レスフェスト 2005

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

今回行われたプログラムの中で最も長い上映時間と内容のヘビーさは群を抜くドキュメンタリー監督ダグ・プレイによる「インファミー」はグラフィティ・アーティストとそのカルチャーに関わり周辺にいる人々をを題材にしたドキュメンタリー・フィルム。ストリートカルチャーの中でも、描かれたグラフィティは目にすることもあるが、アーティスト自身やその実生活などは謎が多い。約1時間半のフィルムの全編にわたって、生々しいグラフィティ・アーティスト達の生き様が淡々とそして延々と綴られる。


『Infamy』Dir: Doug Pray

「タグの上にはスローアップを描いてよくて、スローアップの上にはピースを描いていいの、なぜかはわからいけどわからないけど」という登場人物の一人、クロウがいった、路上で自然発生したルールやギャングでは無いのに周りからはそう見られるという葛藤を持つ、あきらかに見た目ギャングであるTKOクルーのトゥーマー、そして家族やアイデンティティー、仲間、全てがスプレー缶やサインペンで壁や電車、標識などに描かれた落書きに込められているということを「グラフィティは生き様だ」という言葉の数百倍、画面がものがたる。映画についての内容は、公式ウェブサイトに登場人物の詳しいディテールものっていて、映画とはまた別の面白さがある。


Four Seasons of Traktor: A Retrospective with Talk Show

最後に、トラクターの初期の作品から最近のものまでの一連の作品群を上映し、会場でトークショウも行われた「Four Seasons of Traktor: A Retrospective」に触れないわけにはいかないだろう。


Basement Jaxx『Where’s Your Head At?』Dir: Traktor

スウェーデンで生まれたこのディレクター集団の6人はマッドなユーモアが特徴的な作風のテレビ・コマーシャルを主に手掛け10年以上に渡って最前線で活躍してきた。トークショウの中でも発言していた「ナンセンスなアイディアに対して真剣に取り組む」ことにより、単純なナンセンスさを逸脱した特異なリアリティをもつ彼らの作品は内容よりも形式を重んずる考え方が、フォックス・スポーツやディスカバリー・チャンネルのコマーシャルシリーズからうかがえ、完璧に計算された形式にナンセンスだと思われる要素をはめ込み(キャストにプロではない人を起用するなど)、一種独特な風合いの映像的にズレたリアリティをもたせていた。


『WORKSHOP 2: Beyond DV- HDV, the future of filmmaking 〜撮影から編集まで〜』

レスフェスト自体の歴史も来年で10年ということで、これだけのエネルギーを10年間保ち続けたパワーはデジタル・フィルムという可能性が持つエネルギーの目に見える形であり、今回のプログラムでも取り上げられたマイク・ミルズが第一回目で上映されている事からも、作家とフェスティバルと観客の幸福な関係のストーリといえなくはない。また、2000年代後半のデジタル・フィルムはどのように進んでいくのかも注目するべきことだが、90年代から始まり現在まで続くレスフェストが今後も単なる権威的なフェスティバルとは一線を画すフェスティバルであり続けてほしいものである。

RESFEST JAPAN 2005
会期:2005年11月17日(木)〜20日(日)
会場:原宿ラフォーレ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6F
resfest@resfest.jp
https://www.resfest.jp

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Courtesy of Resfest © the artists

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