「カモフラージュはしない」展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

かつて倉庫街だったドッグパッチと呼ばれるエリアには、ここ数年、家具やクラフトのデザインファクトリーやこだわりのカフェ、ベーカリー、レストラン、雑貨店などが増えている。ミュージアム・オブ・クラフト&デザインはサンフランシスコのダウンタウンにあったが、数年前からこのエリアに移転した。クラフト、デザインという観点でキュレーションする美術館としてこのエリアで存在感を増している。

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“Without Camouflage. Dafna Kaffeman. Sivlia Leveson”, The Museum of Craft and Design, 2015, Photo: Kurt Lundquist

9月下旬から始まった企画展は「Without Camouflage.」(カモフラージュはしない)と題して、ダフナ・カフェマンシルヴィア・レヴェンソンという二人の女性アーティストが、ガラスと繊維などの異素材を組み合わせて作るアート作品を展示している。作品からは、アーティストが育った環境やパーソナルな経験から導き出された社会的、政治的なメッセージを窺い知ることができる。

作品に登場するアイコン:オオカミや子羊はメタファーであり、真実のカモフラージュである一方で、素材として用いられているガラスが、その透明な性格(性質)により社会をありのままに映し出しているようにも思える。アートとして姿を変えながらも、彼女らのメッセージはカモフラージュされることなく私たちを突き刺してくる。

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“Defeated (Wolf #1)”, Dafna Kaffeman, 2014, Photo: Shai Halevi

展示スペースには、白壁に浮かぶ2匹の黒いオオカミの姿がある。カフェマンによる作品「Defeated」(制圧)のシリーズで、高温度の小さな炎で熔かしながら製造されたガラスと、アルミニウム、シリコンを組み合わせてオオカミの毛皮の質感を演出している。逆立った毛皮は、カフェマンの故郷イスラエルの戦争による暴力や紛争に巻き込まれる人々の恐怖心を表すメタファーともなっている。

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“Tactual Stimulation”, Dafna Kaffeman, 2014

オオカミのシリーズと共に、カフェマンの初期シリーズ「Tactual Stimulation」(触覚の刺激)も展示されている。人間の行動をテーマにしているというその作品は、細くカラフルなガラス素材がサボテンやウニのように中心に向かって丸みを帯びるフォームが特徴的だ。1本1本のガラスの先が丸くなっているのも何か植物や生物を思わせる。棘のある厚い皮と柔らかな中身を持つイスラエルの西洋梨にも見えるその作品は、サボテンやウニと同様、イスラエル生まれのユダヤ人の、外見はタフだが人格は温かく人々を迎え入れる性質の表現でもあるのかもしれない。

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“Invasive Plant”, Dafna Kaffeman, 2014

オオカミの横には、フェルト生地にアラビックやヘブライ文字が刺繍されたカフェマンの最新作がある。「Invasive Plants」(侵略する植物)のシリーズだ。イェルサレムで論争を引き起こした人口統計問題が基になっているという。四角いフェルトの上にライスペーパーが重ねられ、テキストが刺繍されている。イスラエルの福祉制度に裏切られ、公民権を奪われたとするイスラエル人が自殺前に残したメモから引用されたものだ。文字の周りにはガラス細工の植物が配され、自殺者の墓石を美しく装飾している。イスラエルの近代における人口とアイデンティティの潮流を表現するメタファーだ。

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