TOKYO GRAPHIC PASSPORT

HAPPENINGText: Kayo Tamura

中島英樹は、NY ADC賞金賞5回、銀賞7回、東京ADC賞など、多数の受賞歴を持ち、坂本龍一とのコラボレーションを行うなど、日本を代表するグラフィックデザイナーである。

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雑誌は不況の時代。最初に、東京においての現在の雑誌の状況について語った。自身の作品集「リバイバル」を自費出版した話の中で、『分かりやすいデザインは忘れやすい。分かりやすく誘導するデザインではいけない。』という話は面白かった。

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最近では「LUMEN#05 Street view / Line」を出版。G/Pギャラリーに所属しているが、『自分ではアーティストと思っていない。グラフィックデザイナーは何をしても良いと思っている』と語った。

カメラマンがストリートスナップを辞めたら終わりだ、という話を森山大道とした時に、それを聞いたグラフィックデザイナーが街に出たらどうなるかと思ったことがきっかけでLUMENの作品が生まれたそうだ。朝の5時に街にでて、フロッタージュをした様子など、とても興味深い話が聞けた。

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TOKYO GRAPHIC PASSPORTの幕を閉じる最後のプレゼンテーションを披露したのがが、「WERK」のクリエイティブ・ディレクター、テセウス・チャン。1997年に事務所「WORK」を立ち上げた後、2000年に「WERK」を創刊。その後、東南アジアで唯一のコムデギャルソンのゲリラストアを運営し、ヴィジュアル・ブック「Guerrillazine」も同時に制作する。

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『WERKは私のインスピレーションや考え方、アイディアをそのまま反映している』と語る彼にとって、作品を作るにあたり、素直さや純粋さとがとても重要であるようだ。シンガポールの国の特徴に、間違えや弱さを無能と見なしてしまうところがある。そんな思考回路の反発から不完全の中にある美しさに目覚めたと語った。「人にとって良くないことが、時として良いことになる」ということが、ただ受け入れられないという考えから、彼は、間違いと共にある雑誌を作り始めたそうだ。WERKがどのように作られたか、どのようなやり方でボロボロな素材を選択したかなど、とても面白い話が聞けた。ちなみに紙はカモミールを気に入っているらしい。その紙を使うのはアンチデザインを表しているそうだ。彼のプレゼンはとても謙虚で面白く、WERKを買いたくなる内容だった。

2日間にわたり開催された、今回のカンファレンス。東京で活躍するスピーカーの話を聞けたのも良かったが、一度にこれだけの雑誌に関わる人達の話を聞けたのは、+81だからこそできたカンファレンスではなかっただろうか。雑誌という同じステージながらも、それぞれが違った考えを持ち、雑誌に対する思いを語る所は、とても貴重な体験となった。
カンファレンスは、最新号「+81 Voyage」と連動しており、カンファレンスが終わってからも、雑誌を見る事によって、より理解し、思い出す事ができるのではないかと感じた。今後も+81ならではのカンファレンスを期待したい。

TOKYO GRAPHIC PASSPORT
会期:2009年10月11日〜12日
会場:ベルサール原宿、九段会館
主催:+81 Creatives
https://www.grapass.net

Text: Kayo Tamura

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