エレクトリカル・ファンタジスタ

HAPPENING

『メディアアートがあるバーをつくるのが直近の夢』『ふつうに部屋の中にメディアアートがあっていつもいじれるような生活がしたい』
アートやデザインに囲まれて暮らしたいという欲求は、僕らコンピュータ世代にとって普通のものになっている。最初にあげた声は全て女性によるもの。PCやネットを誰もが使っている時代に、ITを男性視点でしかみることが出来ないのは、古い世代のどうしようもない固さである。
常に新しいテクノロジーとつきあって行かなければならない、私たちにとって、アートやデザインはそれらを快適なものとし、自分が使いたいように使いこなすために無くてはならないものなのだ。


メディアアートがライフスタイルを楽しいものにする。その事実を作品とたわむれることで実感できる、ワンダーに溢れた展覧会が3月14日まで横浜「BankART Studio NYK」で行われている。

エレクトリカル・ファンタジスタ」というこの展覧会は「IT時代のライフスタイルに磨きをかけるファンタジスタたち」をテーマに、まさにゲーム機やロボット、今までに無いIT機器までもひとりや仲間だけの力で作ることが出来る、今生きる僕たちの世代の「ファンタジスタ」たちの作品によって構成されている。

アートやデザインが無ければ生活を豊かに暮らすことが出来ない。その最たるものはウェブ表現の世界である。
ウェブによるリッチメディア表現が無ければ、オンラインで生活のあらゆるものを満たすことも出来ないだろうし、ブロードバンドで楽しむことも出来なかっただろう。しかし、このような豊かさを支えるウェブデザインがなぜか日本ではアートとしてミュージアムに置かれるような評価のされ方が未だされていない。どれだけプログラミングが秀でているのか、テクノロジーに含蓄があるかが未だこの国におけるネットアートの評価の置かれ方なのだ。

ミュージアムで作品として体験することでひかる、クリエイティブの価値としてのウェブデザインとは何か?
この展覧会では「Flash Fantasista」のテーマで、ファンタジスタたちによるひかる作品を展示している。作品と直接向き合えるミニマムなタブレットPCに提示される個々の作品は、日常ウェブデザインに注意を払わない人々にとっても、その奥深さにひきこまされる構成になっている。

展示されている作品は、まず、遠崎によるKDDIのデザイン携帯電話「talby」のスペシャルサイト。デザインされた携帯電話となぜか遊び戯れるユーモラスな作品だ。会期中、限定公開されている。

ハドソン・パウエルによる「Responsive Type」は、ウェブによるタイポデザインのインタラクティブなクリエイティビティを追求したサイト。

バスキュールによる「ペンシルキャッチャー」は、国際インタラクティブ広告アワードである「One Show」のペンシルトロフィーをUFOキャッチャーを使って実際に遠隔で釣り上げるという賞を獲る事の困難さをヴァーチャルに体験するサイト。

最後に、「null*」は外部の音声と映像によってミニマムなデザインが変わり続ける作品「Factoral Dots」と「Atmosphere」をコントリビュートしてくれた。

「tabby」というこのスタイリッシュな毛玉を前についつい触りたくなるだろう。「tabby」は触られたり声を掛けられると、まるでペットが喜ぶように収縮を繰り返しながら光ったりする。『飽きられてしまうペットロボットの限界に対し、ペットのようなインテリアにすることで愛される存在になっている』と作家の植木淳朗は答える。来場する女性のほとんどがこれを触り、はしゃいで行くという。その未知の存在に対し取材に来たフジテレビのアナウンサーは『アナウンサーとしてのプロは得もいわれぬもの』と言ってはいけないのだが、そうとしか言えないのでつい、カメラの前で口にしてしまったと語る。この不思議な魅力を前に、新たなPC周辺機器としてのハイインテリアの開拓がこの展覧会から生まれ始めているともいう。

一方で、癒しをテーマにしたロボットも存在する。「PARO」というロボットはアザラシの子どもを忠実に再現した上で、癒されるデザインや仕草を導入したもの。その愛くるしさは、孤独な老人のための介護の場にも使われている。ペットロボットは飽きるといわれているが、「PARO」はぬいぐるみにより一層の愛くるしさをテクノロジーとして導入することで、技術者や趣味のひとりよがりではない持つものに依存性を求めるペットさを促しているのである。一体一体はちゃんと散髪されてきれいにされて送り出されているとのことである。

「tabby」と「PARO」、2人の作家がテクノロジーによる癒しのデザインを語り合うトークが、3月12日の19:30より展覧会場内で開催される。

科学のチカラは彫刻すら変えてしまう。磁力を帯びた液体が変幻自在にかたちを変える彫刻「モルフォタワー」がそれだ。
ダイナミックかつ繊細に動く金属は、置いとくだけではありえない存在感を醸し出しているのだ。

空間に新しい解釈を求めようという作品もある。影の効果を使って幻想的な作品を作り出し続ける「plaplax」。その最新作「hanahana」は、においをCGに変えて視覚化するという作品だ。環境によってにおいが変わるというのは当たり前だが、においによって環境を変えてしまおうという新たなアプローチがここに。

最先端のテクノロジーで競争が続くコンピュータゲームの世界。それよりも先に行くのがメディアアートであると、ゲームの開発者はチェックを続けている。
「PainStation」はその中にあって、伝説のマシーンとされている存在だ。
スタイリッシュな筐体でするのは単純なピンポンゲーム。それなのにどきどきする。なぜなら、ピンポンゲームに負けると電気ショックや鞭が襲ってくるのだ。耐え切れないと負けになる漢気溢れるマシーンなのである。ゲームは刺激を求め続けるのに、安全でないと商品にならない。この怪我をするかもしれないマシーンはアートだからありえる存在なのだ。

最先端のテクノロジーがゲームになったアートもある。「through the looking glass」は、自分と鏡の中の自分とか戦うホッケーゲーム。この視覚技術で東京大学総長賞を受賞したというゲームだ。

他にも多数の作品があるこの作品空間に留まることで、マーケティングや技術から与えられた限定された未来の暮らしでない、頭の中で思い描いているような、未来の姿がきっとあるように体感すると思えることだろう。

アートによって、冷たさを感じさせるようなデジタルの行く末ではない、もっと柔くて暖かくて、かつ刺激的なテクノロジーライフがあることを再認識させてくれることであろう。そしてその再認識によって、もっと私たちが暮らしたくなるようなライフスタイルが生まれるかもしれない、その予兆とそこに向かう「ファンタジスタ」たちのチャレンジを感じさせる展覧会であった。

エレクトリカル・ファンタジスタ 2006
会期:2006年2月24日〜3月14日 11:30-19:00 会期中無休
会場:BankART Studio NYK
住所:神奈川県横浜市中区海岸通3−9
   みなとみらい線馬車道駅徒歩5分・JR桜木町駅/関内駅徒歩10分
入場料:500円
主催:クリエイティブクラスター
助成:芸術文化振興基金
後援:文化庁 横浜市 CG-ARTS協会 財団法人日本産業デザイン振興会 デザイン&ビジネスフォーラム
協賛:アドビ システムズ 株式会社
協力:BankART1929 株式会社ソリッドアライアンス PBJ株式会社 株式会社情報工房
問合せ:TEL 03-6219-0112
info@creativecluster.jp
http://fantasista.creativecluster.jp

Text and Photos: Tomohiro Okada

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