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珍しいキノコ舞踊団

日常をキュートなダンスに変えていく。

1990年に結成以来、日常生活の中から紡ぎ出される何気ない感覚や気持ちをキュートなダンスで表現しているダンスカンパニー、「珍しいキノコ舞踊団」。2月28日と3月1日に山口情報芸術センター[YCAM]で予定されている公演「ザ・レイニィ・テーブル」は、「珍しいキノコ舞踊団」とメディアアートユニットの「plaplax」による共同作品で、2月初めよりYCAMにて滞在制作が行なわれている。ダンスとメディアアートが出会うことで、魔法のような旅物語を繰り広げる「ザ・レイニィ・テーブル」公演を控えた、「珍しいキノコ舞踊団」を主宰する伊藤千枝さんにお話を伺った。

珍しいキノコ舞踊団
珍しいキノコ舞踊団「3mmくらいズレてる部屋」(2006) photo: Yohta Kataoka


珍しいキノコ舞踊団」のグループ結成のきっかけや経緯を教えてください。

幼稚園のときから、モダンダンスを習っていたのですが、高校生ぐらいのとき、現在でいうコンテンポラリーダンスに出会いました。当時だと、フランスで盛んだった「ヌーヴェルダンス」ですね。日本だと勅使川原三郎さんなどがこうした分野で活躍されていました。そういうダンスを目にして、私自身で踊りを作ってみたいという想いがどんどん強くなっていたように思います。高校生の時期にも踊りを作ってはいたのですが、本格的にダンス公演を自分で開きたいと考え、それを実現するために日本大学芸術学部に入学しました。すでに想いはあったので、大学に入ってすぐ、仲間を見つけようと、みんなに自分のやりたいことを伝えて…。そしたら、「私も、私も」と賛同してくれる人がいたんです。最初はそれだけなんです。場所も食堂だったんですよ。


NHK教育「ドレミノテレビ」やUAの楽曲「黄金の緑」の振り付けなど、日本だと舞台や公演会場以外のテレビでもみなさんの活動を知っている人も多いかと思います。また海外でもイベントに参加されたり公演するなど幅広く活動されてますね。たくさんのご活動のなかで、ひとつの場所に滞在して作品を制作することは、これまでにもありましたか?

2006年に、ひとつのプロジェクトとして、「3mmくらいズレてる部屋」という作品をつくりました。オーストラリアのメルボルンと金沢21世紀美術館で滞在制作をして、上演。その後、シドニーオペラハウスなどで公演をおこないました。ひとつの作品を滞在しながらつくりあげるのは、「ザ・レイニィ・テーブル」で2度目です。



珍しいキノコ舞踊団「3mmくらいズレてる部屋」(2006) photo: Yohta Kataoka


YCAMにて行われる新作パフォーマンス公演「ザ・レイニィ・テーブル」には、どのような意味が含まれているのでしょうか?

今回の「ザ・レイニィ・テーブル」というタイトルは、この作品のテーマでもあります。「珍しいキノコ舞踊団」の作品には、舞台上にテーブルが出てくることが多くあります。テーブルっていうのは、ファミリーとか、ホームとかを示しているんです。テーブルは、ひとつのホームの象徴であり、道具であると思うんです。今回は、そこに「雨」っていう自分の意思とは関係なく降ってくるものが題材として加わっています。それは、傘をさしたり、レインコートを着たり、屋根をつけたり、いろんなものをつかって避けることも勿論できます。でも、「止まれ」って言って止まるものでもない。でも時間がきたら止む。自分の意思とは関係ないものがあって、それを避けることももちろん可能かもしれないけど、今回の作品では、それを、「まずは受け入れてみませんか?」ということをテーマにしているんです。普段の生活にも、社会全般にも、自分の意思とは関係ないことに直面することはたくさんありますよね。そういうことも含めて「いま、どうすればいいんだろう?」っていうとき、それを「まず、受け入れてみよう」とすること。それを、この作品を観ている人と共有できればいいな、と思っています。



今回の新作では、影や香りを使ったインタラクティブアートを手がける「plaplax」(近森 基+久納鏡子+筧 康明) とコラボレーションしていますね。珍しいキノコ舞踊団のダンスパフォーマンスとplaplaxの作品がどのようにインタラクションしているのでしょうか?

映像とダンスっていうと、これまでの印象では、映像はすでに準備されていて決定されているものだけど、ダンスはその場で起こる「生」のものだから、一緒に舞台にあげると、どうしても映像にダンスを合わせなくちゃいけない場面が出てくるんです。そうなると、踊りのほうが窮屈になってしまう。でも、映像というより、そのシステム自体をきちんと踊りについて考えながら作り上げることで、踊りに合わせて映像がインタラクションすることができる。これは、私たちにとって初めての試みですね。そのシステムの構築は、実験と調整を繰り返して、すごく大変なんですけど、今まで私たちが「窮屈だな」と思っていた部分は解消されたように思います。自由に踊っていれば、そこに映像がついてきてくれるっていう私たちにとって新しいことが起きようとしています。舞台の要素としては音楽と美術と照明がある。そして、それらと同じように映像があります。だからこそ、それらと踊りのバランスを上手く組み合わせるように考えることができるのだと思います。



minim++「Tool's Life」(2001)


plaplaxとのコラボレーションの他、音楽はバッファロー・ドーターの大野由美子さん、衣装にはAOMIさんが担当するそうですね。今回の新作を発表するにあたり、誰と共同制作をするかの選択など、それぞれの担当を決める上で決定的な理由などありましたら教えて下さい。

大野由美子さんとは、7年くらい前から知り合いで、もともと私が大ファンだったんです。バッファロー・ドーターのライブにも出していただいたり、珍しいキノコ舞踊団の公演を見に来ていただいたり、これまでにも色々と関係はありました。「いつか一緒になにかできるといいね」と、お話しもしていたのですが、今回、思い切って、「本当に一緒にやってもらえませんか?」とお願いしました。昔から大ファンだったので、今回は、本当に夢が叶ったような感じですね。ちょうどそのころ、衣装を担当してくださる方を探していて、由美子さんにもご相談しました。そこで紹介していただいたのが、AOMIさんなんです。AOMIさんと実際にお会いしてみると、今まで出会わなかったことが不思議なくらい、共通の友人などもいて…。そこで、意気投合して、今回の衣装をお願いすることになりました。plaplaxさんとは、YCAMを通じて、初めて共同で作品を制作することになりました。これまでも一緒に舞台をつくる方について、私が直接お願いすることもあれば、周囲の方々から「一緒にやってみてはどう?」とお誘いを受けることもあります。「ザ・レイニィ・テーブル」のplaplaxさんがまさにそうです。ほかにも、生意気さんとの出会いなんかは、「こんな人たちいるけど、一緒にやってみてはどう?」と周囲の方から教えてもらっています。本当にこういった出会いというのは、色々な繋がりから実現することが多いです。



YCAMでの制作風景


作品をつくるうえで何か強く影響を受けているコトやモノがありましたら教えて下さい。

昔は、影響を受けるために自分でどこかに出かけたり、何かを見たり、勉強したりしてたんですが、いまはその逆で「作品を作るために何かをしよう」とか、探すとか、そういうのはしないようにしてるんです。作品をつくるために何かする、ということをやめてみると、普段の生活のなかで自分の考えていることや悩みっていうのを自覚して、それが作品をつくるときのテーマになります。これは、みなさんも同じだと思うのですが、買い物したり、テレビを見たり、そういう普段の生活のなかで、自分の先にある生活を想像したり、いろんなことを考えてる。そうした自分の考え方や想いは、生活の中で蓄積するんですよね。そういうのが積もって、作品をつくるときに出てきている感じです。だから最近では、作品のテーマは、日常の中から生まれていると言えますね。実際の作品の見え方に関わる美術や衣装などのビジュアルについても、映画を見たり、テレビや雑誌を眺めたりするなかで「おもしろい」と思っているもの。それが、蓄積されて作品につながっています。テーマにしても、ビジュアルにしても、作品を前にして、考えて考えて浮かぶというよりも、自然と浮かび上がるものだと思っています。最近は、常に作品をつくり続けていることも、こういうことに影響していますね。昔は、「美術館に行こう!」とか「ギャラリーに行こう!」とか意気込んでいましたが、今は見たいから行く。それだけです。見たくないのに行くとか、影響を受けようとか、そういう風にはもう思いませんね。



YCAMでの制作風景


今回の新作「ザ・レイニィ・テーブル」の見どころや、新たに挑戦していることがありましたら教えてください。

これまでの「珍しいキノコ舞踊団」の作品では、ダンサーの個性がバラバラにあって、みんなが主役として踊って、舞台をつくるということがひとつの特徴でした。今回は、そのバラバラの個性を、作品の中でひとつに揃える構成になっています。少し具体的に言うと、舞台には、主役となる人が一人いて、それを順番に踊るんです。そして、最後は全員同じ服を着て、ステージで踊ることになります。同じ衣装をきて踊る、というのは結成当初以来ですね。今後もしばらくないと思うので、見どころです。そして、今回の作品には、ストーリーがあります。彩の国さいたま芸術劇場で、近藤良平さん(コンドルズ)とやった『日本昔ばなしのダンス』での「へっこきよめ」以来です。これは、20分くらいの短いものだし、全然タイプも違うのですが、ストーリーがある作品は、珍しいキノコ舞踊団にはあまりないんですよね。今回は、「ザ・レイニィ・テーブル」というテーマのなかで、ストーリーを構成して、踊っています。


YCAMでの滞在制作、なにか印象に残っていることはありますか?

山口に到着したその日に、YCAMのみなさんと大ふぐパーティーをしました。生まれて初めて、「てっちり」と「ふぐのからあげ」を食べましたね。ふぐ刺しはこれまでにも食べたことはあったけど、あんなに肉厚なのは初めてでした。ふぐのおいしさがようやくわかりましたね。山口も、ふぐも、その良さを堪能しました。


珍しいキノコ舞踊団 × plaplax 「The Rainy Table」
振付・構成・演出:伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)
舞台美術・映像演出・メディアテクノロジー:plaplax(近森 基+久納鏡子+筧 康明)
音楽:大野由美子(Buffalo Daughter)
衣装:AOMI
出演:井出雅子 山田郷美 篠崎芽美 茶木真由美 中川麻央 伊藤千枝
日時:2009年2月28日(土)19:00〜/3月1日(日)14:00〜(30分前開場)
料金:前売 2,500円/当日 2,800円 全席自由(整理番号付)
会場:山口情報芸術センター [YCAM]
住所:山口県山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
http://www.ycam.jp

Text: Mariko Takei, Fumi Hirota

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