川上りえ「トレース」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

北海道発の新しいクリエイティブ・カルチャー(現代アート、デザイン、音楽、文学など)を発信する目的で、本誌が監修している札幌の文化複合施設「ミュージアム」1階にて、店舗内で現代アートの空間展示を行う新企画「ストア・インスタレーション」が5月から始まった。記念すべき第一弾の作品には、国内外で活動する北海道の彫刻家、川上りえによる「トレース」が選ばれた。

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「自我像」宮川“CHAPA”未都子, 2000年 / 「Trace」川上りえ, 2014年, 鉄

川上りえは、1989年に東京藝術大学大学院を修了し、現在は札幌近郊の石狩市を制作拠点として、情景や現象の中に感じ取ることのできる『生命観』を素材の表情に置換し、表現することを試みている。近年は、空間に鉄の線を行き交わせ、残像イメージを構築していくプロジェクトを国内外で多数展開している。

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「エゾバッグ」24K / 「Trace」川上りえ, 2014年, 鉄

「トレース」は、鉄のワイヤーという重厚な素材を用いながら、フリーハンドで宙に描いたような軽やかで動きのある線が印象的な立体作品で、川上が2014年にルーマニアにて滞在制作を行っていた時、シビウの街中で多く目にした野犬たちがモチーフになっている。飼い犬のように人の愛情を受ける事なく、現地の社会問題から影響を受け、人間社会の隙間にこっそりと生きている彼らは、人と最も近いところで世界をオブザーブ(観察)する役割を担っているのかも知れない。

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「ストレッチ・デニム・ワンピース」アユミミツカネ, 2017年 / 「Trace」川上りえ, 2014年, 鉄

ルーマニアで着想を得た本作は、2014年に札幌芸術の森美術館にて開催された企画展「スプラウティング・ガーデン ー萌ゆる森ー」において、野外美術館の広大な緑の丘陵に群れをなした。2015年の冬になると、雪が降り積もるクロスホテル札幌のエントランスに姿を現し、イルミネーションの白い光によって新たな命を宿した。

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「Lucky」川上りえ, 2014年, 鉄(「Trace」のミニ・オブジェ)

本展を企画した「ミュージアム」の施設名は、アンディ・ウォーホルが残した『すべてのデパートはミュージアムになり、すべてのミュージアムはデパートになる』という予言に由来している。1階のミュージアム・ストアでは、札幌出身で東京在住の女性デザイナーが手がけるファッションブランド「アユミ ミツカネ」や「タイニーダイナソー」のコレクション、高臣大介が洞爺湖月浦の「グラグラ」で制作したガラス製品、小樽出身の澁木智宏がウールで制作した石の作品などに加え、ギフトセレクション「スーベニア北海道」では、北海道のアーティストグッズやCD・書籍などを展示販売。この度のストア・インスタレーションにより、更に商業デザインと現代アートが深く交じり合う空間となった。

築100年程の倉庫をセルフ・リノベーションした館内には、他にも、現代アートのコマーシャル・ギャラリーである「クラークギャラリー+SHIFT」、国際的に評価の高い北海道を代表する建築家、五十嵐淳の建築設計事務所、エゾシカ革を有効利用したプロダクトで注目されている「24K」のショールーム、地元アーティストが新作を生み出すアトリエ、そしてSHIFTの編集オフィスを有している。これからも様々な目的でミュージアムを訪れる人々の目に、ストア・インスタレーションで生まれ変わったこの空間はどう映るだろう。

ストア・インスタレーション:川上りえ「Trace」
会期:2017年5月4日〜7月30日(予定)
営業時間:11:00~19:00(月・火曜日定休)
会場:MUSEUM(ミュージアム)
住所:札幌市中央区南3条東2丁目6番地
TEL:011-596-7752
http://www.museum-store.jp

Text: Ayumi Yakura

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