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ミュンスター彫刻プロジェクト 2017

HAPPENINGText: Ray Washio

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Andreas Bunte “Laboratory Life”

バーソルに限らず、スマートフォンを使用して楽しむ作品は他にもある。アンドレアス・ブンテの「Laboratory Life」は壁に貼られたポスターに印刷されたQRコードを専用アプリで読み込むことで、スマートフォン上で動画が再生されるという作品だ。付近のエリアではWiFiが使えるようになっており、通信のコネクションがない旅行者でも楽しめるようになっている。実際に足を運んだその場所でヴァーチャルな体験ができるという構造は2017年らしいと言える。

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Pierre Huyghe “After ALife Ahead”

ブンテの作品のようにアプリを含めて鑑賞しないと成立が難しいのに対し、ピエール・ユイグの「After ALife Ahead」はあくまで付属的にという位置付けだったと考えることもできる。かつてアイススケート場だったこの作品は、大規模に手が加えられることで見事なSF的世界観を作り出していた今回の目玉の一つである。

作品の性質上、入場数は制限され、鑑賞するために2時間近く待つこともあったというのだ。アプリでは、簡易的なAR体験をすることができたのだが、生の作品の持つスケールにただただ圧倒されるため、アプリに関してはちっぽけに思えてしまうのが正直なところであった。実際、鑑賞者の半数近くがアプリの使用を諦めていて、こうした態度の違いはおもしろかった。作家にとって新しいテクノロジーをどう作品に活かしていくのかは常につきまとう問題である。そういった思考の違いを一つ一つ感じて行けるのもミュンスターの楽しみの一つだろう。

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Gregor Schneider “N. Schmidt Pferdegasse 19 48143 Münster Deutschland”

ユイグと同じく、グレゴール・シュナイダーの「N. Schmidt Pferdegasse 19 48143 Münster Deutschland」は常に長い列ができていた作品だ。グレゴール・シュナイダーは、80年代から活動するドイツ出身のアーティストである。実際に壁を作り、精巧に部屋を複製することで、鑑賞者の認識を揺さぶるような作品を作ってきた。今回のミュンスターではその代表作を観ることができる。

部屋を進んでいくごとに生まれる不気味さ。実際に階段を上がって、自分の手でドアを開ける。そのような鑑賞者の経験によるところを作品の構成要素にしているため、文献や資料などでは伝わらない湿度がある。こちらも性質上、入場者数が制限されており、列ができるのだが、鑑賞し終わった後はそんな疲れも吹っ飛ぶほど感動しきってしまった。新作が多いなか、どうやら、このようにずっと知っていた念願の作品に出会うことのできる場としてのミュンスターもあるようなのだ。

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