NIKE 公式オンラインストア

上遠野 敏

PEOPLEText: Memi Mizukami

札幌を拠点に自然を愛しながら日本における神、または人間自身をモチーフに制作活動を行う上遠野敏。大学の教壇に立ち、あるいは「夕張清水沢アートプロジェクト」などのアートイベントにも精力的に携わる傍ら、日本の地を回り自然神の存在を探し制作へと繋げていく。今回CAI02にて個展 「ネ・申(サル)・イ・ム・光景」を間近に控える上遠野氏から、今思う自然、あるいは日本自体について興味深い話を聞く事ができた。

上遠野 敏

自己紹介をお願い致します。

上遠野 敏(かとおの・さとし)。札幌には1993年に移り住み18年目です。札幌は人々がおおらかで、他所から来てもすんなりと受け入れてくれる優しさが嬉しかったです。190万人の大都市なのに自然と文化が共生している魅力的な街です。南区にある森の中の大学で現代美術などを教えています。近年は、空知地域の炭鉱遺産を活用したアートプロジェクトを学生と一緒に実施しています。今年は、9月〜10月「夕張清水沢アートプロジェクト」を実施します。炭鉱遺産に寄り添いながら場の記憶を掘り起こして魅力を引き出します。

satoshikatono5.JPG
「ネ・申(サル)・イ・ム・光景:神倉神社・ゴトビキ岩・祈り」(2011) 上遠野 敏 写真、フォトアクリル

今回CAI02で開催される個展のコンセプトをお聞かせ下さい。

日本各地には古代神の名残である、神奈備(山)、磐座(岩)、ご神木、滝などに神聖な遺構が数多く残っています。本展覧会の作品は北海道の風景と瀬戸内や奈良、吉野、熊野などの古来からの自然神や仏の聖地を巡礼して撮影しました。できるだけ饒舌を排除した静謐な光景を展示します。自然の中に姿を現す「ネ・申(サル)・イ・ム」の存在は、清廉で美しく、底知れぬ畏怖の念を抱きます。シャッターを切る瞬間にのみ「ネ・申(サル)・イ・ム」と一体になれる幸せな時間がありました。

nunohiki.JPG
幌内布引アートプロジェクト2009 「陽光の聖堂」(2009) 上遠野 敏

自然や生物などをモチーフにする際にどのような所に魅力を感じますか?またどういう時にインスピレーションが湧きますか?

足利義政が銀閣寺で月を愛でるために、月待山を築き、月を乗せて鑑賞する向月台と月の光を銀閣に反射させる大海原を見立てた銀沙灘を作りました。自然に寄り添う日本人の美意識のこころの現れなのだと思います(実際には室町以降に後から作られたとの説がある)。素敵です。川が流れ、緑が茂ることが、この宇宙の中では奇跡的なことなのだと、いつも思います。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE