ジュリー・ヴァーホーヴェン展「セイント・ジェームズ・イン・ブルーム」

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

“フローラル・ワンダーランド” と呼ぶには、ささやか過ぎるんじゃないかしら。というのが最初の印象だったジュリー・ヴァーホーヴェンの「セイント・ジェームズ・イン・ブルーム」は、ロンドンシティワーカーの小脇に抱える必需品、経済誌エコノミストの自社ビル前広場で、本当にひっそりと開催されていた。

ヴァーホーヴェンは、ジョン・ガリアーノのアシスタントを経て、デイズド&コンフューズドのアートワークや、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションバッグ、プライマルスクリームのCDジャケットなどを手掛ける、素顔も、自身のファッションもキュートなデザイナー/イラストレーター。

さて、英国といえば、ガーデニング! 海辺の街で見かけたという、それぞれの家のお庭の素敵さからインスピレーションを得て、『エコノミストプラザを “フラワー・ワンダーランド” に仕立てたかった』と彼女は言う。広場を囲む建物の柱部分を木々に見立てて、そこにイラストや、装飾をちりばめている。物憂げにこちらを見る女の子のイラストレーションは、かわらない彼女のスタイルだけれど、良く見てみると、シェルや、ひとで、陶器の破片や色とりどりのアイシングのようなものが、まるでそれ自体勝手にのびて来たかのような顔をしてそこにある。

マジックハンドをひと振りしたら、キャンディのなる木がでてきた、というような、カラフルでガーリー感いっぱいの夢のツリー。それでも、真っ青にペイントされたひとでや、うらめしげな女の子たちには、どこかグロテスクさを感じずにはいられない。ヴァーホーヴェンの作風には少女性を感じさせながらも、奇妙で毒のあるものが多い。少し前に見たテリー ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」に近いものがある。

9月の11日からはソーホーのライフルメーカーでの展覧会が待っている。プライベートヴューには、グラハム・コクソンも登場するというから、ビックブラザーも終わってしまってお暇を持て余しているロンドナーなら、ぜひ。

Julie Verhoeven – Saint James’s in Bloom
会期:2006年7月19日〜9月15日
会場:The Economist Plaza
住所:25 St James’s St., London SW1
https://www.julieverhoeven.com

Text: Sayaka Hirakawa
Photos: Sayaka Hirakawa

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