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上遠野 敏

PEOPLEText: Memi Mizukami

特に影響を受けたものが何かあれば教えて下さい。

大学の先生の口添えで、勅使河原宏監督の映画「利休」の木像の制作依頼があり、主演の三國連太郎さんの利休像を作りました。脚本は赤瀬川原平さんでした。台本や「千利休 無言の前衛」から、アーティストとしての千利休が立ち上がってきました。利休は禅の流れを汲みながら、厳格な規範を説いて「時々刻々と自己否定をしながら、創意工夫を以て意外性を創造することにある」(驚きと感動)とマルセル・デュシャンと同じ変革者でアバンギャルドそのモノなのであることが分かりました。それ以来、日本人として自分の言葉で語れる文脈を求めて、フィールドワークと重ねて日々考察をしています。
自然神の現われと神々のお供え/仏教の宇宙概念と慈悲のこころ/六道:極楽と地獄の絵巻ファンタジー/物数寄と風流/時間と空間を包含するやまと絵/こころを問う禅の造形:禅画、禅の庭/総合芸術としての茶の湯:利休・遠州ほか/江戸の意匠とポップアート:琳派、江戸の焼き物、伊藤若冲の超細密画、白隠の禅画、浮世絵などなど、世界に誇れる新鮮な美意識が私の創作の源泉になっています。

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FIX MIX MAX!2 現代アートのフロントライン2008「イコンDUCHAMP」(2008) 上遠野 敏 桂/160×40×23cm

専門分野に日本人の美意識研究がありますが、日本人の美意識は変わったと感じますか?

明治以降の欧化政策によって、日本は文明を一度断絶しました。しかし、私たちのDNAに染み付いた遠い記憶があります。時に、何らかの引き金によって無意識ながら呼び起こされるようです。学生は過去を知らないので、レクチャーでの知見を新しい考え方として受け入れているようです。それで良いのだと思います。他に日本人の特性として、正月は神社にお参りして、結婚式は教会で挙行し、葬式は仏教で行い、クリスマスは恋人と過ごす。主体性のない曖昧さが日本人そのものなのだと思います。八百万の神の柔軟な精神とも通じていて変容するのは歴史が証明しています。

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FIX MIX MAX!現代アートのフロントライン(最前線)2008 「鏡像:フラ・アンジェリコ」(2006) 上遠野 敏 桂、着色/66×24×18cm

海外での活躍もお見受けしますが、日本ならではの自然をモチーフにしたものというのはどういう反応を受けるのでしょうか?2005年にハンブルクで個展の時はどのような反応でしたか?

2005年はドイツ・ウエーデルにあるエルンスト・バーラッハ美術館で「Interactiom相互作用」か開催され、伊藤隆介さん、鈴木涼子さん、藤木正則さん、上遠野敏が出品しました。オープニングには日本領事館をはじめ大勢の招待客は来場され大変好評でした。翌日には新聞4社が記事に取り上げアートに対する関心が高いですね。2003年にドイツ・ハンブルク CAI で「上遠野敏個展」ー白妙ー(Shirotae)を行いました。やはり、オープニングやレクチャーには大勢のお客さんが楽しまれました。クンストフォーラム誌の取材と展覧会評が載りましたので、神仏とそれに関するコミュニケーションの取り方に反響がありました。作品は「とげ抜き地蔵プロジェクト」「開運おみくじプロジェクト」など参加型のインスタレーションでした。

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