アートフェア札幌 2013

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

札幌のギャラリーから参加したのは5軒だ。一般の来場者からは「北海道にもこんなにアーティストがいるんですね」との率直な感想を聞いたが、実際にはこの何倍ものギャラリーとアーティストが存在していて、その活動は道内に留まらない。

1311号室 北海道画廊(札幌) 写真:小牧寿里
1311号室 北海道画廊(札幌)

北海道画廊(札幌)では、安田侃の版画や、岡部昌生のフロッタージュ作品、花田和治の抽象画など、現在活躍する北海道出身アーティストによる作品が多数出展されていた。創業40年という北海道で老舗の画廊ということもあり、北海道の芸術史と、それにまつわる物語を紐解きたくなる興味をかき立てられた。

1308号室 ギャラリー門馬(札幌) 写真:小牧寿里
1308号室 ギャラリー門馬(札幌)

ギャラリー門馬(札幌)の、藤沢レオの作品は、金属の棒を加工した作品を中心に出展され、種子のようなフォルムは優しさを内包していた。久野志乃が描く幻想的な世界と色使いには、何気なくでも一度見れば忘れられない深さがある。

1312号室 ハナアグラ(札幌) 写真:小牧寿里
1312号室 ハナアグラ(札幌)

ハナアグラ(札幌)では、若手の作家の作品を中心に展示。佐藤菜摘の「ゆめのなか」を描いた作品がまさしくベッドに飾られていた。不思議な生き物の目に惹かれるが、キャンバス全体の構成も見所だ。篠木正幸の新たな表現技法を模索したテキスタイルは、壁の中央でその在り方を柔らかく主張。経塚真代の少し間が抜けたようでいて胸の奥を揺さぶる人形造形は、数種類が遊ぶように並べられていた。

1310号室 スペース シンビオーシス(札幌) 写真:小牧寿里
1310号室 スペース シンビオーシス(札幌)

スペース シンビオーシス(札幌)では、蒲原みどりによる金箔を使用した絵画と、小森愛による繊細な金彫が、どちらも自然を感じさせながら、客室の為に設えたかのように完璧に調和し、シックでしっとりとした雰囲気を醸し出していた。

1309号室 クラークギャラリー+SHIFT(札幌) 写真:小牧寿里
1309号室 クラークギャラリー+SHIFT(札幌)

クラークギャラリー+SHIFT(札幌・上海)は、アートフェア札幌の企画・運営ギャラリーでもある。札幌を拠点としながら東野圭吾や林真理子など数々の装丁画を手がける民野宏之の作品は、原画のタッチに静けさと安らぎを感じた。窓から差す光によって、白い自然素材に染み入るように映る色彩が変化を見せた澁谷俊彦のインスタレーションは、見る者を癒した。若くしてユニークな視点により様々な作風を展開する米澤卓也の絵画には、制作年が異なる作品を見比べる楽しみがあった。

沢山のアートを堪能したが、まだ足りない。もっと「アートを読み解く力」を手に入れたい。なぜなら、今回のように好きなアーティスト作品と多く出会うほど、その先には再会の喜びが待っているからだ。また同じ作品を見たいと思うほどの感動、アーティストの成長や発想への共感、次はどんな作品だろうという期待。それらに触れることは他の何ものにも代え難く、まず出会わない限りは感じ得ない喜びだ。札幌市民はもちろん、道外や海外の人々も、札幌の街を訪れてアートや人と出会い、そして来年、再び会いに来てほしい。

アートフェア札幌 2013
会期:2013年11月23日(土)11:00〜20:00、24日(日)11:00〜19:00
オープニングレセプション&プレビュー:22日(金)19:00〜21:00(招待客のみ)
会場:クロスホテル札幌(ホテル型アートフェア)
住所:札幌市中央区北2条西2丁目23
出展者:20軒 [客室2フロアー/各ギャラリー各1部屋を使用]
来場者数:約2,000人
フェアディレクター:大口岳人(クラークギャラリー+SHIFT)
アドバイザー:戸塚憲太郎(NEW CITY ART FAIR ディレクター)
主催:アートフェア札幌2013 実行委員会
共催:クロスホテル札幌
連携:札幌国際芸術祭2014、LOVE & GIFT、アート札幌2013
特別協賛:フォルクスワーゲン札幌東
https://www.artsapporo.jp/fair/

Text: Ayumi Yakura
Photos: Yoshisato Komaki

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