ピート・ファウラー
去る4月17日、毎回各分野で活躍するアーチストを招き開催される「SALEM INNOVATION SESSIONS」が、スパー・ファリー・アニマルズのジャケット・デザインや、モンスタリズムなどのフィギュア・シリーズなどで知られるUKのイラストレーター、ピート・ファウラーをゲストに招き「スチルから映像へ」をテーマにクラブ『渋谷 WOMB』で行なわれた。
当日は、会場を囲むように設置された白いカンバスに、参加者が思い思いにフリー・ペインティングをし、会場を飾っていた。後半はピートによるトーク・セッションや、友情出演として、今井トゥーンズも出演し二人のライブ・ペインティング・パフォーマンスも行なわれるという、なかなか豪華な内容。雰囲気は明るく、終始和やかに進行したイベントだった。後日、会場を離れピート・ファウラー本人にイベントの感想や彼について少し話を伺った。
それではまず、今回の「SALEM INNOVATION SESSIONS」について感想を聞かせてください。
ファンタスティックだったよ。とても素晴らしかった。僕の仕事のことを話したりしたんだけど、僕がアートスクールにいた頃、たくさんのアーティストが訪れたんだ、彼らは自分たちの仕事について話してくれた。僕にとってそういう素晴らしい人たちに出会って話しを聞いたりすることは、すごく大切なことだと思っている。彼らがクリエイトしている時に、実際にどんな風に考えてるのか知るのは、とても重要なことだからね。
今回、会場にも置いてあった、リキ・スツールのキャラクターデザインは、どのようなものをイメージしたのですか?
初めに浮かんだのは、僕のアートワークに関連させることだったんだ。そして距離をおいたときに抽象的に見えるようにしたかった。それとこのイベントのテーマカラーを使うことだったかな。色使いは慎重に考えたよ。
あなたにとって音楽とはどのようなものですか?
音楽は、僕のアートワークでは、とても重要な要素なんだ。とても大きなインスピレーションをくれるんだ。いつも音楽を聴きながら仕事をしてるんだ。僕のクリエイションと音楽を融合させることを、いつも考えてるよ。僕のテイストはとても広く、本当にいろいろなんだ。日本の演歌とか。本当にいろいろ聴いているよ。それぞれにいろんな要素があるから、とてもエンジョイしてる。
それでは、今現在行なっているプロジェクトやこれからの予定などを聞かせてください。
まず、今はモンスタリズムシリーズの全く新しい12のキャラクターのフィギュアをデザインしてる。その前は、7つのキャラクターをデザインしたんだ。そして今、本も作ってるんだよ。本のコンセプトはウッドランドなんだ。あとは…大きなフィギュアを作ってるんだ。そのフィギュアは限定で、多分僕のウェブサイトで売るんじゃないかな。一つ話すのを忘れていたんだけど、僕は今、テレビシリーズとかにするストーリーを書いている。それが今のビックプロジェクトかな。
どのようにモンスターのキャラクターができ上がるのですか?
僕はいつも人間以外のモノを創るんだ。モンスターはどんな代わりにでもなるんだ。僕にとってモンスターっていうのは、とてもオープンで、人間もオープンなんだけど、僕にとってはモンスターだったってことだよ。僕が創りたいものを創れるところが素晴らしいんだ。小さい時の影響もあるのかも知れないな。UFOとかビックフットとかね。モンスターって聞くと怖いイメージを抱く人がいるけど、僕のモンスターたちは、見た目はクレイジーだけど、フレンドリーだし、ノーマルだし、人間みたいだよ。
デザイナーという仕事を始めるきっかけは?
アートスクールでいろいろなことをやったんだ。ペインティングやスカルプチャーを作ったり、プリンティングとかね。大学を卒業してから友人とコミックを描いてたんだ。それが最初のプロフェッショナルとしての仕事かな。大学に行ってとても幸せだったと思うよ。大学の3年間は、僕にとってはとても重要だったと思う。スタジオを持ったり、ワークショップをやったりね。アートに関わってたことで、今の仕事をしてると思う。友達と描いたコミックは2つあるんだけど、一つはUFOの話なんだ。もう一つはクレイジーな話。面白いという意味でね。どんな作品でもユーモアが重要な要素になってたね。
いつ自分の表現活動について確信を持ちましたか?
コミックを作ってる時は、プロの仕事というよりは、趣味といった感じだったよ。なぜかというと、コミックは、作るのにお金があまり掛からないからなんだ。僕の最初のメジャーステップと感じてるのは、スーパー・ファリー・アニマルズの仕事をした時かな。最初はとても混乱したよ。クライアントとかといろいろ話をしなきゃいけなかったし。コマーシャル、プロフェッショナルエリアで、僕のアイデアとどうコミュニケーションをとっていくかという意味では、僕の最初のステップになったと思う。
僕にとってのポイントは、楽しめるかどうかってことなんだ。趣味の域でもプロフェッショナルな域でもね。僕のやっていることは、僕の人生でもあるわけだからね。もちろん趣味とプロの仕事の違いはあるよ。例えばクライアントと話したりすることとか。でも、いつでも僕は同じ情熱とフィーリングを持つようにしてると思うよ。それが大切だからね。それをなくしたらもう楽しめないと思う。
今まで、影響を受けたものは何ですか?
僕は、いろんな人やモノに影響を受けたと思うけど、一番は7年前に日本を訪れた時だと思う。その時に、水木しげるさんとコラボレーションしたんだけど、彼の影響はとても大きいと思う。彼の作品は、とてもリッチだし、信じられるし、ユーモアに溢れてる。彼の作品は、日本の民話などに影響を受けているところが、とても素晴らしいと思う。それは僕の目指してることでもあるんだ。
今までの仕事で一番楽しかったことは?
もちろんフィギュアさ。小さいときは、コミックを描いたりするのが好きだったんだ。おもちゃも好きだったよ。こんなフィギュアを作ることができるなんて、夢にも思ってなかったことなんだ。僕にとって2Dで思い描いてたことが、3Dになるなんて、とっても理想的なことだよ。ここでもコミュニケーションが大切なんだけど、人はフィギュアを家に持って帰ったり、もっとフィギュアを集めたりして、フィギュアのことを考えたりすることができるよね?それが僕の考えてることでもあり、コンセプトでもあるんだ。いまだに、自分がこの仕事をしているなんて信じられないよ。朝目覚めて、僕はなんてラッキーなんだって思うことがよくあるよ。
どのようなプロセスで作品を作るのですか?例えばテクニックとか。
僕のスキルは描くことだけだよ。ソフトウェアは、誰だって学べる。僕は、フォトショップやイラストレーターを使うけど、それは誰でも学べることなんだ。だけど、ドローイングは違う。ドローイングのスキルが唯一自分の中で信頼できるものだね。
オリジナルであることは重要な要素だと思いますか?
オリジナルであることを目指すことは、とても大切なことだと思う。コピーをして学んで自分を発見することはできるけど、時間は掛かるよね。たくさんの新しいアイデアは、僕らの周りに一杯あるんだ。アイデアをただ生み出すんじゃなくて、それにいろいろなアイデアをくっつけたり、いろいろな角度から見てもっともっとオリジナルにしていくことができるし、プロダクティブになっていくと思うんだ。それにオリジナルのほうが情熱がこもってるよね。だからオリジナルであることは、大切だと思うし、僕もそれに重きをおいてるよ。
最後に読者の皆さんと、これからクリエイターを目指す人に一言お願いします。
2年くらいすごく貧乏な時があったんだけど、でも自分の信じた道にしがみついてることが、とても大切なことだと思う。お金より大切なことは、情熱なんだ。もしクリエイティブになりたいんだったら、自分が今してることを続けることだね。時には成功しないこともあるけど、なぜ成功しなかったのか見つめ直すこと。その理由を見つけることが大切なんだ。成功するまでには、我慢することもある。誰でもそういう時はあるもんだよ。重要なことは、集中し続けることだよ。自分の道を進み続けることなんだ。
短い間で行なわれたインタビューだったが、どんな質問も丁寧に答えてくれ、一緒にいる人間に好印象を持たせる人物だった。話を聴いていると、こちらもポジティブな気持ちになれるし、クリエイティブになることは難しくないように思えてくる。そんなパワーを持ったクリエイターだった。もちろん才能も必要だけど、情熱、続けること、そして楽しむことが大切なんだということが伝わってきた。これは別にクリエイトすることに限ったことじゃなく、普通に生きていくためにも重要なことだと思う。
セーラム・イノベーション・セッション 2004
ゲスト:ピート・ファウラー
東京:2004年4月17日(土)/渋谷 WOMB
大阪:2004年4月23日(金)/心斎橋 Under Lounge
問い合わせ:セーラム・イノベーション・セッション事務局
TEL:03-5468-6382
Text and Photos: Yasuharu Motomiya from Nordform