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蓮沼執太

PEOPLEText: Yu Miyakoshi

当初は環境音や電子音を素材にアブストラクトな音楽をつくられていましたが、最近はいわゆるメロディアスな音楽もつくられていますね。どんな変化があったのでしょうか?

ファーストアルバムにも一応メロディはあるのですが、たしかに最近はより主旋律がはっきりとした音楽をつくっています。それは多分、自分の中の緊張がほぐれてきたのだと思います。アウトプットすることに寛容になってきたというか。ここはこういう方法を使ってもいいんだとか、ここはこうした方が良いんだとか、経験も方法も少しずつ増えてきたのだと思います。

でも、僕は作曲や演奏よりも、聴くことが一番好きなのです。自分の作った音楽を一番早く聴けるのも僕自身ですしね。僕は音楽を作るよりも聴くことから色々なことを学ぶことが多いです。

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Shuta Hasunuma Philharmonic Orchestra, 2012

蓮沼チーム/フィルを組織したり、演劇作品や映画の音楽を担当したり美術館で展示をしたりと、ジャンルの枠を超えて活動を広げてきましたね。

「ジャンルの枠を超える」という言い方がどうしても馴染めませんが、自分が作曲した音楽が様々な環境でインストールされることのアウトプットの多さは、これからも続けていきたいです。

ジャンルの壁なんて、わざわざ超えなくていい壁だと思っています。「これがアートだ、これが音楽だ」という意識することよりも、「いったい僕が作り上げたものは何なんだろう?」と問い続けることで、僕は制作する活力を得ていると思います。

もちろんそれは、ジャンルにはそれぞれ大切な作法というものがあるからです。たとえば映画音楽の制作も、そういう仕事に取り組むことで映画における音楽とは何だろう、と考える機会が生まれます。そうやって、自分の音楽論みたいのも定まっていくし、経験として蓄積されていくと思います。

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Installation view of “have a go at flying from music part 3”, Museum of Contemporary Art Tokyo, 2011 Photo: Takehiro Goto

2月から始まる展覧会「音的」では、展示のためにリサーチプロジェクト「蓮沼執太のスタディーズ」を行われてきました。フィールド・レコーディングにもリサーチ的なニュアンスを感じるのですが、つくる時には “リサーチ” がベースになるのでしょうか?

リサーチといっても、その実際は自分の体をその場に持って行って、直感的に物事や現象を判断しているにすぎないのですが、それはフィールド・レコーディングでも同じことで、リサーチというより、アンテナを全開で張って現象をキャッチするとか、逆にキャッチせず曖昧にするとか。そういうことの積み重ね、連鎖ですね。

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Studies at Asahi Art Square, 2012

その場でセッションをしているような感覚ですか?

うーん、少し違いますね。セッションという言葉の響きは音楽的ですけど、この行為自体は音楽的ではないですね。観察行為に近いかな。「スタディーズ」は、その時間にそういったことが圧縮されていた感じです。

詩人の山田亮太さんたちをお呼びして舞台作品『タイム』の朗読をシューティングしたり、音楽家の大谷能生さんや木下美紗都さんたちと録音したり、沢山の人たちをお招きして音楽イベントを開催したりなど、色々なことに挑戦しました。

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