キャシー・グレイソン

PEOPLEText: Julio Cesar Palacio from Panopttic

僕が始めてキャシーに会ったのは数年前に彼女がダイチ・プロジェクト・ギャラリーで働いていた頃だった。その時はちょうど「アメイジング・アート・パレード」と「メール・オーダー・モンスターズ」という大掛かりな展示会の準備をしていたところだったので、面会自体はとても短かった。ギャラリーでは年中たくさんの催しが開かれていて、いつも活気に溢れているギャラリーに感心する中、僕もアート・パレードのイベントに招待され二回訪れた。いくつか入手したダイチからでた出版物にはいつもキャシーの名前が…そしてこのギャラリーの背後には、ダイチだけじゃなくキャシー・グレイソンという敏腕のアートディレクターの存在があってこそだと僕は気付いたのである。

Kathy Grayson
© Art From Behind

ニューヨークにはもうダイチ・プロジェクトは存在しないが、近頃はキャシーがアート界でのコミュニティを築くことに努めている。そして今年6月、バワリー街に「ザ・ホール」をオープンしたのである。ダイチ・プロジェクトでディレクターとして8年勤めた後も、彼女はキュレーター、ライター、アート・アドバイザー、最近ではi-Dマガジンのアート・エディターとしても活躍している。

キャシーは優しくてアートについての知識も豊富で素敵な人だった。数ヶ月前にオープンしたばかりにもかかわらず、ギャラリー内は熱気に包まれている。アート、ニューヨーク、ダイチ・プロジェクト、ダッシュ・スノウ含む友人達のことを彼女から聞けるのはとても嬉しかった。地元のアート・シーンに精通していて、この仕事を楽しんでいるのがわかる。斬新で活力溢れたキャシーの姿はギャラリーにも表れている。商業的というよりは作品自体のコンセプトが考慮された、大胆で冒険的な展示会がみれそうだ。

ニューヨークのアートシーンや彼女の日常生活を公開する彼女のブログ「アート・フロム・ビハインド」は、平日の午後をチェルシー街のギャラリーを歩き回って過ごすよりもアートをわかりやすく身近なものに感じさせてくれる。このブログはアートのみならず、ライフスタイル—食、パーティー、展示会のオープニングなど—のたくさんの写真が掲載されていて、アーティストやおもしろい場所を見つけるのには最適の場。彼女がまだギャラリーの場所探しをしていたころに載せられた記事が僕にとって一番興味深かった。

簡潔な質問さえも、キャシーと話しているとどんどん話が広がっていく。彼女のメンターのジェフリー・ダイチのように新進気鋭のアーティストや新しい企画案などを見極める鋭敏な感覚を受け継いだ様だ。努力を惜しまない研究家なのは彼女のブログをみれば明らかである。

ザ・ホールにて行ったインタビューがこちらである。

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なぜギャラリーの所在地にチェルシーでなくバワリー街を選んだのですか?

そうね、ニュー・ミュージアムがオープンしてから隣のブロック内で幾多のギャラリーが続いてオープンしたほど、バワリー街は新たなギャラリー地区になりつつあるの。1丁目にいくつかのギャラリーもあるし、、、昔からバワリー街は好きだったわね、ダイチもここから近いソーホー地区にあったし。

ジェフリー・ダイチがソーホー近辺を開拓してそこにたくさんのギャラリーも集まったのはご存知でしょう。そして90年代にみんなはチェルシー地区に移動したけどジェフリーはそのままソーホーに残った。彼が手がける展示会は他とは違っていたことや、ソーホーでは唯一のギャラリーだったことからダイチは特異な存在になったの。

ダイチにいると他の人と違って特別なことをしているような思いにさせてくれたでしょ。チェルシーにいたら商業的により成功していたかもしれないけどお金のことを優先するよりも、シーンを支援する為にコミュニティやダウンタウンのカルチャーに向けての展示会を開いていたわ。

そして私自身もよく過ごしたバワリー街に移る事にしたの。友人のダッシュ・スノーも長年ブルームとバワリーにあるスタジオに住んでいてそこにもよく通っていたし、チャイナタウンにもよく行ったし。だから道でみつけるものやここに住んでいるアーティストといったことに個人的に深い関係性を感じるの。テレンス・コーもこの近所にギャラリーを持っているし。多くの友人が住んでいて、私もよく来るの。

私たちが見つけたこのスペースは2つの部屋が一緒になっていてバワリー街では一番のギャラリーだと思うわ。ここら辺にあるほとんどのギャラリーの広さは幅20フィートぐらいだけど、ここは幅40フィート。私たちにとって最適な場所よ。ここを見つけたときは良いギャラリーになるってことが目に見えたわ。

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ダイチにはグランド・ストリートにアートギャラリーがあって、今回の展示会「NEST」(Dash Snow/Dan Colen)のように、大規模な作品も設置できるプロジェクト・ルームが横の通りにあったことを覚えています。ザ・ホールでもこのような展示を行う予定ですか?

はい、ここでも様々な展示会を計画しています。特にこのNEST展では、ジェフリー・ダイチがピカソやウォーホルなどの作品で過去に築き上げてきた取引があってこそできた事なの。だってNEST展では3万ドルほど費用がかかっているのに、どれ一つ売られていない。彼はアンダーグラウンドのパフォーマンスアートを支援したいという想いがあったし、ダッシュのことをとても気に入っていたから。私もずっとダッシュの展示会をしたいと思っていたから今回一緒に仕事する事になったの。

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ダイチ・プロジェクトが残した「穴」は「ザ・ホール」が補う事ができると思いますか?そしてなぜ「ザ・ホール」という名に?

なぜ名前を「ザ・ホール」にしたかというと、レズビアン、グラフィティ・アーティスト、クラブ・キッズなどのいろんなアーティストが集う大好きなクラブがあったんだけど、そこからコミュニティ・センターみたいな様々な人達が一つの場所に集まるギャラリーにしたいと思ったわ。そしてダイチが残した巨大な「穴」について人々が話してて、それを名前にしたらおもしろいと思ったの。

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あなたの経歴を少し聞いてもいい?

もちろん!メリーランド州で育ちワシントンDCで勉強して、それからニュー・ハンプシャー州の学校に通って、そこでアート・ギャラリーを始めたの。ギャラリーが他になかったから。資金集めをしてから「エリア」という名でオープンしたの。学校が壁一面と他の建物の一部分を貸してくれただけでスペースは一部屋もなかったわ。19歳の時にアートの展示会を企画したけど誰も来なくて。(笑)そして大学生の時にホイットニー美術館で研修を始め、2002年のホイットニー・ビエンナーレに参加していたクリス・ヨハンソンを見たの。その頃彼はダイチ・プロジェクトで展示をすることになっていて、私の初めて努めた展示会が2002年秋に開催した彼の個展だったの。そうして彼に出会い、彼を通じて若いアーティストやおもしろい人達にもたくさん出会ったわ。

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クリス・ヨハンソンはニューヨーク出身?

いいえ、彼はサンフランシスコ出身よ。今はポートランドに住んでるけど。ミッション・ディストリクトのストリートで育って、友人にはサンフランシスコ出身のアーティストのマーガレット・キルガレンやグラフィティをするバリー・マッギーなどがいて。彼らが西海岸出身なのは知られているでしょう。だからあんなに落ち着いているの!

こうして事が始まり、色々な人に出会ったのよ。

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他に何か言いたいことはありますか?

そうね、ダイチにいたときはタウバ・アワーバッハやテレンス・コー、ダッシュ・スノー、コリー・アーケンジェル、ダン・コレンなどの若い才能を持ったアーティストたちを見つけて、キュレーションするだけじゃなく繋がりを築くことに専念していたし、これからもそうしていきたいわ。隠れていた才能のあるアーティストを発掘し続けて一緒に仕事したり、彼らにとって初めての展示会のサポートがしたいの!

次の展示会は、イギリス出身のマシュー・ストーンとアメリカからもう一人のアーティストがニューヨークで初の個展を一緒にするの。お互い会った事はないわ。

そしてその後も会話はしばらく続いた。アート・フロム・ビハインドでよく掲載される食についてやお金のこと、あるバーで男の人が猿と抱き合っている写真を見せてくれて彼がずっとこの猿に話しかけていたこと、USオープン・ファイナルに進出したラファ・ナダールや次の展示会のコンセプトについて…など。

キャシーの近況はザ・ホール、ブログ、またはi-Dマガジンでチェック!

The Hole
住所:312 Bowery, New York, NY 10012
営業時間:12:00〜19:00(日・月曜日定休)
TEL:212 466 1100
http://theholenyc.com

Text: Julio Cesar Palacio from Panopttic
Translation: Alan Smithee
Photos: Julio Cesar Palacio from Panopttic

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