アート・ベルリン・コンテンポラリー 2012

HAPPENINGText: Kiyohide Hayashi

秋といえばベルリンのアートシーンが最も盛り上がる季節だ。その理由は世界各国のギャラリーが一堂に会し、美術作品を販売するアートフェアが開かれるからである。そこへは作品購入を目当てに世界各地からコレクターが訪れるため、アートフェアに参加しないギャラリーも彼らの目を引こうと時を合わせてオープニングレセプションを開く。また美術館やアーティストもこの盛り上がりに合わせて多数のイベントを開催するのである。

こうした年に一度しかないアートの祭りの中心にはアートフォーラム・ベルリンと呼ばれるアートフェアがあった。しかし今やそれは存在しない。現在ベルリンで見ることができるのはabcと呼ばれる新しいスタイルのアートフェアの姿だ。

アート・ベルリン・コンテンポラリー 2012
abc opening. Photo: © Stefan Korte

art berlin contemporary」(アート・ベルリン・コンテンポラリー)、略して「abc」は2008年から始まったものであり、本年で5回目の開催となる。今年は9月13日から16日までの4日間、ベルリン中心部にあるかつての郵便物用駅舎であった広大なスペースで開かれ、ベルリン、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ウィーンなど各都市から129軒の国際的なギャラリーが参加している。

abcが自らを革新的アートフェアと呼ぶように従来のものとの違いは一目瞭然となっている。通常見られる小さく区切られ販売に適した小作品や絵画で満たされたブースをここで見ることは無い。広大な会場の中で視界を遮るものは巨大な作品ぐらいである。そしてギャラリーが与えられたスペースで見せるのは一人のアーティストであり、その紹介に重点を置いているのだ。

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Christoph Keller. Photo: © Marco Funke

実際に会場を歩けば、アートフェアらしからぬ作品に多く出会う。例えばベルリンのギャラリー、エスター・シッパーが紹介するクリストファー・ケラーの作品のように。
展示スペースには旧式のキャンピングカーが置かれており、その中に入ることができるようになっている。運転席部分には古めかしい民族学の映像が映し出されており、車内に座って作品を鑑賞できるようになっていた。この作品は強い体験性によって馴染みのないテーマへと近付けさせ、アートフェアにいることを忘れさせてくれるものだった。

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