マッシミリアーノ・ジオーニ
PEOPLEText: Roberto Bagatti
イタリアの若手アーティスト達が今、ミラノの中心部から郊外へ、何千というポスターをまき散らしている。この活動は、展覧会というより、私達を取り巻いている広告の嵐とは異なる手法の、「ポスターの侵略」と呼んだ方が適切かもしれない。それらのポスターは、何かを宣伝するのではなく、都会の喧噪の中で、ある静寂のひとときを与えてくれる。
‘I Nuovi Mostri’ Milan, 2004 © Fondazione Nicola Trussardi
道ばたや、店と店の間、郊外の高速道路やビルの隙間など、街自体が展示スペースで、街は今、至る所にポスターを広げる巨大野外スペースなのだ。このプロジェクト「I Nuovi Mstri [Life Is Beautiful]」(新怪物たち[人生は美しい])のキュレーターであるマッシミリアーノ・ジオーニに、いくつか質問をぶつけてみた。
‘I Nuovi Mostri’ Milan, 2004 © Fondazione Nicola Trussardi
郊外で起こっている現実は、現代アートの核とつながっており、様々なメディアに影響を与えてきています。都心という場所で、このイベントを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょう?
コンテンポラリーカルチャーは、都心に根ざしているものだと思います。アーティストは大抵、大きな街で日々忙しく動き回り、ポスターやコマーシャルに囲まれて暮らす。都市や公共のスペースは、これまでも沢山のアーティストやクリエーターに、表現の場として使われ、その点では特に目新しいものはありません。ただ、私達が今やろうとしていることは、アートと遊び、コミュニケーションをすることです。そこで、今回は、広告キャンペーンではありながら、そこから商品を取り除いたわけです。言い換えれば、このアート作品自体が商品ということです。
‘I Nuovi Mostri’ Milan, 2004 © Fondazione Nicola Trussardi
「新怪物たち」は、イタリアに昔からあるコメディのタイトルで、「ライフ・イズ・ビューティフル」(人生は美しい)は中でも、最近最も有名なコメディです。この2つは、まったく別の映画で、一方はとても皮肉めいていますが、一方はもっと柔らかいアプローチですよね。若手達の現代アートにも、これと似たような動きがあると思いますか?
現代アートが、どの方向へ向かっているかは私には分かりませんが、アートの面白いところであり、魅力的なところは、まったく先が読めないところです。例えて言うなら、多重人格でしょうか。皮肉的でもあり、優しくもある。喜劇的でありながら、悲劇的でもある。私達が、このプロジェクトに招いたアーティストは、偶然にもこのイタリアという国を、ステレオタイプに苛立ちを感じながらもそれを認識しつつ、表現していたと思います。おそらく、彼らは自分達がイタリア人であるということをそれほどに意識していた訳ではなかったと思うのですが、できあがった彼らの作品をよく見てみると、やはり何らかの形で、自らを取り巻く環境を表現しているのが分かります。
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