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五木田智央展

HAPPENINGText: Taro Masushio

ニューヨーク、1月から2月にかけての寒空の中で五木田智央の最新の作品にしてメリー・ブーンギャラリーにおいて初の個展が行われた。観覧者が徐々に作品との距離感を調整する事により最初の沈黙を経て、五木田の絵はグロテスクに近くもシュールに美しいトーンで展開を繰り広げる。

ニューヨークのチェルシー地区ウエスト24ストリートでの展示は五木田の鋭いセンスと技術力で遂行され文化的レファランスで肥沃に満たされている。まばらに配置された高度に微妙な無色の絵画は初見ではほとんど寡黙に見て捉われる、だがここで重要なのが初見ということだ。

この手法、スタイルで絵を描いてきた五木田は大衆文化、広告、フィルムノワールの言語を駆使しながらポストシュールレアリズム的美学を開拓し続けている。全15の作品はキャンバスにグワッシュ、チャーコルとジェッソによる絵画で全て2013年に作られたものだ。

五木田智央
Photo: Courtesy of Mary Boone Gallery, New York

五木田は鮮明で濃淡が強いラインを使い図画の広範囲をフラットにすると同時に、ほぼ完全に装飾されていない背景、まるでありふれている現代的肖像システムを模倣するかのように学校の肖像画に類似する背景から、肖像自体をシャープに区分する。対照的にふくよかなサブジェクトの連なりはそれぞれ的確な服を纏い、平面の世界へと凍結され絵画的な粛正の的となる。その粛正とは、五木田の作品は間近で観ることにより新たな動態を見せるということだ。

五木田智央
Strict Madam © Tomoo Gokita

近よる事により、他に見られる鋭利に製造されたラインとは対照的に顔の部分は無限諧調の灰色で描出され、テクスチャーに溢れ、塗料が混じり、爛れ、飛沫をあげている事に気づく。ブラシの動きが明瞭に提示されレイヤーが見て取られ、チャーコルで描かれたであろう下書きのようなラインも露になる。ウェイトレスやマリリンモンローといった馴染み深い文化的原型はキャンバスの上で変態をとげ、画家の手により征服されたイメージはアイコンと不分明な物との間で振動を繰り返す、それはまるで表現と抽象の狭間に捕われたかのようだ。

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