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エリック・ヴァン・ホーヴ

PEOPLEText: Vicente Gutierrez

エリック・ヴァン・ホーヴは、ニューヨークから東京に巡回し開催される「アトミック・サンシャインの中へ」展に参加する1一人のアーティストの一人だ。
日本国平和憲法第9条を軸に展開する、歴史的関係の深いこの展覧会では、渡辺真也氏のキュレーションによる作品が展示され、戦後日本が抱える問題に取り組んでいる。第9条が現代日本の国家において定期的に話題となり浮上している中で、多くの人は、その意味についてコメントや話し合いには消極的だ。それは、地域政情不安定であるとされる時代においてさえもである。見直しの可能性が時折浮上するそのエコーとして、「アトミック・サンシャインの中へ」はこの政治的要因をめぐる難題に対する意識を喚起するに違いない。
今回、SHIFTは、ベルギーのアーティスト、エリック・ヴァン・ホーヴにインタビューし、出展した作品やこのプロジェクトへの彼の思いなどについて伺った。

エリック・ヴァン・ホーヴ
© Eric Van Hove

「アトミックサンシャインの中へ」に参加することになった経緯を聞かせて下さい。

(キュレーターの渡辺)真也と知り合ったのが2005年で、僕がちょうどユーゴスラビアのアーティスト、セイラ・カメリッチのアシスタントをしていた時で、真也が前回の展覧会を手がけていた時です。真也が第9条をめぐる問題に関する展覧会をやると決めた時、その年に沖縄で僕が手がけた「日本国憲法 みみずアウトダフェ」のことを知って、真也から連絡をもらいました。彼は、第9条について考えている日本の若手アーティストが少ない中で、外国の若手アーティストがそれに取り組んでいるという事実が興味深かったようです。

多くの日本人は第9条について語りたがらないと言って間違いはないでしょう。そこで気になるのは、非日本人アーティストとして、第9条へアプローチする中でどのような異なる考えを持っていましたか?

僕は、アルジェリアで生まれ、カメルーンで育ち、ベルギーのパスポートを持ち、母国語はフランス語で、名前はスカンジナビア語で、姓はオランダ語で、そして10年近く日本に住んでいます。自分を東京人と見なすのに十分な時間を過ごしてきました。それからみると、自分の外来性で遊べるんだけど、今ではいつでもベルギーにいる時でも、僕は外国人なんです。むしろ移住者という風に考えたい。それは、流浪、航海、遠足や、見せかけの休日、その間のどれかに当てはまるような、移住する束の間のトラベラーです。

僕は、「国籍」という境界線の外側で、正確にその問題を考えるために、僕自身を自己追放してみることにしたのです。デュシャンの「regardeur」(見物人) という概念の可能性について考えることに興味があります。「regardeur」に対応するものを「foreigner」(外国人) の中で徐々に見い出していくというものです。
ローカルとグローバルには共通点があります。ベルギー人として、日本国憲法は僕の問題ではないと考える人はいるでしょう。でも、アーティストとして、自分が言いたいことがあると信じています。一時でもここに住み、社会の中でアーティストは社会的役割を持っているということが分かるから、なおさら何か言わないといけないなと思うのです。僕は、そういった社会力学に興味があるのです。日本のアーティストとして、または、ベルギーのアーティストとして、そのようなものがあるかどうか確かではないのです。アーティストがいる。それだけです。パスポート自体は、100年前以前には存在していませんでした。僕のアートに国家的な関連性があるかどうかというのは、そもそもつまらないことです。

エリック・ヴァン・ホーヴ
© Eric Van Hove & Shinya Watanabe

では、作品そのものについて教えてください。

持続可能な作品を作ることがアイディアとしてありました。それは物理的に持続可能なだけでなく、歴史的にも、哲学的にも、社会的にも持続可能であるものです。地域開発プロジェクトの一貫だったので、作品は那覇にかつてあった青果市場に設置されることになっていました。そこで余った野菜を燃やしているということにすぐに着目し、ミミズ飼育場を提供することを決めました。ミミズ飼育場は、それら廃棄物を再生利用して肥料とすることを可能にし、彼らはそこから利益を得ることができる。それは、自分が受け取る制作資金を生み、時間とともに彼らに譲られていく。これは、テクニカル・アドバイザーとしてアーティストのリチャード・トーマスと一緒にコラボレートした作品です。

憲法やそれに付随する歴史について話し合ったのが、沖縄に滞在していた頃です。夜通しで、その力学について考え、再生紙に憲法をコピーし、それをミミズの寝床の上に並べ、地元のテレビ局へ連絡して、テレビ局の感度の良いマイクを利用し、ミミズがむしゃむしゃと食べる音を録音しました。プロジェクトに対する地元の熱意が高まりました。僕のラップトップ・コンピューターに繋がれた地方の発信機を使用して放送することを決めました。それは、ミミズが野菜や問題の憲法のコピーされた紙を消化しているのを、チャンネルを合わせて聞くというようなものです。

エリック・ヴァン・ホーヴ
© Eric Van Hove & Shinya Watanabe

それを反逆とか冒とくだと言う人もいるでしょうね…。

ええ、そうでしょうね。だけど、逆のスタンスをとることもできる。それは、リサイクルすること(再利用すること)の楽観的なジェスチャーとして捉えることもできます。つまり、リサイクルは悪いことではなく、それは再生することなのだと。大抵、私の作品は両刃の剣なところがあり、制約がなく自由です。

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