カールハインツ・シュトックハウゼン

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「PAUSE」は、ミラノの非常に美しい大聖堂にて行なわれた、コンサートとビデオを組み合わせたシリーズイベントの第1弾。1366年から1485年にかけて建設された、この威厳ある華やかな北部ゴシック様式の大聖堂は、ミラノで最も象徴的な場所の1つ。中央部分が45メートルもの高さを持つという点から考えても、最も素晴らしい開催場所の1つと言えるだろう。

ドン・ルイジ・ガルビニの芸術的なディレクションのもと、国連難民高等弁務官事務所の後援とイタリア聖公会「ARTACHE」の文化プロジェクトの協力で、音楽界の歴史において最も重要な作曲家の1人、カールハインツ・シュトックハウゼンと、今日の最も強烈なビデオアーティストとも言えるビル・ヴィオラの作品が織り成す、忘れられない夜が実現した。

幸運にも、そのイベントが行なわれる日の朝、カールハインツと実際に会う機会に恵まれた。あるホテルのロビーでのひととき、とても刺激になる話を聞くことができた。

今日、全般的に音楽の傾向として(ポップからアバンギャルドなものまで)基本的にエレクトロニックなものが多いですよね。ご自身がエレクトロニック・ミュージックを始めた頃と比べて何が変わったでしょうか?

あなたが言う通り、今は様々な音楽のスタイルが受け入れられていますが、どんなミュージシャンも、前衛的な音楽からシンプルなものまで、私の頃は何が良いものかという判断は常に階級的でした。その点は、私が長年関わっているラジオでも大きく変わりましたね。レコード会社は常により幅広い顧客層を獲得しようとしのぎを削っています。私が音楽を始めた頃は、ある音楽は常に少数派にしか受け入れられなく、また別のタイプの音楽は常に人気が出るという状況がありました。
私は、昨日までそこにいたのですが、ケルンのラジオ局で働いていて、聖歌隊やオーケストラのために大作をミキシングしています。昔は、長ければ長いほど良いとされていたので、ものすごく大変な仕事でした。今は、何が良いものかというのは階級的ではないと思います。

現在の音楽にある最も重要な問題点は何でしょうか?

どんな作品においても、驚きがあり、革新的そして新しい体験を発見できるような、音楽の世界を創造することです。その音楽を通して、何かを諭したり、精神を養ったりすることができるような。

近年、自身の音楽の中で、様々な方向性を打ち出してきましたよね。その中で最も大切に考えていることは何ですか?

先程も触れましたが、新しい作品全てに、自分自身はもちろんその音楽を聞く人にとって未知な音楽の世界を創造することです。私達は音楽を理解する知性や感性を磨き続けるべきです。そうして私達が変化し、音楽自体も、私達が「音」とそれ自体がアートである「作曲」という活動を通じて進化していく手助けをするという目的を持つのです。

昨年、モデナで開催されたアンジェリカ・フェスティバルでの、OKTOPHONIEというコンサートに非常に大きな衝撃を受けました。照明が落とされた中でのそのショーはとても驚きでした。私は、前にあなたに勧められた通りコンサートの間ずっと目を閉じて聞き、その体験からその音が持つビジュアルの強さというものに驚きました。自分が宇宙での爆発のようなものの中心にいて、自分の周りには何千という細かいものがぐるぐると渦を巻きながら飛んでいるような感じがしました。OKTOPHONIEのような作品を作曲する時、頭の中に何か強いビジュアルが浮かんでいるのですか?

いいえ。スタジオでは、音を聞きながら自分自身の中で起きる感情に従って、常にどれを使ってどれを排除するかを考えながら作曲をしています。しかし、同時に私は音を操る技術者でもあります。つまり私は、常に空間で音を形成する新しい方法を模索しているのです。今までは、音楽は常にある一つの場所で起こるもので、実際モノラルで聞いており、時々稀にステレオで聞いています。しかしこれからは、音が私達を取り巻くのです。そうして、私達の精神は音にのって体から抜け出すことができるのです。音と一緒に飛び回り、空間は無限のものとなる。それができるか否かは作曲家の技術次第です。つまり今、私達は「空間音楽」という、音楽の全く新しい歴史のスタート地点にいるわけです。

それが実際に実現できているという点が、本当に驚くべきことです。OKTOPHONIEが終わった時、自分はコンサートを聞いていたのではなく、1つのイベントの中にある様々な小さな出来事を体験したような気分になったのです。

あなたのその表現は、まさしくその通りだと思います。しかし、体から抜け出して、外の空間で新しい体験をするというのは、奇妙なことでもあります。私達の体というのは地球やその他地球上全てのものとの接触が必要です。その状態というのはとても素晴らしいものだと思います。おそらく死とはそういうものなのではないでしょうか。

音楽の未来はどこへ向かっていくと思いますか?

私達1人1人が音楽という惑星を学ばなくてはいけません。その音楽がどの文化、伝統、国から来たものであろうと。しかし、あらゆる音楽のミックスが普通のものとなりつつある今、それほど時間はかからないでしょう。そのうち、人々は空間を音と共に飛び回るという体験が可能となる、巨大なコンサートホールようなものを創造すると思います。
人間の絶えまない進化は、空間に身を置かずして、体を抜け出し空間に存在する、音にのって動き回るという、新しい「空間音楽」というものを奏でたいという欲求を生むと私は考えます。人間が、その宇宙の感覚や体験と呼べるものへ適応できるまでには数百年かかるかもしれませんが、音楽はそれを可能にするのです。

Stockhausen-Verlag
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Text: Roberto Bagatti from Bacteria
Photos: Paola Manfrin
Translation: Naoko Fukushi

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