ミスカ・ドラスコッツィー

PEOPLE

ニューヨークを拠点として活動している、デザイナー兼フィルムメーカーのミスカ・ドラスコッツィー。彼の最新作 「パーフェクト・ヒート」 が、サンフランシスコ・インディペンデント・フィルム・フェスティバルにて今月初上映される。1月末には前作の短編映画「ゴルフ・エクスプレス」がユタ州のトロマダンス映画祭にて上映されたばかり。グラフィックデザイン、ファインアートをベースにした彼の作品では、ユニークな手法がとられている。今回はこの「パーフェクト・ヒート」を始め、デザインやアート、フィルムの接点、今後のプロジェクトについて彼にインタビューしてみた。


グラフィックデザインという分野からどうして映画を作ろうと思ったのですか?

グラフィックデザインは、自分にとってすべての基盤になっています。高校では主に写真、大学では建築とグラフィックデザインを専攻し、初めてビジュアルについて学び、視覚的に考えるようになりました。しかしそこで、シンプルな視覚的要素を並べることによってこそ、個人の心理というものは必然的に伝えられるのである、と考えるようになり、グラフィックデザインからは離れました。
例えば、二人の人それぞれに10本のつまようじを渡し、テーブルにそれを並べるよう言います。すると、決して同じようには並べられないでしょう。そして、それらの並べ方によって、その人はどんな人となりであるのか分かるのです。
高校時代に8ミリ映画、大学時代に3Dアニメーションを作りましたが、当時、機材と資金無しでは続けることは難しかったです。90年代後半、コンピューターが普及し始め、写真、音楽、ビデオなど、あらゆるものに応用されました。このことが、僕にとってもクリエイティブの世界をどんどん広げて行ったのだと思います。

パーフェクト・ヒートでの、デザインの役割は何ですか?

セット、衣装、小道具や、アニメーションに到るまで、この映画において、デザインが全てのベースとなっています。このフィルムは、二人の主人公の関係性を“男と女”“恋愛”“医者と患者”という三つの側面から描きました。つまり、トークショーにおける司会者とゲスト、郷愁のただよう回想場面におけるカップル、そして未来の実験室における医者と患者、という男と女が3種類の役を果たす現実の世界をこの映画は舞台としています。その実験室の片隅では、女医が“カンツァー・セラピー”という手法を用いて男の患者の不安を取り除くために実験を行っています。どうしてこのようなことをするのかと言うと、彼を診断する為のある一連の方法を作り出す為に彼女は彼の頭の中の考えを調べているのです。そしてこのことにより、物の形状によって考えが伝播する、という考えに回帰するのです。その後に、女医はその患者に目標を置き、銃が備え付けられた実験室の備品を使い、次に彼の頭部を銃で吹っ飛ばしてしまいます。しかし、血のかわりに、実験室という現実を覆い尽くす黒いインクがはじけ散り、私達は患者の精神内に存在する二次元の世界に連れていかれるのです。そこには多少のマゾヒズムがあります。患者の創造力と思考は暴力だけでなく、患者の内面世界—まぁそれは結局全ての世界なのですが—その世界を、どんなものにでも変化し得る基本的な単位、これらの形、あるいは泡のようなものにまで分解することによって彼から追い出される必要がある。というのがそのマゾヒズムです。それらはこの映画において上記の3つの現実を渡す導管なのです。

映画のイメージは自身の経験に基づいているものですか?

もちろん事実ではないですが、経験には基づいていると思います。なぜなら、この映画は「9.11」のテロ事件がベースになっているからです。個人的なことですが、この現場の数ブロック先に住んでいたので、何か自分の生活と密接したものを作りたかったのです。この映画を作るために、信じられないような時間と努力を要しましたが、きっとそれは自分にとって、大きな意味があるに違いないと思っています。僕は主人公の患者のように、自分の中の経験としてこの映画を見ています。自分でこの映画を作ったという実感があまりありません。まだこれは全体の一部にすぎないと考えているのかもしれません。この映画を作るにあたって、多くの事を学んだのは事実ですが。

多くのグラフィックデザイナーのビデオプロジェクトは抽象的で、デザインや音楽を焦点としたものですが、あなたの映画はもっとストーリーを重視しているように思うのですが…

そうですね。ストーリーへのアプローチは、少しずつ発展していっています。ストーリーを考えることは、未知の分野への挑戦であり、次へのステップです。
大学卒業後の初めての大きなアートプロジェクトは、「NATO」の架空のアート組織を設立するというコンセプチュアル・アートの「NATOarts」というものでした。そこで、その時のパートナーだった、ライターのアエキサンダー・パールズと共に、マーケティングやインスタレーションのデザインに焦点を絞っていました。僕たちは組織を構成するすべての要素のために非常に精巧な歴史と物語を構築しました。それは、本当の世界であると観衆を混乱させるような作り話の世界です。これは僕にとってとても面白い経験でした。僕は、これと同じ姿勢で映画にアプローチしています。アイディアとコンセプト、エモーショナルなコミュニケーションに興味があります。

サウンドトラックはどの様に選んだのですか?

パン・ソニックのミカ・ヴァイニオのソロアルバム「Ydin」を使用しました。当初は、オリジナルにしようと、作曲家を探してましたが、今回これがイメージと合ったので、もしこの音楽を使えるならと思って、ミカとレコード会社にコンタクトを取ってみたところ、両者ともに同意してくれて、使用できることになったのです。以前からミカの音楽の大ファンだったので、決まったときは本当に夢が叶ったような感じでした。今回の映画製作で、一番嬉しかったことは、ミカの音楽と自分の映像がコラボレートできたことかもしれません。

日本と日本のデザインについてどのように思いますか?

「NATOarts」のプロジェクトの撮影のために、数年前に日本に行ったことがあります。そこでの経験は、驚くべきもので、違う星に来たような感じさえしました。日本のアニメ「Akira」の世界のように、東京は汚くて怖い街に思えましたが、その反面、全てがとても整理されているように思いました。
僕は、ユニーク且つ力強い日本のデザインが大好きです。そこにはビジュアルを伝えるための多くの情熱が注がれている気がするからです。

ゴルフ・エクスプレスについて、簡単に教えてください。

ゴルフ・エクスプレスは、デザインと映像を合わせるという、自分にとって初めての大きな試みでした。
この映画は、暴力的で精神病的傾向のブルース・ジョンソンが主人公のインタラクティブ・ゴルフ・チュートリアル。ブルース・ジョンソンは、スポーツTVコマーシャル界に利用され、こき使われるというもの。
この映画は、当時僕が働いていたデザイン会社での不満から生まれました。脚本は、映画にも出演してくれた友達のピーター・トゥイッカーと共に書きました。ブラック・コメディですが、とても楽しく作ることができました。

今後のプロジェクトについて教えてください。

現在、アニメーション、ビデオプロジェクトを中心に、僕の事務所の「SNOW23」でクライアントの仕事をしています。
先日、ドイツのバンド「Circ」のビデオの撮影を終えたところで、今後もっとこのようなビデオを撮ってみたいと思っています。
映画を作る上で、共同プロセスの過程が好きなので、デザイナーやミュージシャン、ライターなど常に新しい人材を探しています。個人的には、自分で書いた脚本で自分で監督できればと考えています。
アイディアとして、イタリア人デザイナー、カルロ・モリノの人生をベースとしたものを考えています。70年代、生前、彼が自分の別荘でエロティックな女性のポラロイドを撮って、隠し持っていたことが発覚しました。僕が思うに、彼の人生と女性に対する妄想は、実は彼の願望で、最終的に彼がどの様な人生を送ったかと言うようなフィルムになればと思っています。

Miska Draskoczy / snow23
住所:515 Greenwich Street, #203, New York, NY 10013
draskocz@snow23.com
www.snow23.com

Text: Ben Upham
Translation: Hazuki Sekine

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