伊藤綾香

PEOPLEText: Yuji Shinfuku

『存在意義について問うこと』

色鉛筆のみのハンドメイドでデザインされた色彩豊かななサーモン。プログラマーと共同で制作したというまるでペンで走り書きされた様なポートレイト写真。その多種多様な作品達は様々な表情を持ち、我々の考えるデザインという枠を超え見る者を魅了する。

横浜で生まれ、現在ニューヨークを拠点に活動するデザイナーの伊藤綾香さんの作品は、様々な媒体を通してウェブデザイン、グラフィックデザイン、イラストレーションを使い分けるも、常にカラフルで楽しいイメージにあふれている。アメリカの大学でインタラクティブデザイン、コミュニケーションデザインを学んだという彼女は、ウェブ、紙媒体、立体作品、映像などを用いジャンルを横断した活動をされている。そのスタンスはグラフィックデザイナーというよりかどちらかというとクリエイターというほうが近いのかもしれない。ニューヨークという異国の地で活躍されている彼女のパッションと創作の秘密について伺った。

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Portrait, Scribbed Line People, Ayaka Ito

自己紹介をお願い致します。

伊藤綾香。1988年生まれ、横浜市出身のグラフィックデザイナー、イラストレーターです。現在は、ニューヨークでファッション/アート中心のクライアントを持つグラフィックデザイン会社「Ro&Coスタジオ」に勤めています。

綾香さんの作品はイラスト、デザイン、映像などの要素がミックスされているように感じるのですが、ご自身の中でそれぞれの振り分けの様なものはありますか?

正直振り分けようと思った事はあまり無いですね。常に思いついて作りたいと思ったものは何でも挑戦して作っていくので、そのために必要な技術があれば、トコトン学んで新しい作品に取り込むことを心がけています。ですから、自分の職業はグラフィックデザイナーやイラストレーターより、クリエーターと言った方が正しいかもしれません。

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Scribbed Line People, Ayaka Ito

「Scribbed Line People」という作品や「Paper Letters」という作品では普通のグラフィックデザインには見られない様な技巧が凝らされていると思うのですが、どのような過程でこれらの作品を作る事になりましたか?

「Scribbed Line People」(走り書きされた人々)は、ローチェスター工科大学で知り合った同僚のランダル=チャーチと2008年に始め、2012年の現在まで制作したものです。当時大学では、ニュー・メディア・デザイン科でインタラクティブデザインからプログラミング、写真、3D、などさまざまな物を学んでいました。

パートナーのランダルは、プログラミング(当時はよく使われていたFlashプログラミング)が得意で、私は写真でアートを作るのが好きだったので、共同作品を作る際に二人の情熱と統合するとどんな可能性が生まれるかと自分達に尋ねた結果がこの作品でした。

「Paper Letters」は、大学卒業後インタラクティブデザイン会社に勤めて居た頃、自分のデザインスキルをもっと高めたいと思い、タイポグラフィーの勉強に励んで居た頃に作った作品です。もっと手を細かく使う物を作りたいと思い、家にたまたま色紙が置いてあったので、それを使って文字を作ってみました。それをたまたま雑誌や本に載せて頂けたので、本当にありがたいです。

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Scribbed Line People, Ayaka Ito Collaboration with Randy Church

「Scribbed Line People」についてもう少し詳しく教えてください。今まで見た事の無い非常に独創的な作品だと思うのですが、こちらの作品の手法はプログラマーの方と共同で開発されたと聞きました。

これは、写真に撮影された人々の肖像をシュレッダーで細断された紙のように映す作品です。一つ一つ写真のテーマはさまざまですが、シリーズとしてのテーマは、「そこに存在するのが当たり前のような人の存在が、急に不安定なものになったように感じる、存在意義について問うこと」です。紙切れのようにまるで透けて見える果敢ない人々の姿映すことが出来ればと思い制作しました。

この作品は、プログラマーのランダル・チャーチと共同して作りました。制作する際にもっとも困ったのが、「どうやってリアリティーのある3次元のラインを肖像に統合することができるか」でした。そこで思いついたのが、自由に私が走り書きをしたラインを3次元にさせる自作のFlashソフトウェアを作る事でした。それによって作られた3次元のラインをCinema4Dと言う3Dソフトウェアとフォトショップで組み合わる事で、手で描くにはほぼ不可能な精密な紙のような形状を実現することができました。

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Paper Letters, Ayaka Ito. Photo of magazine provided by Jeff Line

綾香さんの作品には独特のハンドメイド感、クラフト感があるように感じるのですがその部分についてはご自身でどう思われますか? また動物のモチーフも多く使われている様に思うのですがそのアイディアはどこから来ていますか?

そうですね。ハンドメイドの物は、とても身近で特別な価値がある気感じがして好きです。手で物を作るのも好きなので、できるだけ機械に頼らずに物を作ることを心がけています。動物のモチーフは、よく図鑑を眺める事が多いので、そこからアイディアが湧いてくる事が多いです。

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Tuna Magic, Ayaka Ito. A 55″x15″ color pencil drawing for a skateboard deck design. Digitally scanned and printed on a wooden skateboard deck.

多くの作品を作られていて作品ごとの変化を感じますか?ご自身の気に入っている作品はありますか?その理由も教えてください。

今までの作品を振り返ると、本当に自分の趣味がコロコロ変わるなぁっと実感します(笑)一つ一つの作品は、常にその時に興味がある物を作っていたので。

特に自分で気に入っている作品と言えば、「Tuna Magic」のイラストレーションですね。140cm x 40cmの大きめなスケートボードのデザインで、全部色鉛筆で描きました。最近は、イラストとタイポグラフィーを合わせるのが好きで、特にパソコンを使わずに手だけで作品を作っていてすごく充実感があったのを覚えてます。

「Urban Daddy Cycling Classic」も特に気に入っているプロジェクトです。毎年ニューヨークで起こる「E2NY」という音楽とアート中心のフェスティバルのためにRed Paper Heartとコラボレートして作ったインスタレーションです。対戦相手と自転車を漕ぎ、60秒以内に早く進んだ方が勝者になるゲーム。私は一部の絵を担当になって、色々色鉛筆で描かせていただきました。Red Paper Heartのデザイナーさんやプログラマーさん達と共同制作できて、自分だけの力では作れないような物ができ上がるのを見れるのはとても楽しかったです!

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Urban Daddy Cycling Classic, Ayaka Ito Collaboration with Red Paper Heart

綾香さんのウェブサイトはご自身のイラストが描かれていたり、カラフルで独創的な雰囲気ですがどのようなイメージで作られましたか?

個人のポートフォリオのサイトなので、とにかく自分の好きなものを全部詰めて「楽しさ」をイメージして作りました。鮮やかな色を使うのが好きなので、色もカラフルに楽しくでも子供っぽすぎずにしようとバランスを考えてました。

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Scribbed Line People, Ayaka Ito

ニューヨークを拠点とされていますが、海外のニューヨークという場所で活躍する意義、そこから得るものはどのようなものだとお考えですか?

私はずっと横浜育ちだったんですけど、子供の頃からインターナショナルスクールに通って英語中心で勉強していたので、小さい頃から仕事をするなら海外にしようと決めていました。正直な所、日本語で仕事ができる自信が無かったのもあります(苦笑)。ニューヨークを拠点に仕事をするようになったのは、始めての仕事が偶然ニューヨークにあったからです。本当は海外で英語を喋れるならどこでも良かったんですよ。

でも、今はニューヨークに来られて本当に良かったと思っています。ニューヨークほど、デザイン/アート/ファッションの分野が充実している場所は他には無いと思います。常に色んな国から来た人々と出会える上、皆何かしら違う視点で物事を見ているので、とても勉強になって面白いです。

デザインをする際に気をつけている事、こだわりなどはありますか?作品を作る上でのインスピレーションの源などあれば教えてください。

デザインは、アイディアやコンセプトがあるからこそから生まれるもの。コンセプトは、人とのコミュニケーションから生まれる物事が多いです。だから、常に人とのコミュニケーションを大事にする事を心がけています。その上で、デザイン以外でも新しい事に挑戦し、常に進化し続ける事を大切にしています。

今後やってみたい事、計画していることなどがあれば教えてください。

今後もニューヨークでどんどん好きな物を作っていき、活動していきたいと思います!

Text: Yuji Shinfuku

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