ジェームズ・タレル回顧展

HAPPENINGText: Victor Moreno

jamesturrell知覚の窓 

一人で部屋に入ると、誰もがまず部屋を明るくして、その空間の広さを見るために明かりを灯すだろう。ジェームズ・タレルにとっては、その光は一つの「物」。「もし明かりが物を認識するための手段ではなく、むしろ人々が認識する物自体だとしたらどうだろう?」全ては光をどう捉えて、認識するかなのである。彼の作品のが目指すのは、形や色を操って、私たちの目がそれを違った風に認識するようにするところにある。ロサンゼルス・カウンティ美術館(通称LACMA)ではここ30年近くの間で初めて、ジェームズ・タレルの大規模な回顧展を開催している。この展示会では、50点ほどの作品を通して彼の約50年間の活動を見ることができる。彼はあなたの認識力に働きかけて、展示会を見終わった後に恍惚として会場を後にすることになるかもしれない。それはドラッグの作用に近いものがある。

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James Turrell, Twilight Epiphany, 2012, A James Turrell Skyspace, The Suzanne Deal Booth Centennial Pavilion, Rice University, Houston, TX, © Florian Holzherr

ロサンゼルス出身のジェームズ・タレルはサンタ・モニカ地区ーここはロサンゼルス国際空港のすぐ上に位置するビーチであるーで光を使った創作活動を行い始めた。そこにあったメンドータホテルで、彼は全ての窓を閉め切って、壁に小さな穴を開けてそこから光が入るようにした。一日のうちの別々の時間帯で様々な光が入るのを確認しながら。これが1966年の話である。ジェームズ・タレルは認識の専門家である。初期の光を投影させる作品やホログラムに加え、今回の展示会では引き込まれるような光を使ったインスタレーションで私たちの認識や捉え方に訴えかけている。だいたいが一人かもしくは限られた人数で、5分から20分位の時間で各作品を鑑賞しているが、彼の作品中での革新的な光の使い方は、身体的かつ視覚的な体験を鑑賞者に向けて作り出している。一部の人々は違う意見を抱くかもしれないが、しかし確実に物事への感じ方に変化を感じるはずだ。

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James Turrell, Afrum (White), 1966, Cross Corner Projection, Los Angeles County Museum of Art, partial gift of Marc and Andrea Glimcher in honor of the appointment of Michael Govan as Chief Executive Officer and Wallis Annenberg Director and purchased with funds provided by David Bohnett and Tom Gregory through the 2008 Collectors Committee, M. 2008. 60 © Florian Holzherr

展示中の作品についてはすでに述べたが、60年代後期に作られた作品の多くが経験豊かな21世紀の観客たちに向けられたかのごとく近未来的で非常に魅力あふれるものばかりである。この展示会はまず数点の絵画から始まり、そこでは各空間をどのようにして彼が計画していったかが表現されている。最初に待っているのは、「クロス・コーナー・プロジェクション」と呼ばれるもので、これはあたかも「キューブ」のような形になっている。実は、部屋の角に光が投影されて目の錯覚を起こさせており、量的にも重さ的にも三つの面を持つキューブが映し出されている。そして、このキューブはあなたの動きを追いかけてくるようになっている。

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James Turrell, Raemar Pink White, 1969, Shallow Space, Collection of Art & Research, Las Vegas, © James Turrell, Photo © Florian Holzherr

「ガンツフェルト」は500平方メートルのインスタレーションで、見る者の奥行き知覚を完全に消し去ってくれる。「リーマー・ピンク・ホワイト」では、巨大な部屋に淡く柔らかな紫の光の枠が映し出され、次第にその色合いが全くの白に見えてしまうという作りになっている。その後、一つの単純な疑問が頭から離れず、思わず通りすがりの美術館職員に尋ねてしまった。「あの光は何かしらの内部の働きでピンクから白に変化したのですか?」「いいえ、変化したのはあなたの方であり、あなたがどう光を認識するかなのです。」

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James Turrell, Key Lime, 1994, Wedgework: fluorescent and LED light into space with fiber-optic light, Dimensions variable, Los Angeles County Museum of Art, gift of Renvy Graves Pittman, M. 2013.3, © James Turrell, Photo © Florian Holzherr

「キー・ライム」は光と構造を工夫して作りだされた壁の幻覚である。目の前にあるベンチに座り、柔らかな色合いが、いくつかの面が合わさって長方形になった中に溶け込んでいくのを眺めるのもよいだろう。この作品を見つめていると、私たちの普段の認識作用がついかすんでしまうのがわかるはずだ。

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James Turrell, Breathing Light, 2013, LED light into space, Dimensions variable, Los Angeles County Museum of Art, purchased with funds provided by Kayne Griffin Corcoran and the Kayne Foundation, M. 2013. 1 Pthoto © Florian Holzherr

「セントエルモの吐息」は空間が分割された作りになっており、一見すると壁が平面になっているように見えるが、実はよく見てみると壁に空いた底なしのようなくぼみから光が放たれているのだということが分かる。この作品は、2011年にLEDを使って制作された最新作「ユカルー」に似ている。再度、壁に出来た「窓」によって異次元が作り出され、無限、美しい虚空、そして夜明けから日没のような青から深紅色の神秘的な空白感が感じられる。面白いことに、まるで近づくと呑み込まれてしまいそうな恐怖感も同時に沸き起こってくる。

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James Turrell, Twilight Epiphany, 2012, A James Turrell Skyspace, The Suzanne Deal Booth Centennial Pavilion, Rice University, Houston, TX © James Turrell, Photo © Florian Holzherr

その他の作品やインスタレーションの中で最も強烈な印象を与えるのは、タレルがアーティストであるロバート・アーウィンとエド・ウォルツ博士と共同で1969年にLACMAでアート&テクノロジープログラムの一環として仕上げた「知覚の小部屋」、その名も「ライト・レインフォール」だろう。階段を上がり、ブレード・ランナーのように寝台に横になって独居房のような小部屋へ入っていく。この部屋には20分ごとに一人しか入ることができないようになっている(そのために、数週間前に予約しておく必要がある)。この小部屋から寝台に横たわった「侵入者」が出てきたら、柔らかな青い後光が部屋の中から漏れ出るのが分かるだろう。それはあたかも雲の上で幸せな気分に浸っているようであり、まるで天国にいるような気持ちにさせられる。

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James Turrell, Milarepa’s Helmet, 1989, Cast Hydrocal plaster 53.3 x 88.3 x 88.3 cm), James Corcoran Gallery, Los Angeles, © James Turrell, Photo courtesy Kayne Griffin Corcorn, Los Angels

「ダーク・マターズ」というインスタレーションについては、もしあなたが実際にこの会場に足を運ぶ予定がないなら、この先の文章も是非読み進めて欲しい。停電したかのような真っ暗な空間には微かに穏やかな光の痕跡が確認できるだけ。10分ほどその空間にいると、目がだんだんと暗闇に慣れてくる。すると突然、光の点が目の前に現れてくる。どうやら、この光は隣に居る人とは違うようだ。これこそ、タレルが観客の中に眠る瞑想への適応性を引き出してくれる分かりやすい例だろう。

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James Turrell, Roden Crater Project, view toward northeast, Photo © Florian Holzherr

そして、彼の最も有名な作品である未完のライフラーク「ローデン・クレーター」を特集したコーナーへとやって来た。アリゾナ州のフラッグスタッグにあるクレーターを彼自身が購入し、1979年から作業を開始。天然の火山噴火口を巨大な裸眼天文台に作り変え、宇宙の現象を眺めるためだ。40年にも渡り一つの目標を目指して続いているこのプロジェクトはまさにタレルの達成感を表現している。このプロジェクトは三つの段階に分かれており、第一段階は完成しているが、まだ一般には公開されていない。彼はちょうど70歳になり、全てを図面に書き出して、もし彼に何かあった場合でもこのプロジェクトが完成するようになっている。大型の様々な媒体で描かれた絵と噴火口から採取した灰を用いた模型、さらに他の独立した空間を表した模型も同時に展示されている。

James Turrell: A Retrospective
会期:2013年5月26日〜2014年4月6日
時間:11:00〜17:00(金曜20:00まで、土曜日曜10:00〜19:00、水曜休館)
チケット:一般 $25, シニア&学生 $10、18歳以下無料
会場:Los Angeles County Museum of Art (LACMA)
住所:5905 Wilshire Blvd. Los Angeles
TEL:+1 323 857 6000
http://www.lacma.org

Text: Victor Moreno
Translation: Yuki Mine

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