ノルベリ・フェスティバル 2015

HAPPENINGText: Victor Moreno

1999年に始まった「ノルベリ・フェスティバル」。2015年となる今年もより多くの海外ゲストらを迎え、新鮮さとハングリーさは健在だ。それも、このイベントが音楽に対しユニークなアプローチで、多くのアーティストたちに実験的な機会を与えているからだろう。観客を惹きつけ煽るための有名アーティストを高額で招致するまでもなく、ノルベリ・フェスティバルは体験的な音楽、DIY音楽、電子音楽のプロとミュージシャンたちが集結する毎年恒例のイベントとなった。

スウェーデン南部のダーラナ地方という田舎にある古い炭鉱で行われ、その会場や環境とアーティストたちのコンビネーションが他との違いを作り出している。歴史的に、スウェーデンは常にトップの鉄鉱石輸出国で、前世紀の半ばからこの渓谷はその主な生産地だったが、生産は80年代後半にスウェーデンの最北に移動し、その後この鉱山の坑口は閉鎖された。こうしてこのコンクリートでできた廃墟を会場とした実験音楽のイベント、ノルベリ・フェスティバルが毎年行われるに至ったのだ。実際、これらの建物はスウェーデンの産業遺産の一つである。

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the defunct mine site Mimerlaven, 2015

数多く集まったノルベリ・フェスティバルのパートナーには、ドイツ文化センター、スペイン大使館、ベルリン音楽会EMSエレクトロ・ミュージック・スタジオアンスティチュ・フランセなどのよく知られた文化施設が名を連ねる。サウンドの合成、コンクリート環境でのサウンドテクスチャの広がり、そして真夜中を過ぎたあとの露の香りがこのイベントの特徴として際立つ。今回私は、鉱山の周りを散歩しながらライブを楽しみ、さらに今年出演したアーティストたちに話を聞くことができた。

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Mats Lindström (EMS/Fylkingen), Norberg Festival, 2015

プログラムは地元のアーティストと海外アーティストが組み合わされており、メイン会場の「マイマー」では、マッツ・リンドストロームのパフォーマンスが行われた。リンドストロームは、電子音楽、サウンドアートのため、またサウンドの研究と実験、合成を目的とした音楽制作のためのプロ向けのスタジオとして利用できるスウェーデンの施設EMSのヘッドディレクターだ。彼が作曲家として演奏するのはノルベリ・フェスティバルが初めてではなく、これまでヴェネツィア、ニューヨーク、モスクワ、ストックホルム、ワルシャワなど多くの国際的な芸術イベントでパフォーマンスやサウンドインスタレーションを行ってきた。今年用意したのは、アメリカ人の実験音楽作曲家デビッド・チューダーのオマージュとして制作された「ワン」というショー。パフォーマンスの少し後に、このイベントでの体験を語ってくれた。

『このショーは20ヶ国で行ってきたけど、今夜の反応が最も感動的だった。パフォーマンス中、周りの全ての人がここにいるという実感ができたことに本当に感謝しているよ。建物の構造上長いケーブルを使用しなくてはいけなかったので、パフォーマンスも多少違ってきた。どの機材を使用するかによって常に違うバリエーションがあるんだ。同じ方法での接続や、全く同じギアを使用することは決してないので、サウンドは常に別モノで、演奏の度にちょっとした驚きがあるよ。機材構成も自分で行っているけれど、コンクリート造りのこの建物は大きな残響があり、教会のように音響環境としてはとても難しい場所なので、聴く側の観客も大変だと思うよ。音響的に「最悪」なこんな場所でもパフォーマンス経験があるから、今回はとてもユニークなものに仕上がったね』。

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