CCA 学生卒業制作展

HAPPENING


どういうわけか、カリフォルニア・アートカレッジ(CCA)が開催する卒業作品展の時は、いつも雨が降っているような気がする。ただ学生の気分にはぴったりなのかもしれない。この日は、成績が決定する日なのだ。それはつまり合格か、不合格か。不合格になれば、もう1学期学校に残らなくてはならない。前回は、クラスの約4分の1が落第したそうだ。

グラフィックデザイン卒業制作プログラム」は、CCAの学生にとっては、学んだ事の集大成を発表する場のようなもの。これは、マイケル・バンダビル(グラフィックデザインプログラムの学部長)が、学生にデザイナーになるとはどういうことかという理解を深めさせるために設けたプログラム。授業は主に、学生が積極的に進めていくというスタイルで、学生に自らの興味を模索させ、デザインを自身の発見を表現する媒体として認識させる機会を与えるという主旨のもと行なわれる。卒業制作では、本、ポスター、インスタレーション、ショートフィルム、家具、ペインティングなど、卒業論文とリンクするものならどんな表現方法でも良い。

各学期ごとに、デザイン界の一流の講師がローテーションでクラスを受け持つ。今学期の講師は、ジェニファー・スターリング(ジェニファー・スターリング・デザイン)、デイビッド・カラム(ポスト・ツール)、メラニー・ドハーティー(メラニー・ドハーティー・デザイン)、そしてもちろん常勤は、マイケル・バンダビルだ。

CCAの「卒業制作プログラム」は、はっきり言って難しい。信じてほしい。僕は、ちょうど1年前にここを卒業したのだが、胸に突き刺さるような批評と、やっと卒業できたときの喜びは今でもはっきりと覚えている。デザインのプロになってから、学生の時ほど追い込まれた経験はまだない気がする。CCAでは、デザインの授業の初日に卒業制作について聞かされ、授業登録をする頃までには、すでに憂鬱な気分になっている。

もちろんこの日も雨だった。パンツの裾をたくしあげ、水たまりをよけながら駐車場を小走りして会場へ到着した。学校の大きなガラスのドアから、明かりが見えた。IDカード(僕は卒業生なので、昔の学生証)を見せ、卒業できるかできないかまだ分からぬ学生達が集まる大講堂へと向かった。そこではすでに、今年の学生の作品であるショートフィルムが上映されていた。「しまった!出遅れた!」

講堂には、期待を寄せる家族や友達が、CCAの学生を応援しに集まっていた。混み合う会場の薄暗い角の席に座った時、ちょうどジョシュア・カリーのフィルム「1+1=1」が、はじまるところだった。彼のフィルムは、抽象的な映像を組み合わせ、彼にとって、コンピューターの存在がいかに大きいかをじっくりと表現している。ぼんやりとしたやわらかい映像では、アイデンティティの喪失を訴えかけ、テクノロジーが彼に合わせているのか、それとも彼がテクノロジーにあわせているのかという疑問を投げかける。

もう1人、フィルム部門で紹介したいのが、ショーン・ピーターソンの「スタンディング・オン・ウォーター」だ。このフィルムは、彼の個人的な体験と歴史を織りまぜて表現している。子供の時に両親が撮影した写真と、グラフィック、そして最近のものから昔のものまで幅広い年代のサーフィン映画を使い、消費社会や、サーフィンに対する本物の精神が失われつつある現状を指摘する。視覚的に面白いのは、カリフォルニアのサンタクルーズ(ここでショーンは育った)の沖合で撮影された、彼のモダンなサーフィンフィルムだ。

講堂を出ると、次はギャラリー。壁から床、そして天井に、落第した 40 人の学生の作品と、卒業制作クラスの作品が展示されていた。手づくりの本、ポスター、インスタレーション、インタラクティブな作品など、どの作品を見ても、どれだけの時間とエネルギーとお金が費やされたかは一目瞭然だった。僕は、学生が手掛けた作品達に強く刺激された。

目の前に並ぶ作品を何気なく見ていると、モリー・スコネツキの本を発見した。それは学術書のように厚く、茶色の布のカバーがかけられていた。コースの履修中、「アドバイス」に対して代価を払うということに、意味はあるのかという疑問を持ち、様々なところからアドバイスをもらってみたが、まったく答えを見つけられそうにないという状況に直面し、彼女は、ほとんどの場合従わないであろう助言を求めるために、私たちがどれだけの量の時間やエネルギーを費やしているかをこの本の中で論じている。また、「私たちは、誰かに助言を与えることや、私たち自身が生きる道の有用性や機能に、めったに疑問を持ったりなどしません。」とも述べている。素晴らしいタイポグラフィー、美しいページ構成、機知に富んだ文章は、数多くある作品のなかでも一際光っていた。

デリカッテッセンで買った軽い食事にかぶりついていると、卒業以来ずっと会っていない友人や先生に再会した。1年経った今でも、卒業制作への恐怖はまだリアルだった。しかし、今まさにメディアカルチャーの中での活動を始めるというクリエイタ−に言える事は、学生の時のそのような経験は、絶対に後で役に立つということだ。確かにこのプログラムは、難易度の高さで有名だが、良い作品を制作するために、研究、提案、修正および設計のプロセスを学生が経験するというのは、非常に大切な事だ。

2003年秋のCCAグラフィック・デザイン・クラスによって制作された作品や、過去の作品はこちらでご覧になれます。(このサイトはカリフォルニア・アート・カレッジとは別団体で、関連はありません。)

カリフォルニア・アート・カレッジ
サンフランシスコ・キャンパス
住所:1111 Eighth Street, San Francisco, CA 94107-2247
TEL:415.703.9500
http://www.cca.edu

Text and Photos: Mark Buswell from
SisuHome
Translation: Naoko Fukushi

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