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レオ・オブストバウム

PEOPLEText: Yurie Hatano

今年9月、2010年バンクーバー冬季オリンピック&パラリンピックのグラフィックアイデンティティとピクトグラムが公開された。デザインは、カナダの自然や都市の環境とその文化的な多様性をもとに描かれた模様が特徴的だ。全てのグラフィックアイデンティティは、VANOCのデザインチームによって手掛けられている。メインのテクスチャには、地元のアボリジニアーティストによるものも使用されている。今回2010年バンクーバーオリンピックのデザインディレクターであるレオ・オブストバウムが、その制作過程を教えてくれた。

Leo Obstbaum

バックグラウンドを含め、自己紹介をお願いします。

私は、アルゼンチン出身で、4歳の時にバルセロナに引っ越しました。子供の頃からヴィジュアルアートの世界に興味があったので、企業アイデンティティに特化した学校に入学し、総合コミュニケーションの研究をしました。そして、1990年に自分のスタジオをオープンし、ファッション、音楽、映像デザインなどに力を入れました。仕事上、単調なものは嫌いなので、プリント、放送、映像、布地、インスタレーション、映像アート、工業デザインなど様々なメディアでの作品づくりを追求しています。

大きな仕事としては、ラ・フラ・デルス・バウスのマルチメディアオペラ『バルセロナのドン・キホーテ』の衣装デザイン、アドルフォ・ドミンゲズの企業アイデンティティ、バルセロナオリンピック・パラリンピックの式典の衣装デザイン、2004年の文化フォーラムでの講演などです。また、映像ディレクターのビガス・ルナに紹介され、映画の世界にも興味を持ち、映画『ヴォラベラント』のタイポグラフィーや、タイトルデザインに協力させて頂きました。

ミグエル・マリンとの共作で、オーディオヴィジュアルとマルチメディアを使ったインスタレーションを制作しました。2003年6月、ソナーフェスティバルの開会式でライブ、2004年の9月にはバルセロナファッションウィーク期間中にビデオインスタレーションも行いました。私の手掛けた映像『ビヨンド・アイデンティティ』は、ソナーフェスティバルの展覧会、ホテルリッツ、ラブバイツフェスティバルなどでも上映されました。

2005年の10月にカナダのバンクーバーへ引越し、2006年の5月よりオリンピック・冬季パラリンピック組織委員会のデザインディレクターとして働いています。

Leo Obstbaum

2010年バンクーバーオリンピックのデザインディレクションを担当するに至った経緯を教えて下さい。

カナダ人の妻とのハネムーンでいったバンクーバーがとても気に入り、2005年10月にそこへ引っ越しました。カルチュラル・オリンピアドについて調べるためにバンクーバーオリンピックのサイトを訪れ、偶然デザインディレクター募集の記事を目にして、人生で初めて履歴書というものを書き、すぐ委員会へ送りました。2ヶ月後、ついに長年の夢が叶いました。1992年にバルセロナに住んでいた時、オリンピックのデザイン展覧会のとりこになり、自分もいつかやってみたいと思ったのです。多くのデザイナーと同様、デザインのプラットフォームとしてのオリンピックにとても興味がありました。自分は、あまりスポーツをする人間ではないですが、私たちが寝ている間も朝早くからトレーニングをし、完璧を求めて毎日努力し続けるアスリート達の姿にいつも刺激を受けます。違うフィールドではあるけれど、自分もオリンピックを動かす一員になって彼らが自分たちの夢を叶える助けをしたい、そして誰かをインスパイアしたいと思うようになりました。

Leo Obstbaum

プロジェクトのチームメンバーの人数、簡単なバックグラウンド、制作プロセス、そしてあなたがどのようにプロジェクトに関わっているか教えて下さい。

我々の所属するブランド&クリエイティブサービス部門は、エンブレム、トーチ、メダル、表彰台、スポーツピクトグラム、ユニフォーム、スローガンなど、ほとんど全てのオリンピックのアイコン、また広告や映像などの主要なコミュニケーションを担当しています。基本的には、毎日委員会のデザインスタジオで仕事をしています。他にも、バンクーバーオリンピックのブランドマネージメントやスポンサー、パートナー、ライセンシーの支援なども行っています。

この部門は、私とアリ・ガードナーが共同で運営しています。スコットランド人と日本人のハーフであるアリは、典型的なカナダ人で、英語とフランス語を話します。全体では24名のチームで、グラフィックデザインや放送、アート、メディア、音楽、マーケティング、広告など様々な分野からメンバーが集まっています。中には実際のアスリートもいます。大半はカナダ人で、ここでは普通のことですが、国の色々な場所から集まっているのでそれぞれの文化的な差異がはっきりしています。

グラフィックアイデンティティとピクトグラムのデザインは、2006年3月の政府とバンクーバー、ウィスラー、ブリティッシュ・コロンビア、カナダの提携観光会社と一緒に行った会議からスタートしました。その土地や文化について様々な意見を聞くことができました。その後、短期間のリサーチを開始し、チーム全体でオリンピックの開催予定地を訪れたり、そこでの天気や環境を確認したりしながら、デザインに反映していきました。

そのリサーチでは、一観光客として様々な都市を巡り、図書館、ギャラリー、ショップ、その他アイディアとインスピレーションを与えてくれそうな場所を数多く訪問しました。マクロのレベルだけではなくミクロのレベルにおいて「バンクーバー、ウィスラー、カナダの特徴は何か?」ということを追求したのです。

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