安田侃
PEOPLEText: Mike Sullivan
北海道美唄出身の安田侃は、東京芸術大学大学院、ローマ・アカデミア美術学校で学んだ。大理石の産地として知られる北イタリアのピエトラサンタと、日本にアトリエを構え、40年の間世界中で展覧会を行ってきた。また、多くの賞も受賞しており、主なものにイタリア連帯の星勲章や、近年では北海道文化賞などがある。多くの彼の作品を配置した彫刻公園・アルテピアッツァ美唄がある他、イタリアの有名な歴史的スポットにも作品が展示されている。彼自身が彫る全ての作品は、近づき、触れる直接的な関わりへと見る人を誘う作品としても知られている。とても静かな落ち着いた雰囲気の中で制作される作品は彼の手で命を与えられるかのよう。安田侃の初めてのアメリカでの個展が、アイキン・マクレーン・ニューヨークで、5月6日から行われる。この素晴らしいアーティストから生み出される26作品が展示される。
Kan Yasuda, in Rome © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
アーティストになったきっかけを教えて下さい。
子供のときから手で何かに触れることが好きで、何故か心が落ち着きました。
Kan Yasuda, Chijin, 2011, Photo Nicola Gnesi © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
アーティストとしてのの一日のスケジュールについて教えて下さい。
午前、アトリエに行き、石を彫る。
午後、アトリエで石を磨く。
時々雨が上がった日に原石を探し求め大理石の山に登る。
Kan Yasuda, Kaisei, 2000, Photo Nicola Gnesi, © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
5月からアメリカで展覧会を開かれるそうですが、展示される新しい彫刻について教えて下さい。
石を透かす光と影が、人の心と共感、共振されるかへの挑戦です。
Kan Yasuda, Sokyo, 2011, Photo Nicola Gnesi, © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
あなたの創造力はどんなものがヒントとなっていることが多いですか?作品にはどのようなメッセージがこめられていますか。
気とか精神、あるいは魂という目に見えないものを石の中に内含することができれば、人は己自身と彫刻との間に共鳴するものがある。それがメッセージです。
Kan Yasuda, Tenpi, 2013, Photo Nicola Gnesi, © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
見る人が作品へ触れたり、登ることもできるようですが、作品へ触れてもらうことはなぜ大切だと考えていますか。
手や身体全体で彫刻に触れることは、目で形を追うよりも直接人の心に通じ合う感覚が強く、また、言葉や知識よりも一人一人の感性に直接触れられ、彫刻と一対一で同一化しやすいからです。
Kan Yasuda, Tenpi, 2014, Photo Nicola Gnesi, © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
日本とイタリアで学んでいると思いますが、そのことがあなたのユニークな創作活動や彫刻の作品へ何か影響している思われますか。
イタリアでの生活は創作活動にとても力を与えてくれていると思います。一人の東洋人の地中海文化の、特にルネサンル発生の地トスカーナでの日々が、芸術が日常生活の中で如何に普通に息をし、支えになっているかを教えてくれました。ましてやミケランジェロが仕事をしたのは大理石の山のふもとで四十数年間です。
Kan Yasuda, Tensen, 2014 Photo Nicola Gnesi, © Kan Yasuda, Courtesy Eykyn Maclean
どのように作品を作り上げますか。創作の過程について簡単にプロセスを教えていただけますか。
イメージを、無から少しずつデッサンし、粘土や石膏で三次元化に挑戦します。その石膏がイメージの原型となります。そのイメージを石に彫り込んで行きます。
創作の過程について、もし特に力を入れているプロセスがあれば教えて下さい。
細部に真理が宿るをモットーにして一振り一振り念(思い)を込めて彫ることです。
銅や大理石をなど様々な種類の素材を用いて彫刻を制作されていると思いますが、素材はいつもどの様に選定しているのですか。
素材は石もブロンズも自然の一部です。特に石は地球を生成している物質です。(人間と同じ素粒子で作られています)カッラーラやピエトラサンタの山の石切り場に登り、大きな石の壁から彫刻になる壁を切り取ってもらいます。
日本と日本以外の国にて、作品を見た方々のリアクションの違いがあれば教えて下さい。
日本人はその作品と一体化しようとし、他の国の人はその作品と己を対峙させようとします。
この先、作品作りに関してどのような取り組みを行っていきたいと考えていますか。
人生で哀しいとき、楽しいとき、ふっと思い出してもらえる彫刻に取り組みたいと思います。
安田侃展
会期:2014年5月6日~6月27日
時間:10:00~17:00(※5月は日曜・月曜休廊、6月は土曜・日曜休廊)
会場:Eykyn Maclean, New York
住所:23 East 67th Street, New York, NY 10065
TEL:+1 212 772 9425
http://www.eykynmaclean.com
Text: Mike Sullivan