日まで開催されるということで、今回はオープニングパーティーと最終日にあったコンテンポラリーダンスの公演へと潜入してみた。

「パフォーミング・アーツ・フェスティバル」(通称・以下PAFと呼ぶ)は、ベルリン州インディペンデント・パフォーミング・アーツ協会(LAFT)が主催する2016年より始動した比較的新しいイベント。市内各地にある数多くの劇場や公演会場で6日間に渡って行われるだけあって、街には至る所にオリジナルのポスターが貼られている。個人的にベルリンの広告について感じた事は、日本とは違って公的な宣伝が多いということ。有料広告で利益を得るというよりは、地域活性のために広告場所を提供していることが多く、PAFのフライヤーは特にベルリンのどこを歩いてもよく見かけた。


© LAFT Berlin

開催初日、まだ外がほんのり明るい20時過ぎ、私は期待を膨らませてアレクサンダー広場近くの「ハウス・オブ・ウィークエンド・クラブ」へ向かった。

いかにも“日本の住宅団地”かのような見た目のビルの15階。エレベーターを上った先に、確かにクラブハウスがあった。当日の参加費用は無料だったが、事前予約が必要で、来ている人たちを見るとダンサーやアーティスト、広報関係者のほか、開催施設の関係者や美術学校の先生・生徒、また一部で一般の来場者も見えた。

バーカウンターには既に多くの来場者でいっぱいで、ドイツ語や英語が飛び交う。私はちょっと怖気付いて注文しやすいハイネケンを購入し、早速階段を上って17階に屋上テラスがあるということで向かう。

今年は冷夏と言われる5月のベルリン、早速目の前にどどんと現れたベルリンテレビ塔に思わず声をあげた。その“住宅団地”の外観からは全く想像もできなかった絶景に、どういうわけか快感さえ覚えた。21時、パーティーはまだまだこれからだ。

屋上にもバーカウンターとDJブースがあり、ベルリンらしいミニマルテクノが流れる。さらに屋上では無料でフィンガーフードが振舞われており、ピザやピンチョス、スイーツまで、至れり尽くせりだった。

再び屋内へ戻るとさらに来場者は増えていた。22時から始まったライブパフォーマンスは、ベルリン出身のディジャイジル。総勢9名で構成される彼らはオリジナルに着飾った派手な衣装で、まるで生きたジュークボックスかのようにレイ・チャールズ、ナンシー・シナトラ、クイーンやAC/DCなどを曲間無しに披露する。

観客は一切の恥じらいもなく、大声で歌い、叫び、飛び跳ねたり身体を最大限に使って音の波に乗っている。このパーティーには一切の遠慮は必要なく、まさにアートの街ベルリンの真髄を見せられた気がした。

ディジャイジルというバンドについて、ふざけた格好で最初はどんなバンドなのかと思ったが、選曲は同性愛者からストレートまで、皆が愛するピースフルなものばかりで、彼らの存在自体が現在のヨーロッパに対する政治的声明なのではないかと、大げさではなく、心からそう思った。
途中見知らぬ中年男性に肩を掴まれ、『このバンドいいんだよ〜、マジで!』と、とても愉しそうな表情で話しかけてきた。少年少女の心を持った、私の両親くらいの紳士淑女たち、フカーフを外し天井に拳を突き上げ合唱している姿を目に、自然とこちらも身体が動き出す。
リズムなんて関係ない。歌詞が間違えていようが、そんな恥じらいは捨てるべきだ。そう言われたように感じた。

アート・フェスティバルというとなんだか敷居が高く感じることが多かったのだが、このフェスティバルはとてもパーソナルで、ベルリンを愛し遠くから夢を目指してやってきたアーティストや芸術家を我が家のホームパーティーへ招き入れるように歓迎してくれる。そんな街ベルリンだからこそ毎年開催する事ができるヨーロッパの中でも稀有なアートの祭典の幕開けは次の日の朝まで続いた。

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