レスフェスト 2005

HAPPENING

世界最大規模の映像の祭典「RESFEST」が今年も日本へやってきた。世界各都市をツアーするこのフェスティバルも日本で行われるのは今回で7回目。1999年に日本でも行われるようになった当時と比べて現在は、デジタルフィルムも比較にならないほど一般化し、物珍しさも消え、寧ろ飽和状態も避けられない状況。その上でこのフェスティバルは前進し続けるデジタルフィルムの現在を僕らにわかり易く紹介してくれる。


さて、今年も例年通り東京では原宿にあるラフォーレ・ミュージアムで行われ、あらゆるデジタルフィルムの形式のなかから、「RESFEST」的な観点で設けられたプログラム毎にセレクトされたミュージックビデオやショートフィルム、長編、スペシャルプログラムを上映し、また注目の作家がレクチャーを行うワークショップやトークショウなどもあり、様々な角度からデジタルフィルムという拡張し続けるメディアを照射した。


Beck『Girl』(Dir: Motion Theory)

注目されたプログラムは数々あったが、自身の音楽的キャリアもさることながら、その時々の旬のディレクターと組み、オリジナリティのあるミュージッククリップを発表し続けているベックをフォーカスした「BECK RETROSPECTIVE」や、今最も注目されるべきディレクター三人をフィーチャーした「TRIPLE THREAT」、「SHORTS」シリーズや「RESMIX」シリーズなどなど、上げればきりがないほど、というか全部観たい!というくらいボリュームがあり内容の濃いプログラム。

そのなかで今回取り上げるのが、「TWO BY MIKE MILLS」とドキュメンタリー「INFAMY」。
シフトの読者はご存知の方も多いとは思うが、「TWO BY MIKE MILLS」というタイトルから察する通り、日本でも人気の高いマイク・ミルズによる二つのフィルムがこのプログラムで同時上映された。


『The Architecture of Reassurance』(Dir: Mike Mills)

一つは、1999年の「THE ARCHITECTURE OF REASSURANCE」。DVDなどでリリースされているので見たことのある人は多いと思うが、35ミリで撮られた作品ということで、大画面で観るのがまずは作法というもので、映写機はどうだったんだなどの疑問はさておき、多少強引ではあるが、それだけでオッケーという論理を展開したい。家庭用のテレビやパソコンのモニターでは中々感じることができない、スケールの大きさ、郊外にある新興住宅地のランドスケープとエキゾチックな雰囲気を持つアリス嬢の魅力を余すところなくスクリーンに映写された。こちらのDVDは「GAS DVD」でリリースされているので、観ていない方は是非。


『Not How, What or Why But Yes』(Dir: Mike Mills)

もう一方の作品は「NOT HOW,WHAT OR WHY BUT YES」というドキュメンタリー・フィルム。年齢も人種も性別も職業もまったく異なる人々にまったく同じ質問「余命が3ヶ月とわかったときにしたい5つのことは何?」、シンプルだが重みのある質問を投げかけ、マイク・ミルズ自身がインタヴューを行う。次々と質問に答えていく被写体のアップと答えは、家族のことだったり、恋人のことだったり、男性なら一度は夢見るであろう、女性との関係をエンジョイしたいなど、対象は違えど、人間が他者との関係性の中で生きているのだと浮き彫りにしていく。質問は数回行われるのだが、余命の時間が短くなるだけ。このようなやり取りがモノクロの映像で一時間近く映し出され、最終的にはインタヴューの対象者も視聴者も「余命何ヶ月」って結局関係なくて、今切実に何がしたいのか? というテーマに収束していく。
ファッション性やセンス溢れる映像美というイメージがあるマイク・ミルズの小細工なしのこのドキュメンタリーは、小難しいことを抜きにした説得力がある。
また、すでに日本以外の国では上映され、キアヌ・リーブスなどが出演している「Thumbsucker」が近々公開されるそうだ。


『Infamy』(Dir: Doug Pray)

今回行われたプログラムの中で最も長い上映時間と内容のヘビーさは群を抜くドキュメンタリー監督ダグ・プレイによる「INFAMY」はグラフィティ・アーチストとそのカルチャーに関わり周辺にいる人々をを題材にしたドキュメンタリー・フィルム。ストリートカルチャーの中でも、描かれたグラフィティは目にすることもあるが、アーチスト自身やその実生活などは謎が多い。約1時間半のフィルムの全編にわたって、生々しいグラフィティ・アーチスト達の生き様が淡々とそして延々と綴られる。「タグの上にはスローアップを描いてよくて、スローアップの上にはピースを描いていいの、なぜかはわからいけどわからないけど」という登場人物の一人、クロウがいった、路上で自然発生したルールやギャングでは無いのに周りからはそう見られるという葛藤を持つ、あきらかに見た目ギャングであるTKOクルーのトゥーマー、そして家族やアイデンティティー、仲間、全てがスプレー缶やサインペンで壁や電車、標識などに描かれた落書きに込められているということを「グラフィティは生き様だ」という言葉の数百倍、画面がものがたる。映画についての内容は、公式ウェブサイトに登場人物の詳しいディテールものっていて、映画とはまた別の面白さがある。


FOUR SEASONS OF TRAKTOR: A RETROSPECTIVE with TALK SHOW

最後に、TRAKTORの初期の作品から最近のものまでの一連の作品群を上映し、会場でトークショウも行われた「FOUR SEASONS OF TRAKTOR: A RETROSPECTIVE」に触れないわけにはいかないだろう。


Basement Jaxx『Where’s Your Head At?』(Dir:Traktor)

スウェーデンで生まれたこのディレクター集団の6人はマッドなユーモアが特徴的な作風のテレビ・コマーシャルを主に手掛け10年以上に渡って最前線で活躍してきた。トークショウの中でも発言していた「ナンセンスなアイデアに対して真剣に取り組む」ことにより、単純なナンセンスさを逸脱した特異なリアリティをもつ彼らの作品は内容よりも形式を重んずる考え方が、フォックス・スポーツやディスカバリー・チャンネルのコマーシャルシリーズからうかがえ、完璧に計算された形式にナンセンスだと思われる要素をはめ込み(キャストにプロではない人を起用するなど)、一種独特な風合いの映像的にズレたリアリティをもたせていた。


『WORKSHOP2: Beyond DV- HDV, the future of filmmaking 〜撮影から編集まで〜』

「RESFEST」自体の歴史も来年で10年ということで、これだけのエネルギーを10年間保ち続けたパワーはデジタル・フィルムという可能性が持つエネルギーの目に見える形であり、今回のプログラムでも取り上げられたマイク・ミルズが第一回目で上映されている事からも、作家とフェスティバルと観客の幸福な関係のストーリといえなくはない。また、2000年代後半のデジタル・フィルムはどのように進んでいくのかも注目するべきことだが、90年代から始まり現在まで続く「RESFEST」が今後も単なる権威的なフェスティバルとは一線を画すフェスティバルであり続けてほしいものである。

RESFEST JAPAN 2005
東京開催:2005年11月17日〜20日
会場:原宿ラフォーレ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6ラフォーレ原宿6F
主催・問い合わせ:RESFEST Japan 事務局
resfest@resfest.jp
http://www.resfest.jp

Text: Yasuharu Motomiya

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