フリードリッヒ・フリック・コレクション

HAPPENING


フリック・コレクションは世界で最も重要なコンテポラリー・アート・コレクションの一つである。圧倒的な論争にもかかわらず、ベルリンはその偉大さを認め、7年間かけてミッテ地区にある元駅舎ハンブルガー・バーンホフ・ギャラリーでコレクションの全てを展示することにした。

このコレクションを取り巻く論争はここでは説明できないほど複雑だが、主な問題点はコレクションを支援した資金に関わっている。フリードリッヒ・クリスチャン・フリックの祖父、フリードリッヒ・フリックはナチ時代に強制労働者を使っていくつもの工場を経営し、後に刑務所に送られたもの、巨大な財産を家族に残していった。そして、フリードリッヒ・クリスチャン・フリック自身もナチス強制労働被害者補償基金への参加を拒否したことによって大きく非難されている。彼が所有するコレクションには20世紀アートの高名で重要な作品がいくつも含まれているが、世論の反発のため展示される機会が何度か失われていて、チューリヒに美術館を建設する計画が却下された後、ベルリンと契約を結んだ。しかしベルリンでも批判は多く、オープニングでは作品が数点被害を受けることも。

この様なバックグラウンドと批判的なマスコミからの情報をいっぱいに、ややネガティブな体制をとってハンブルガー・バーンホフへ向かった。大きなホールへ入ってすぐの作品も私のテーストではない:ジェイソン・ローズの「ザ・ヘモロイダル・インスタレーション」は大袈裟で壮麗な建物とすれ違ってしまっている気がした。しかし、ホールの奥には同じテーマ「クリエーション・ミス」で結ばれている作品が数点置かれており、名高いポール・マッカーシーの「アップル・ヘッズ」と金色のサルとマイケル・ジャクソンの像が面白くって印象的だ。「パーシャル・トルーズ」と呼ばれる次の部屋に進んだ。あたり一面、ブルース・ナウマンだらけ。「ファイブ・マーチング・メン」を始めとする数々のネオン・ワークス、「アンタイトルド(ヘルマン・ギャラリー・パラレログラム)」などのスペーシャル・スカルプチャー。この作品は白い壁と緑のネオンで狭いスペースを作り、そこに入る人たちを惑わそうとする。その先の部屋にはトーマス・シュッテが、そのまた先にはダン・グレハム、リチャード・プリンス、フランシス・ピカビアが待っていて、一階のスペースを回り切って二階に上がろうとする時には作品達に夢中になって展示会を取り巻いている論争の事はすっかり忘れてしまっていた。

二階には二つの部屋があり、一つは「ボデリー・インスクリプションズ」、もう一つは「シーノグラファーズ・マインド」と名づけられている。最初の部屋の前には作品の挑発性に関しての注意事項が貼ってあるが、ラインアップを考えればわからないでもない:ラリー・クラークとポール・マッカーシーにシンディー・シャーマンと聞けば、大体想像がついてしまう。しかし実際に見てみれば、展示されている写真やスカルプチャーに下品さは全くなく、意義的で情け深かいほどだった。個人的にラリー・クラークが撮ったわびしいティーンエージャーの写真が心に残った。エイヤ・リーサ・アハティラとダヴィッド・クレルボの写真屋映像をおく次の部屋は中でも最も穏やかで綺麗なスペースだった。

新しく建てられた橋が本館と隣にある元倉庫をつなげている。リークハレと呼ばれるこの倉庫はこのコレクションのために修繕され、来年の一月からはここでコレクションの残り(2500点にもなるという)をローテーションで展示することになっている。大きな建物で、幅は20メートル程だが果てしなく長い。一階は5つの部屋に分けられていて、その下に3部屋設けられている。レンガに直接塗られた白いペンキ、高い天井、ラフなコンクリートの床と、雑風景な雰囲気だが、本館に比べて作品がフレッシュで反抗的にも見える。極端なロジックが面白いロドニー・グレハムの「スクール・オブ・ヴェロシティー」、マーチン・キッペンベルガーの数々のペインティングとスカルプチャー、ディーター・ロスの巨大で進行中のインスタレーション「ガーデンスカルプチャー」、トーマス・ストルース、イサ・ゲンズケン/ウォルフガング・ティルマンズ、ダイアナ・ターター等の写真と映像、そしてジャン・フレデリック・シュナイダーの100点近い小さい油絵。地下ではブルース・ナウマンが一つの部屋を、ピピロッティ・リストがもう一つの部屋を、そしてリュック・タイマンス、ウォルフガング・ティルマンズとトーマス・ルフが最後の部屋を飾っていた。トーマス・ルフが撮ったドイツの普通の家庭のインテリアはとても親密で、建物全体を暖めているように思えた。

よかれあしかれ、フリックは一人のアーティストを集中的に集めてきたようだ。現在展示されている400点をいくつものレトロスペクティブに分けることができそうだ:ブルース・ナウマン、ポール・マッカーシー、リュック・タイマンス等思い浮かぶ。刺激的でとても面白いコレクションだと思うし展示されるべきだと思うが、フリックが言うように歴史と政治からすっぱり切り離すことはできないだろうとも思う。その上、これほどの数が一人に所有されているということ自体、アーティスト自身やアートの世界(最近のサーチの倉庫の火事を考えると、特に)にとってなんだか不快な気がしないでもないし、社会的に見てもこれだけの財産が一人に集まっているという不平さを感じてしまう(一人の人が大きな都市よりも購買力を持っているのはやはり困った事ではないか?)。コレクションはお金もコンテンポラリー・アートのパーマネント・コレクションもないベルリンに7年間ローンされていて、その間にその価値は上がると思われる。その後のコレクションの行方はまだ決まっていないようで、フリックの気持ちしだいでまた引き上げられる事も考えられる。このコレクションによってコンテンポラリー・アートの世界はベルリンに注目するようになったが、最後には取り残されてしまうかもしれない。

Christian Friedrich Flick Collection
会期:2004年9月22日〜2005年1月23日
会場:Hamburger Bahnhof
http://www.hamburgerbahnhof.de

Text and Photos: Kristy Kagari Sakai

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