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第53回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Daniel Kalt

そして今年、私はデンマーク&北欧館のために2人組のアーティスト、エルムグリーン&ドラグセットが制作した作品「ザ・コレクターズ」の鑑賞を心待ちにしていた。作品は想像を絶する素晴らしさだが、到着した時の私の落胆は計り知れないものだった。

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北欧館の外にあったはずのこの展示の象徴ともいえるインスタレーション(ある収集家の水死体がプールに浮いているというもの)が、既に解体されていたのだ。間違いなく言えるのは、9月のヴェネツィアは、6月はじめのヴェネツィアとは全く別の場所であるということだ(これは天気の話ではない)。

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見知らぬ誰かが密やかに持ち込んだゲリラアート(極めて機知に富んだものもあり、ある者はドイツ館の中に張り紙のメモを残し、臨場的なアルテ・ポーヴェラのエッセンスを加える試みを行っていた)にも心をくすぐられたが、ジャルディーニ会場のどこかで見つけた、車輪のない自転車のフレームというパブリックアートはとても痛烈な作品だった。しばらくの間私は、これは2ヶ月前に誰かが置き去りにした自転車の残骸かと自問したほどである。

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ジャルディーニとアルセナーレを出るとそこには果てしなく美しい風景が続くのだが、ヴェネツィアはとてもややこしい場所である。ビエンナーレのオーガナイザーはこの迷宮のような街の特性をよく知っているため、道路に貼られたステッカーが、メイン会場の外に数えきれない程ある各国のパビリオンへの道案内をしてくれるのだが、唯一の問題は9月になるとその殆どが見えなくなっており、ステッカーを認識するのと目的地を探して何度も歩き回るのとに大体同じくらいの時間がかかってしまうということだ。

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